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翔陽くんのお母さんは

元旦から開封し、「ハイキュー!!」全45巻を一気に読み切った。

「おれはとべる!」
身長170cmに満たない主人公・日向翔陽。大きな選手の中で活躍する「小さな巨人」烏野高校の選手に憧れてバレーボールに魅せられ、技を体得し心身共に猛烈に成長していく話。
しかし主人公は彼だけでなく、生涯のライバルとなる影山飛男や烏野高校の先輩や同級生、顧問の先生、コーチ、対戦相手のチームたち・・・
「独りでは決して見ることのできない風景」をみんなで見る。まさに切磋琢磨、ヒナガラスが雄々しく育って羽ばたいていく全45巻だった。

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読み終えた後も、夏休みの東京合宿や、宮城県1年生選抜合宿や、音駒戦、青葉城西戦、ブラジルのビーチ・・・何度も行ったり来たりしながら反芻している。画集もファイナルガイドブックも買った。
読んでる時は日向翔陽として跳び、悔しがり、笑い、スガさんほんまにええ子やね、やっぱり及川だよななどと思いながら一緒にバレーをやっていた。バレーの経験なんて中学校の体育の時間くらいしか記憶にないのに。

しかしふと、やっぱり高校生の親として考えてしまう。

翔陽くんのお母さんは、ご家族は、どんな方々なんだろうか。
この子らはどうやって、どうやったらこんなふうに、育ったんだろうか。

物語には、兄弟姉妹はけっこう登場するが、親たちはほとんど登場しない。
親たちとのエピソードとしては、稲荷崎の北信介先輩とおばあちゃん、白鳥沢学園の牛島若利くんとお父さん、影山飛男くんとおじいちゃん、あとは烏野マネージャーの谷地仁花ちゃんとお母さん、くらいかな。
音駒の狐爪研磨が小さい時にちらっとご両親が登場するがほぼ意見はない。
青葉城西の及川のおかあちゃんもサインもらったサポーター洗っちゃってすまんと思ってる、ってちらっと登場したな。
翔陽くんのお母さんも、極寒の庭先でひとりボールトス練する息子に「あんたむなしくない?中入んなさい」って声かけてた。それだけだな。

(後日追記:39巻に星海光来くんのご家族が出ていた。
「兄ちゃんも父ちゃんもでかいのにっ なんでぼくだけ小さいのっ」
という小学生の光来くんに「えーなんだろ 遺伝?」
「小さいと何でヤだ?」「・・・大きいやつには勝てないから」
「小さいから勝てない?勝つ方法は一つもない? 知ってる?大きくなる確かな方法は多分ないけど 強くなる方法はたくさんあるよ この話光来にしかしてないから 今なら光来が“強い”に一番乗りだね」
こんなこと言えるお母さんよ・・・あなたが確かに「小さな巨人」を育てられたんですね)

つまり、高校生たちにとって、親以外の指導者との関わり合いは重大だが、親なんて、まるで関係ないのである。うちも期末の懇談のたびに息子にわあわあ言ってはいるが、まあ、聞いてはいないんだよね。

と、オットにこぼしたところ

「でもさ、朝練で5時集合って、何時に起きて弁当作らんといけんのん?弁当1個じゃすまんでしょ、帰ってきたらまた飯食わさんといけんし」

ほんとだよ。

物語には一切登場しないけど、毎朝毎朝夜明け前に起きてお弁当つくって、帰宅したら「お!今日は唐揚げだあ」って頬張る「ちゃんとした飯」を作る家族が、登場する高校生の数だけいるんだよな。洗濯も、掃除も、その他いろんなサポートを、ずっとしているんだよな。
月島蛍くんのお母さんもたしか「お弁当3つ、高タンパク低脂肪、まかせなさい!」って言ってたよな。えらいよなぁ。

まあつまり、家族って、空気みたいなもんなのね。

翔陽くんのお母さん、どうでしたか?
小さい時から落ち着きがなくて、机にじっと座って勉強するのが嫌いで、きっと勉強しなさいとか宿題したのとか、ぜんぜん言うこと聞いてなくて、一体今なにをやってるのかろくに話しもしないで、ご飯の時もずーっとボール離さないで、ある時急に「おれ、リオに行く!」とか言い出すわけですよ。「はぁ!!???!」ですよ。
それでも息子の飛び出していく先を強権力で塞ぐこともせず、なかばあきれながらも認めて手放してあげたんだろうな。これは簡単なことじゃないですよ。ちょっとお会いしていろいろ伺ってみたい。

小さい頃から今まで、やりたいことをやらせず、したくないことを強いる、それも息子のためを思って、みたいな間違い何度もやらかしたんではないかと危惧する。忙しさにかまけて我慢もさせたと思う。
さすがに今はもう、勉強しろと怒って成績が上がるんならアレですけど、もう、このように考えるし心配するがいかがか?くらいしか伝えようがないし、親がしてやれることはほんとに飯作るくらいだなと思う。

ハイキュー!!の高校生たちも親からしてみたら、帰宅して飯食ったら自室にこもってなに考えてるのかわからない子たちばっかりなんだと思う。
それでも、彼らには彼らの極彩色の日々があって、自分で考えて、選択して、大人になってった。いろんな職業人になっていた。
できれば息子にも、そうであってほしいと思う。
一緒に暮らすのはあと何年か、
自分で考えて、自分で決めて、巣立つ日まで
あたたかい空気であるよう、バックアップするんでよろしく。

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