シュレディンガーの鮭

我が家はいつも振り塩鮭を買います。なぜって安いから。
振り塩担当のさじ加減、冷蔵庫にて寝かせる日数により味が変化する鮭。

調理後、観測者が食べるその瞬間に味が決まる、食べてみるまで味の濃さがわからないこの鮭を私は『シュレディンガーの鮭』と名付けました。
昨晩食べた鮭は良い塩梅でした。

ちょっと話変わりますけど、小説を書いていると、時々キャラが全く別人格に生まれ変わるときがあります。
ストーリーの落とし所をどうしようかなと悩みながら書いているときなんて、一人のキャラが良い人になったり悪い人になったりします。
最近の話でいえば、『おもちゃの指輪が絆ぐ時』に収録している『偽りの幸せ』が、何度もストーリーを悩んで改稿に改稿を重ねた作品なので、名前・外見は同じ登場人物が、中身はその時々でいろいろ変化しました。

キャラが生まれる瞬間って、作者が思いついた時かと思っていたのですが、作者だけが知っている状態はまだ不確かな存在なんですよね。だって、いくらでも変えることができるんですから。なんならボツになって消えてしまう可能性もある。

つまり、出版なり製本なりして、きちんとした作品にし、世に送り出す。
そして、作者以外の読者に観測され、初めてそのキャラは命を吹き込まれ、この世に誕生したことになるのかなぁ……なんて、シュレディンガーの鮭を食べながら思ったのでした。


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