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【2日目編】第71回 日本デザイン学会 春季研究発表大会に初参加しました

2024年6月21日〜23日まで第71回 日本デザイン学会 春季研究発表大会が、九州産業大学にて開催されました。

今年初めて、デザイン学会に参加させて頂いて、非常に学ぶことが多い3日間でした。初日の基調講演、 1日目の発表についても簡単にまとめさせていただきましたので、よろしければご覧ください。

2日目は、現在受講しているXデザイン学校から登壇された方を中心に拝見させていただきました。

顧客志向を育む従業員体験設計

通信事業会社における従業員の行動変容とお客様視点の醸成

学会中発表されていた中でダントツにわかりやすいプレゼン構成と内容でした。また、「朝早く来て頂きありがとうございます。」などと声をかけていただけるなど、発表UXが最高に良かった。

KDDI株式会社の鈴木修平さん牧田起世子の共同研究で、近年企業の組織内で「お客様視点」をいかに醸成するかが課題になっているそうです。
そこで、デザイン思考・人間中心設計で重要視される「観察」を通じて「顧客のニーズや期待を深く理解する」ことができるのではないか。
深く理解することで顧客ニーズに応じたサービスが提供できるようになるのではないか?という仮説を立てられていました。

研究目的を「企画部門の社員を店舗に送り込むワークショップ」を設計するとして、社会心理学の黄金の3割理論に基づいて企画部門の4割のグループに対してワークショップを提供されたそうです。

現場スタッフの事前調査。面白いのは感覚的な理解を求める内容が多い。

単純に店舗に行って顧客の行動を観察するのではなく、事前事後のワークをしっかりと設け、ワークショップの目的や店舗(現場)との認識差を再度認識する時間や、部署内に持ち帰り共有の時間を、しっかり取られているのは流石だと感じました。
ワークショップはどうしても一時的で、受けた人だけの意識改革で止まってしまいがちなので、計画の中に組み込むのは大切だと関しました。

かなり濃厚なワークショップ。私も受けてみたい!

最後に、個人的に良いなと感じたのが「宣言書を書く」です。よくある方法なのかもしれないのですが、私は初めてだったのでこれは使えるなと感じました。ワークショップなどで「よしやるぞ!」という気持ちにはなるのですが、気持ちが乗っているうちにアウトプットをする機会が無いと、どうしても消えていってしまいます。
声に出したり書いたりすることで、自分自身の心に深く刻まれると思うので、普段の仕事にも使えるのではないかと感じました。

今後も引き続き「お客様視点」の定着度合いについても、聞かせて頂きたいと思いました。

働く意味のキャリアデザインの方法論に関する研究

ナラティブと意味のイノベーションによるキャリアデザイン

普段は人材業界でラーナーエクスペリエンスデザイナーとして働く柳瀬浩之さんの発表は、普段キャリアコーチングのお仕事でも感じられている「個人が働く意味(働きがい)をデザインする方法が求められているのではないか」という問いから始まったものでした。
そこでキャリアコーチングでの成功事例を元にデザインという観点から形式知化することを目的に研究を行われました。

柳瀬さんの研究では、「働きがい」だけにとどまらず「社会の価値につながる」という広い視点で研究されているのが印象的でした。

調査方法としてはプロトタイプとしてコーチングプログラムを行い、対象者の働く意味の変化を評価されていました。

過去の棚卸しとして物語原型ワーク、自分史ワークを行い、そこから「未来雑誌」を作るという流れは、言葉を主体としたコーチングにはない気づきや納得感があるのではないかと感じました。

最後に行われる5分間の質問タイムでは、質問というよりも質問者のお悩み相談になり、会場が共通の悩みで盛り上がりました。キャリアコンサルタント×デザインの可能性について非常に考えさせられた発表でした。

プロジェッティスタの実践・プロセスに関する調査・探究

小原 大樹さんは2023年に同学会で発表された「おとなの自由研究の実践に関する考察」というテーマをアップデートする形で発表されました。

プロジェッティスタとは、「プロジェクトの立ち上げから最後までをやる人」という意味になるそうです。デザインやデザイナーという表現はまだまだ芸術的な意味で取られる事が多く、デザイン行為(progettare)はだれでもが普段から行える日常的な行為であるとしてプロジェッティスタをいう言葉をつかっているそうです。

今回、小原さんはこういったプロジェッティスタ達がのこしたアウトプットは多く見ることができるが、実践プロセスについてはあまり残ってないとして、実践家や研究家にインタビューを行いまとめられました。

城谷耕生氏のスタジオで共に働き、その仕事の流れを受け継ぐ日本の実践家古庄氏へのインタビューで見えてきたのは土台となっている考え方が「社会にとって、相手にとってよいものは何かを徹底的かつ、批判的に考える」という考え方。

ムナーリやカスティリオーニと共に実践を行ったイタリアの実践家シルバーナ・スペラッティ氏へのインタビューで見えてきたのは、収集した情報を自分なりの軸を持って取捨選択した上で、見る側の視点に立ってわかりやすく整理していくカタログ化をいうプロセスを身につけることの大切さ。

お二人のインタビューから、プロジェッティスタは気になること(好奇心の種)を自分の中にカタログとして取り込むようなプラクティス(稽古)を日々行なっているという事がわかり、今後は実践ハードルが低いプラクティス方法として「Feel度Walk」や「対話型鑑賞」を用いて理論の実践やアップデートしていきたいと発表を閉められていました。

ポスター発表

ポスター発表は、学会期間中であれば常に見ることができ、発表と発表の合間やなどに気軽に見に行く事ができました。
ポスター展示も口頭発表に負けず劣らず面白い内容のものがありました。
気になった4点を紹介したいと思います。

私自身がDIYや場作りに興味があるので拝見した。周りを巻き込むところも詳しく知りたかった。
私自身Webやアプリのデザイナーをしているので、興味深く拝見した。デザイナーとエンジニアだけでなく、他の立場でのChatGPTとの関わり方がわかるともっと面白そう。
趣味で電子工作を行うので、こういったリアルに物を作って検証するプロセスはとても興味がありました。こちらは実際の作成したものと、プロトタイプの検証について知りたいと感じました。
私の地元も、わずかながら近隣住民とのおすそ分け文化が残っています。普段からおすそ分けはエコだなと感じます。余す事なく欲しい所に適正量が回されていく。
調べられた内容を元に自分でも実践してみようと思いました。

参加をした感想

初めての学会という事で、驚きが大きかったです。周りの方に伺うと、学会によって雰囲気は異なるそうです。もし機会があれば他の学会も拝見したいと感じました。
また、今回口頭発表、ポスター発表を拝見して自分もやってみたいと思いました。来年は是非申し込みたいと思います。その前にしっかりテーマを決めて進めないとですけど….

引き続き、カルチャーショック編もご覧いただければ幸いです。


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