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舞台・魔法使いの約束(矢田さんに偏った)感想

まず、矢田さんが2.5舞台に出ると知ってすごく驚いた。 
私自身が矢田さんを舞台で観たのが『ハムレット』からだったので、矢田さんの2.5作品出演を観たことがなかったことと、この2年ほど出演作品を観ていて、今後あまり2.5のお仕事はしないのかもなあと勝手に思っていたからだ。
それから共演者に丘山晴己さんことはるちゃんも居たことに、矢田さんとはるちゃんなんて、これはもう歌が素晴らしい作品になるだろうなと俄然楽しみになり、ゲームも始めた。
ゲームはメインストーリーが面白く、レベルもサクサク上がっていったので、観劇前までに今回舞台で見られるであろうところまでは読み切って臨むことが出来た。
ゲームを進め、ストーリーへの理解を深める間に、それぞれのキャラクタービジュアルやPVも発表になり、キャストのビジュアルも振る舞いも本当にぴったりで(何となくキャスティングはオーディションではなく指名制だったのかなと感じた)、矢田さんのファウストも本当に美しく、期待感が増した。


そして観劇当日。
チケットを発券したときからかなり良い席だなあと何となく思っていたけれど、実際座ってみたら最前列で本当にびっくりした。
矢田さんの舞台はアルジャーノンでも最前列に座ったことがあり、しかも初見だったので美とストーリーと歌唱力に殴られ頭が混乱したまま岐路に着いたことがあったが、今回もそうなるだろうと想像したし、実際そうなってしまった。
ほさかさん演出の作品を生で観るのは初めてだったけれど、演出はもちろん、舞台映像、大道具、小道具演出はかなりゲーム制作側と綿密に作られたのだろうなと細部まで気を配ったつくりに、それぞれの方のまほやくへの理解を感じてうれしく思ったし、この気持ちの共有が2.5舞台の醍醐味だよなあと改めて感じた。
幕開けから花かけらの波、オープニングまで2.5にしては割と長い時間を掛けているが、それをあまり長い時間と感じなかったのは演者たちや脚本の力もあるとは思うけれど、前述の通り映像演出、それから舞台上の大道具や小道具等がしっかりと作られていて、視点が様々に奪われたからということもあると思う。
特に花かけらの波のインパクトは凄かった。
ストーリーの中でも、この世界の美しさを一番最初に感じさせるエピソードだけに、どんな演出だろうと思っていたけれど、映像演出、そして賢者が花弁にふれて、キラキラと金色が舞う演出が本当に魔法の世界にいるように美しくて、密やかにため息したのを覚えている。
そしてメインテーマ『始まりの合図』のオープニング。ここで全出演者が揃う。
衣装はもちろん立ち姿やそのダンスも、歌詞も曲も美しくて、ただただその世界観に圧倒され、没入感が増した。
特にそれぞれのソロ(またはデュエット)の歌詞がきちんとキャラクター像とも合ったものになっていて『このキャラクターはこういう雰囲気の人物』という紹介の様にもなっていたように思う。
やっぱり、ファウストが「火を熾せば〜」と歌ったのは、その歌唱力はもとより、ファウストにその歌詞を与えることに痺れた。
これが観客を舞台に引き込むための先制パンチだったように思うし、わたしは完全に世界観にノックアットされて引き込まれた。

そこからファウストタイムが始まり、わたしはファウストを観ていたけど、キャストビジュアルよりも生身の矢田さんのファウストの方が何倍も美しかった。矢田さんは元々顔の彫りが深くてベニスに死すのタッジオみたいだな……

といつも思っているし、わたしがゼウスなら星座にしてたとハムレットでも思ったけれど、今回は更につけまつげまでしていたり、カラコンを入れていたり、いつもよりしっかりメイクされていることで、この世の物ではないというか、まるで絵画か像の様だった。しかし造り物の静物は動かないので、訳がわからないほど美しいものが目の前で動いていることに混乱と興奮で頭の中がぐちゃぐちゃになる。わたしは、舞台の上の矢田さんを観るたびに、メトロポリタンミュージアムの曲を思い出す。
後ほど配信を観ている時にも、やはり混乱はしたけど、その美しさがファウストのカリスマ性とか、まほやく内でも一番(主観)のモテ男である存在の説得力になっているように思えた。
ファウストの過去とリンクさせるように、十字オマージュで掲げられた時には、汗ばむ手でハッと胸のあたりを押さえてしまった。美しい男が生贄のようになるのを見るのはその様に衝撃もあるけれど、それよりも非常に興奮する。
また衣装もとても良く作られていて、似合っていた。
ファウストはその性格と呪い屋という職柄、肌の露出を抑えた服装をしているし、装飾品も付けていたりするけれど、それが矢田さんの華奢な(ハムレットの時には割としっかりしているように見えていたので、着込んでいるのに細く見えるのは衣装によるところもあるのかもしれない)体躯にも合っていたし、マントやカソックのドレープも動くたびにまるで真っ暗な夜が滑るように綺麗に靡いていて、質感まで含めて美しかった。
ファウストがベッドで眠るシーンなどもあったが、美しいひとは眠り顔まで美しいんだな……という当たり前の気づきに感動があった。寝顔といえば白雪姫のストーリーだが、もしもわたしが王子なら美しい寝顔を見たらその衝撃でただ見つめるしかできないし、口付けるなんてことは考えも及ばないと思う。
そして、歌。
わたしは矢田さんの歌が本当に好きなのだが、今回も矢田さんが歌うたびに身体全体にビリビリと電流が走るようだった。
ほさかさんが「耳にレッドブル流し込まれてる錯覚」と言っていたけれど、とてもよくわかる。
歌が上手いというだけじゃなくて、少し掠れるような声の質がその魅力をより引き出してるのかもしれない。特に、今回のファウストの様に内面に怒りを燃やしている様な役の歌が本当に本当に素晴らしい。
そう思うのはわたしが矢田さんを観てきたのが、ハムレットやチャーリィだったからというのがあるのかもしれないけれども。(Defiledもそうだった)ハムレットも怒りを燃やしていたし、チャーリィも『檻の外へ』の歌い方が強くて怒りに満ちていて本当に好きだ。

ご本人もまほステ後の配信でハムレットを勧めていたので、ファウストとハムレットに似たものを感じていたのはご本人もなんだなと思った。

ファウストと矢田さんのことばかりだけれど、好きな役者が出てる作品の初見最前の記憶なんて衝撃ばかりで本当にあてにならないし、大体舞台に殴られて殴られた記憶だけでハイになって終わる。


しかし矢田さん以外にも本当に良く合っているキャスティングだった。
はるちゃんのオズは存在感があったし、中でもファウストとのデュエットのBGMは『贅沢〜〜〜!!』と唸ってしまった。
はるちゃんのダンスは美しくて本当に感動するけど、オズの性格を思うと少しの違和感もあったので次回までにその感覚の擦り合わせが自分の中で出来ていたらいいなと思う。
北川さんは本当に、ああいう気品があって真っ直ぐな役が似合う。昔北川さんを良く観ていて、その時から印象が変わらない。多分本人が持つ頑固さ、強さもアーサーと合うなあと改めて思った。
ジェーくんのシャイロックは全く想像出来なかったけどとっても良かった。賢者に紋章を見せるところ、本当に、えっちすぎて笑ってしまった。ムルとの『月に焦がれて』もふたりの関係性が良く現れててゾクゾクしてしまったし、照明により美しさが際立っていて本当に綺麗で、切なくて、寂しかった。
橋本くんのムルは、アクロバットの凄まじさ……本当に猫のようにくるくると簡単そうにアクロバットを次々繰り出すので驚いてムルらしさが体現されてて凄く感動した。
他にも双子先生の息がぴったりすぎてびっくりしたとか、賢者さまが初々しくもその優しさと真面目さで魔法使いたちに寄り添うのが凄く素敵だったとか、色々とあるけど、まとめきれないので割愛する。

若手と中堅とベテランが集っていて、その役割がそれぞれ役者にも役にもリンクしているような舞台はあるようで無いし、切磋琢磨したり互いに影響しあえたり、お互いが持つ武器を褒め合えたりする現場は本当に素敵だなと今回の座組みを見て強く感じた。
凄く驚いたけど、公式の企画ではないのに、配信を役者それぞれで観てオーディオコメンタリーする現場なんてそうそう無い気がしている。

次作で全ての魔法使いが揃うが、新キャストが加わることで座組に更にどんな魔法が掛かるのか楽しみでならない。
また、あの夢のように美しく、目が覚めるように痛みを持つ世界に入り込める日を待ち遠しく思いながら、新情報を追っていきたい。

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