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肥満からの脱出

 2023年某日。身長149cm、体重68kg、BMIは30,6。私はあまりにも肥満体だった。原因は過度の飲酒。主にストロング系缶チューハイだ。小説の執筆中はほとんど常にこれを呷っており、翌日に原稿を読み返してみれば記憶のない文章が綴られていることもしばしばだった。誰もがその言葉を忘れかけていたであろう2023年にあって、私は未だストゼロ文学の亡霊だったのである。

 そんな私がダイエットを決意、否、強いられたのは同年の11月。ODで緊急搬送された先の病院でのことだった。

「肝臓の数値が異常なので、退院されたらすぐに消化器内科に行かれてください」

 血液検査の結果用紙とともに、看護師さんにそう告げられた。
 さもありなん。健康な女性のγ-GTPが30台であるところ、私の数値は500に届こうとしていた。

 看護師さんの指示通り、退院後すぐに消化器内科へ掛かった。診断は肝硬変寸前の脂肪肝。身長に対しあまりにも太りすぎている。と医師は忌憚なく私に告げ、ダイエット待ったなし。と判断された。

 そんな次第でダイエットという檻に放り込まれた私であるが、ご存知の通り私は出不精で飽き性で面倒臭がり。極限まで家から出たくないしラジオ体操以上の運動も極力したくない。主治医からはしきりにウォーキングを習慣づけることをを勧められたが、そんな城壁の如きハードルを私が越えられるわけがない。(詳細は第10週「アンチウォーキング」参照)

 そんな次第で私がまず着手したのは食事制限。そしてストロング系酎ハイとの訣別だ。それまで箱で買っていたストゼロを禁じ、代わりに我が家にはオールフリーの箱がやって来た。
 そして食事。朝はカフェオレとトースト一枚、もしくはバナナ一本。昼は冷奴。夜は炭水化物を抜いておかずだけオールフリーと共に晩酌として頂くという生活を4ヶ月ほど続けると、肝臓の数値はみるみる改善しγ-GTPは50を切った。
 しかし正直なところを言うとこの食生活、昼間の空腹感が少々堪える。なので間食に冷凍野菜(せめてもの抵抗)をチンして食べてしまうことがしばしばで、これはこの時点でのダイエット生活の課題であった。

 しかしそんな課題もありつつ体重の方は食事制限のお陰か1ヶ月に1〜1,5kgずつ順調に減っていき、2月時点で62kgまで落とすことができていた。ただ、この頃のひと月ほどは鬱の症状が酷く寝たきりでほとんど食事らしい食事を摂れていなかったことも影響するだろう。よくない痩せ方である。

 しかしここで、健康的なダイエットにブーストをかける出来事が起こる。即ち、精神科病棟への入院である。

 入院は3月の上旬から下旬まで3週間ほどのことだった。入院生活は当たり前だが厳密なスケジュールのもと管理されており、意外と寝たきりでもいられない。私は入院生活のカリキュラムに沿ってヨガなどを行なった。(意外とキツかった)
 そして食事である。病院食はこれまた当たり前だが栄養管理が行き届いており、量も適切である。そして何より低カロリー!
 そんな生活を3週間も続けると精神状態も安定し、自宅の体重計に乗った時には体重は60kgを切っていた。禍福は糾える縄の如し。入院生活様様である。そうして自宅に戻った私は、また粛々とした食事制限&ラジオ体操の日々へ戻った。

 そして5月。私の食生活に革命が起きる。友人の勧めによるプロテインの導入である。

 初めは碌な運動もしないのにプロテインなど飲んでよいものかと少しばかりの罪悪感もあったが、冷奴にかけるドレッシング類の塩分も気になってはいたので思い切ってプロテインに切り替えてみた。
 するとどうだろう。約300mlほどのプロテインドリンクは驚くほど腹持ちが良く、昼間の空腹感から解放され自ずと間食もなくなった。何より、豆腐を皿に出してスプーンで食べるより、豆乳とプロテインの粉末をシェイカーで混ぜて飲むだけの方が断然ラクだ。昼食をプロテインに置き換えることは、ものぐさな私の性分にも合っていた。

 そうして主に食生活にアップデートを重ねつつ迎えた8月の血液検査。γ-GTPはめでたく正常値の32まで下がり、体重も55kgまで減少した。BMIは24,7。ギリギリではあるが、めでたく肥満体から脱出せしめたのである。(拍手!)

 とはいえ、主治医曰く私の身長でいくと適正体重は50kgらしい。ネットの海に滞在する多くのダイエット諸先輩方によれば、加齢により体重が減りにくくなることも多々あるとのことらしい。なので今の食生活とラジオ体操の習慣は今後の人生で一番若い今の内にしばらく続けていこうと思う。
 それに、今よりもう少し痩せてサイズダウンすれば着こなせる服も多くありそうだ。それは数少ないダイエットの楽しみの一つでもある。モチベーションが続けば40kg台も目指してみたい。ただし、怠惰の許す限りで。

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