マーケティングリサーチと恋愛。それから料理の話。

社内の経営戦略勉強会「Tribal Professional Academy」、通称「TPA」。今回のお題は「マーケティング」の、中から「消費者行動論とSTP」「マーケティングリサーチ」です。課題図書はたっぷり6冊! 

流し読みができるので、そんなにハードではありません。

「消費者行動論」「心理マーケ」でマーケティング活動の基本と言われる消費者行動や心理を整理して情報処理フレームを掴み、「マーケティング・リサーチ」ではその手法を理解する、と行ったセット組みだと思います。

マーケッターはずっと片思いだった・・・?

「私はこんなに好きなのに!」という意味のわからない恋愛ドラマの常套句がある。いやいや、恋愛関係が成り立つ唯一の前提って「相思相愛」だし。一方の熱量がいかに大きかろうが成立不可能ということぐらい、わかるよね? いや、そんな当然のことすら吹き飛ばしてこんなこと口走っちゃうくらいに、愛って狂おしいよね、ということの隠喩なのか?

ともあれ、今回の課題図書を通じて、そんなことをちらほら思い出した。切ない。

マーケティング活動の基本である「消費者を知る」という避けては通れなくなってしまったプロセスは、どんな時代にもマーケッターを振り回してきたのだ。常にターゲットをセグメントし、行動や心理を探り、定量的定性的に調査が重ねられる。時代が変われば人が変わり、調査手法もアップデートされていく。

2000年代には「人の心を知るには脳波がいちばん正しい!」と、脳科学の知見を活用して消費者の心理や反応を読み解く「ニューロマーケティング」なるものまで登場したという。やっぱり、切ない。そして、愛おしい。

全てがわかれば、愛しますか?愛してもらえますか?

どんなに科学が進歩し、マーケティングテクノロジーが進化しても、消費者行動もインサイトも、手に取るようにわかるようにはならない。マーケティング初心者の私だって直感的にそのくらいのことはわかる。だって自分は消費者だから。

もし仮に、教科書に見るような調査分析の歴史や手法で求愛されたところで、少しは気にするかもしれないけれど、劇的な恋に落ちることはないから。冒頭のような「いやいや、前提わかってます?」と白けてしまう。消費者からマーケッターとして立場を変えて見たとき、そんな残酷な事実に切なくなるのかも。

「インサイト」と「編集」と「マーケティング」

一方、『インサイト』にあるアプローチは従来の要素分解的な調査手法の限界を唱えている。前提としてのスタンスは、こうだ。

・今までの消費者分析は限界がきている
・人は直感や気持ちで商品を買う(=インサイトというスタンス)
・調査さえすればインサイトが見つかると思ったら大間違いで、インサイトを見つけるための手法や解釈がとてつもなく大切だ。
・消費者の「どの気持ちを捕まえれば」好感を持ってくれるのか?という「ホット・ボタン」を探そう
・主観的で質的なインサイトという発見を核にして、いかにマーケティングという客観的で定量的なプランに組み立てていくかを考えるべき

このアプローチは、私が憧れていたような、センパイ編集者の姿勢に似ているな、と思った。特にこの辺り。

インサイトを見つけるには、「感受性」と「直感」が何より大切だ。アタマで消費者を理解しようとしないほうがいい。ふにゃふにゃした気持ちと、人をおもしろがる好奇心を準備しよう。仕事ではなく、遊びだと思うぐらいでちょうどいい
出典)桶谷 功. インサイト (Japanese Edition)ダイヤモンド社.

そして、奇しくも代表の池田もnoteにこんなことを書いている。わーお。

「優れた編集者は優れたマーケッターである」というのは有名な話。ということは、(体験の)優れた消費者であることは、優れた編集者=優れたマーケッターになる条件なんだな。その前提で、再現可能になっているということ。すごいな。いまさらだけど、そうなりたいな。

それでもマーケッターは消費者を知る努力をし続ける。

消費者が言語化できていない“インサイト”を探求するための手法もやっぱり、マーケティングリサーチであることに変わりはない。つまり、マーケッターはこれからもいつまでもいつまでも、消費者を知る努力をし続けなければならない、ということなのだ。なぜか? それはきっと、精度確度を可能な限りに高めるため。

素材そのままでは勝負できないこの時代、出汁を取らないなんて、素材を知らないなんて、あり得ない!のだ。

「料理は、愛情!」なんて古いんだ!!

マーケティングリサーチを料理に例えた話がどこかにあったように思うのだけど、その観点で考えると、料理人であるマーケッターに必要なのは素材と客への理解(=データの扱い)だけではなく、素材を引き出す調理法であり、高める出汁であり、さらにはどんな料理に仕立てるかのイメージの引き出しの数なのだ。もちろん、プロの料理人たるもの、その料理もコースの組み立ても、どんな環境においても再現できなきゃいけない。

そして、池田のいう通り、高価なフルコースや世界の稀有な料理などをも知る経験豊富なマーケターの方が、感動を予感・約束・実感させてくれる優れた料理人であろうことは想像に難くない。

つまり。経験豊富なマーケッターは、料理も上手だし、恋愛も上手なはず、という、マーケティングとは随分遠い地平に来てしまったので、今回はおしまい!

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