見出し画像

50過ぎてメイクに目覚めたら、まるでそれはお茶みたいだった件

この3年コロナ禍で引きこもり、アニメと漫画にはまり、生活のほとんどをYouTubeとかアマプラにもっていかれて過ごしていた。で、今まで触れることのなかった世界を垣間見ることとなった。
「異世界転生もの」というジャンルがあることも知った。
でもまさか自分が異世界転生するとは思わないじゃないですか。
いや死んだわけじゃないんだけど、体感的にはこれちょっとした「異世界転生」だなって思ったんですよ。
メイクに夢中になりまして。
知ってるようで全然知らなかった世界に頭からつっこんだ。
だから表題も異世界転生ものにありがちな感じになった。

人生もう半世紀も生きていれば、そうそう珍しいこともフレッシュに感動することも少なくなって、なんでもたいがいのことは想像つくしわかっちゃう、と思っていたがそうでもなかった。

「なんじゃこりゃあ!?」って驚愕して「なんなのこれ」ってもっと知りたくなった。そして猛烈に検索したり店頭をさまよったりするうちに、「ん?この感じ前にもあったぞ?」と思い出してみたら、「お茶の時間 雲間」という小さいお茶屋をやっている自分がかつてお茶にハマったあたりの感覚とそっくりだった。こういう「ニューカマー」の感覚はベテランになると忘れちゃうから書き残しておく。


きっかけは化粧下地だった

化粧下地がなくなった。買わなきゃ。
こういうのはなくなりそうになったらちゃんと次のを買っとくものだ。
ぎゅうぎゅう絞っても出なくなった。
肌トラブルが絶えないという思い込みもあって、近頃はドラッグストアで買える敏感肌用の下地をずっと使っていた。化粧の下地というか、それを塗ったらほぼおしまいだったのでまあ日焼け止めですね。

コロナ禍でほんとうに出不精になった。近所のドラッグストアにすら足が遠のいちゃって。
あ、なんかサンプルがあったな?
通販で入浴剤を注文したら化粧下地のサンプルが入っていた。
まるで興味ないのでほったらかしていたが、ひとまずあれ使うか。
見てみるとなんかピンクとグリーンがある。
グリーンだと?『モンスターズ・インク』みたいにならないか?
ひとまず無難なピンクの小袋をびゃっと開封して全量顔に塗ってみた。

なにこれ・・・
顔が真っ白てかてかの、『オバQ』みたいになった。

なんとかぺたぺた塗り広げて薄めてごまかしたが、びっくりした。
これってなんだったんだ?
Google先生に聞いてみた。
「化粧下地、っと」

そこには「おすすめランキング」とか「塗り方」とか「製品レビュー」とか、ものすごい情報の百花繚乱だった。知らない世界にひゃーと目をまわす。
ぽちぽち読んでみると、サンプルの品はけっこうな人気商品だったと知る。
コントロールカラーといって、顔全体にまんべんなく塗るものではないらしい。量もひと袋全量使うとはいい度胸だった。
ピンクはくすみを消してトーンアップ、グリーンは赤み補正の効果があるんだそうだ。開封して無駄に使っちゃう前に使い方とか調べればよかった。

じゃあ、今まで使ってたのよりこれがいいのかな?
他にいいのないのかな?どれがいいのかな?

検索結果画面に「有名ヘアメイクによるコスメ座談会【ベースメイク篇】」という動画があり、まずはプロのご意見を聞いてみるかと軽い気持ちで見てみて衝撃を受けた。
ぜんぜん知らない人たちだったけど、3人がわちゃわちゃ話しながら注目おすすめアイテムを紹介していく。
製品を手の甲に出し、塗り広げて見せながら
「ピンクトーンなんだけどミルキーじゃない?」
「効果はしっかりあるけど軽い」
「このテクスチャーが今っぽいのよ」
などというプロ目線のコメントにほえーと思いながら見入る。
アイテム紹介だけでなく、メイクのありかた、心意気、人生観、そういうあたりにまでおよぶ話題の白熱ぶりに圧倒された。
なかでも
「2022年のテーマは『ボーダーレス』!!!   
 どう選ぶのかはまさにおのれ次第!!!」
と力強く言い放った、その人からなんだか目が離せなくなってしまったのだ。化粧下地じゃなくて。この人いったい何者なんだろう。

脇道にどんどんそれていく

そのヘアメイクの方の名前を検索し、記事を読んだ。
その人のYouTubeチャンネルもあったので見てみた。
「そ〜よ〜アナタこれ見てご覧なさいよ」とか言いながらメイクしていく。
軽い毒舌、滑稽な動作、独特な言語表現、なによりも迷いなく休まず動く手。目が離せない。
その仕上がりは繊細でものすごく美しいものだった。
商品について語る時、メイクのテクニックについて語る時、
ふと真剣になるその表情、ただものじゃない、「仕事できる人」だ。

過去から今に至るまで動画をさかのぼって見あさった。
この人って、メイクって、なんかすごい・・・

これまでの人生でなんとなく手癖のように朝やってきたメイクはなんだったんだ。なんて雑でいい加減で自分を大事にしてなかったんだろう。

そう、
メイクなんてしたって、誰がわたしを見るというのだろう?
と思っていた。
恥ずかしくない程度に薄い眉毛を書き足しておけばいいや
マスクするから顔の下半身はなんもしなくていいや

メイクなんか、というか
自分なんか、と思っていたんだろう。

ごめんよ自分。粗末にしちゃってて。
自分が自分を粗末にしちゃったら、もうどうしようもないよね。

そして、あれ?

「やっぱりお店で淹れてもらうお茶はいいわ〜。すごく美味しかったのに、同じお茶を家で淹れても美味しくならないもんね」
「そうそう、家じゃ美味しくないのよね〜」
という声を聞いて
(うーん、そんなことないのにな)
(うまいお茶自分で淹れて飲むの最高なのにな)
とつねづねモヤモヤ思っていた自分がピンときた。

自力でやらず、だれか(プロ)にまかせる
当然、そのほうが優れている。
でも、「自力でやる面白さ」は、あきらめてる。
自分ではできないと思い込んでる、こともあるかもしれない。

でも見て、このメーキャップアーティストは
「自分次第!」「やってみて!」「真似してみて!」
と惜しみなく教えようとしてる。
「だってメイクしたらアガるでしょう!自分がいいと思えるでしょう!」
そうなの!
お茶も自分で淹れるの、自分のためだし自分がアガるためなの。
あるいは自分をよしよししたり、勇気づけたり、なぐさめたり、
そのための「自分のためのお茶」なの。
だからみんな自分でお茶淹れて欲しいと思ってる。

ああ、なるほど!メイクって面白れぇな!
自分のためにメイクするってそういうことなんだな!

と夢中になったところで、まだ化粧下地は買えていないのであった。

(つづく)

この記事が参加している募集

#美容ルーティーン

1,733件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?