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「ばけ物に骨を抜かれし人の事」諸国百物語(江戸怪談集 下 高田衛 編 岩波文庫)より
京都七条河原にある墓地に化け物が出るという言い伝えがあった。いつの世でも若者たちは傍若無人で分別もないものだが、ここでも化け物の祟りを恐れることなく金を賭けて肝試しをやることになった。要は、夜中にその墓地に杭を打ち目印となる紙を付けて来るというだけのことだったのだが…。
若者のひとりが早速それを実行した。杭を打ち紙を付けてから帰ろうとしたところへ、どこからともなくひとりの老人が現れた。老人の年は80歳ほど、頭は白髪で、顔は夕顔のように白くやつれた表情をしていたが、背丈は8尺(2メートル40センチ)もあり、恐ろしいことに目が両の手のひらについていた。
「化け物だっ」若者は驚き恐怖して逃げ出した。化け物は前歯2本を突き出して若者を追いかけてくる。
若者は近くの寺に逃げ込んだ。驚いて出てきた住職に「助けて下さい」と頼むと住職は「ここに入っていなさい」と、着物を仕舞う長持ちを開けて若者を隠れさせてから蓋を閉めた。
化け物は寺の中に入ってきて、寺の中を見回しながら歩きまわって若者を探した。住職はかがんで隠れて化け物の様子を見ている。化け物は若者が隠れ入る長持ちの近くに立つと、犬が骨を齧りつくような音がして、若者のうめき声が聞こえた。
そのうちに化け物は寺から出て行ったので、住職は恐る恐る長持ちを開けてみると、若者は肉を屠られ骨を抜かれて皮だけになっていた。
*この化け物は、妖怪「手の目」のことらしい。
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