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【奇跡】 マンUと私

「一般人からしたら、これは結構な奇跡では?」と思えるようなことを幾つか体験してきました。

今回はそのうちの1つの話をしたいと思います。それは2008年12月に起きた【奇跡】の話です。



◆プロローグ

当時の私は33歳。株式会社リクルートという会社に勤め、結婚する人を増やす事業部に所属していました。

(今もあると思いますが)当時のリクルートには3年勤務するごとに『ステップ休暇』なる1ヶ月を上限とした長期休暇取得制度がありました。その取得権を2008年に得た私は、2週間ほどのお休みをいただきヨーロッパへ旅立つこととなります。



◆人生初のファースト・クラス

まず1つ目の幸運だったのは、前年となる2007年に飛行機での出張が続いたことでJALの航空マイルが貯まり(過ぎ)、成田からロンドンへファースト・クラスで移動することができたことです。

その時のファーストクラス内の様子


機内で専用のパジャマが用意されていたり、ステーキの焼き加減を聞かれたりしたことも私のような身分の人間からすると奇跡的な話ですが、今回の話はそんなちっぽけな【奇跡】ではありません。


まず、私が何のためにヨーロッパへ旅立ったかというと、その当時にスコットランドのセルティックFCに所属していた中村俊輔選手の試合を見に行くためでした。(加えて、世界遺産巡りとムーラン・ルージュ観覧の目的もありましたが話が逸れすぎるので割愛します)


◆マンチェスターへ

また、そのついでと言っては何ですがロンドンからスコットランドへ北上する間にあるサッカーでも有名なイギリスの都市「マンチェスター」にも立ち寄ります。

今と変わらず2つのビッグクラブがあったマンチェスターですが、2008年当時は今と違って『シティ』よりも『ユナイテッド』の方が圧倒的に強く、後者は人気のあるスター選手を多数抱える世界的にも一、二を争うような超がつく強豪サッカーチームでした。

過去に何度もダフ屋にだまされてきた私ですが、その時は年間シートの所有者からチケットを譲り受けるかたちでオールド・トラフォード・スタジアムの席を確保することができ、幸いにも1階の最前列から2番目の席で試合を観戦することができました。
が、今回の話はそんなちっぽけな【奇跡】ではありません。



◆スコットランドへ

マンチェスター・ユナイテッド戦を観戦し「あー、やっぱり本場の雰囲気は良いなぁ」などと感慨に耽りつつ、翌日にはエディンバラ経由でスコットランド最大の都市グラスゴーへと向かいます。

マンチェスターの時と同様にセルティックFCの試合でもダフ屋に騙されずに試合を観戦することができ、スタジアムへの往路復路でも「ナカムラ!」と声をかけられること複数回。現地で大活躍中の日本選手を応援する時によく起こる『あるある』も無事に経験することができました。(1998年に中田英寿選手を見にイタリアのペルージャへ行った時も経験)

が、今回はそんな「幸せだなぁ」レベルの【奇跡】の話ではありません。



◆日本へ

本場ヨーロッパのサッカーの試合も観戦でき、今回の旅で予定していた目的をほぼ実現できた私は日本へ戻ることになります。

ロンドン・ヒースロー空港で帰国便の出発を待つのですが、冒頭にもお話しした通り私の航空券はファースト・クラスです。33才の若造には不相応な代物です。

そして、ご存知の方も多いとは思いますがファースト・クラス搭乗者には空港内に専用のラウンジがあります。フリードリンクのみならず様々な食事や軽食が用意され、飛行機出発までの時間を快適に待つことができます。



そのヒースロー空港のラウンジから私の人生最大級といってもよいであろう【奇跡】がはじまりました。



◆ファーストクラス・ラウンジにて

のんびりとお土産の整理などをしながらラウンジで過ごしていると、周囲がザワつきはじめます。

「芸能人・セレブか何かかな?まぁ、興味ないから良いか」


と、たかを括っていた私のすぐそばをマンチェスター・ユナイテッドの主力ライアン・ギグス選手が通り過ぎていきました。

見間違えるはずはありません。なぜなら私はレアなレプリカ・ユニフォーム持っているぐらいのファンでしたから。

ギグス選手のレプリカ・ユニフォーム


「ザワついているのは、このせいか? ということは。。」


周囲を見渡すと、見たことのあるサッカー選手たちがワイワイとドリンク片手に至るところで談笑をしています。見たことあるというか、数日前にマンチェスターのオールド・トラフォード・スタジアムで観戦した試合に出ていた選手ばかりです。
これは個人的にはちょっとした【奇跡】で間違いありません。


「ルーニーがいる!」
「パク・チソンだ!」
「おお、ファン・デル・サールでかい!」

と、心の中で思いましたが、声を出すのはグッとこらえました。そして、この状況を理解しました。



「トヨタ・カップだ」と。



◆トヨタ・カップとは?

ヨーロッパと南米のクラブチャンピオン同士が対戦する世界最高峰の大会「トヨタ・カップ」。文字通りスポンサーがTOYOTA自動車であったこともあり、その当時は毎年12月になると日本で開催されていました。
2014年以降TOYOTAがスポンサーから撤退したこともあり、今は名を変えて中東などで開催されるようになっています。


2008年当時すでにFIFAクラブワールドカップへと名称が変更されていましたが、1980年代から観戦しに行っていた私のような人たちからすると、その大会の名称は「トヨタ・カップ」のままでした。(私だけ?)
まぁ、今回の話からするとどうでも良い話です。



◆マンチェスター・ユナイテッドと私

そうです。前年のUEFAチャンピオンズ・リーグを制していたマンチェスター・ユナイテッドは、トヨタ・カップへ出場するためにロンドンから日本へとまさに旅立つところでした。

マンチェスター・ユナイテッドはイングランドのチームです。後で聞いた話ではありますが、通常であれば使用する航空会社は英国のブリティッシュ・エアウェイズのみ。そういう契約になっているそうです。

しかし、この時ばかりはブリティッシュ・エアウェイズのスケジュールがどうしても合わなかったらしく、その代替便としてJAL・日本航空の飛行機が選ばれました。これだけでも結構なレア・ケースです。

しかし、その日本航空の便で更なる問題が発生します。



なんと、ファースト・クラスを予約している日本人がいたのです。


そう、私です。


私が予約していた航空便におけるファースト・クラスの座席数は9席。1列ごとに3席が配置されていましたが、私の座席は最後列の右側でした。

ファーストクラスにおける私の座席


マンチェスター・ユナイテッドの選手や監督・スタッフなど総勢にして約40名以上の人間が同じ飛行機に乗り込むことになります。

年俸が億を超えるスーパーな監督と選手たちです。当然ながらファースト・クラスやビジネス・クラスのシートを占有します。


結果、ファーストクラスはこんな感じになりました。

ユナイテッドのコーチ陣と私が占有したファースト・クラス


この状況を撮影(盗撮?)したのが、先ほど掲載した「ファースト・クラス内の様子」と題した動画です。見る人が見れば当時のコーチ陣であることは確認できるのではないでしょうか。


そして、残念ながら動画におさめることができませんでしたが、私の前の前のシート。最前列右側の席にはアレックス・ファーガソン監督が座っていました。英国で「サー」の称号がつく、サッカーにおいては超すごい人です。


ファースト・クラスには9席しかないので致し方ないのですが、高額な年俸をもらっている選手たちは無念にもビジネス・クラスで我慢することになります。お肉の焼き加減も聞かれませんし、専用のパジャマも用意してもらえません。

時々、ファースト・クラスに入ってきてはコーチ陣と何か話をしたりするぐらいしかできないわけです。そして、そんな時は決まってコーチ陣に混じっている日本人の若造に視線が向かいます。

「コーチ陣の中にいる、こいつは誰だ?」
「パク・チソンを超えるアジアの新スーパースターか?」

なんて会話があったかもしれませんし、なかったかもしれません。



そんな環境下でドサクサに紛れて手に入れたのが、とある選手のサインです。

某C・ロナウド選手のサイン


外国人からすると怪しい宗教的な匂いしか感じないキャッチコピーが書かれた名刺の裏にサインを書いてもらいました。かなり怪訝そうな表情でサインをしてくれたことを今でもありありと思い出せます。


もらった直後に「ご遠慮ください!」とJALの客室乗務員がスッ飛んできたので、そういう一般客の行為を徹底的に防ぐようチームから言い渡されていたのだと思います。

ファン的な動きを封じられてしまったら、あとはおとなしくファースト・クラスの座席をフルフラットにしてのんびりと過ごすしかありません。
もう二度と訪れないであろう【奇跡】の場を寝て過ごすのは少し残念な気もしましたが、色んな疲れもあってか夢のような空間の中でグッスリと深い眠りについたのでした。


◆エピローグ

飛行機から降りる順番をご存知でしょうか?
通常であれば目的地に到着後に以下の順番で案内がはじまります。

  1. ファーストクラス

  2. ビジネス

  3. エコノミー

さらに今回の便ではタイトなスケジュールで動いている超人気サッカーチームが搭乗しています。当然、最優先で降りるのはマンチェスター・ユナイテッドの面々とういことになります。

しかし、くどいようですが私もファースト・クラスのお客様です。無下に扱うことはできません。

結果、私とマンチェスター・ユナイテッド御一行様は、ほぼ同時に飛行機のブリッジを渡り、空港内の税関へと向かうことになります。

世界一の人気といっても過言ではないサッカーチームの来日です。致し方ないことですが多数のテレビカメラやレポーターの方々が税関へと続く通路沿いに待ち構えていました。私は、そこで機内とまったく同じ経験をします。


「誰?」

選手とは思わなくとも「エージェント的な人かも。。いちおう撮っとく?」と思ったカメラマンが何人かいたのでしょう。
何にも関係ないのにパシャ・パシャと写真を撮られながら大量のお土産を抱えた私はちょっとしたスター気分を味わいながら入国手続きへと向かったのでした。



次回の奇跡予告

『ばったり天皇皇后両陛下と 2 on 1 になった時のあるある話』
をお届けします。



あ、戦術の話は全く無かった。。。

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