(35)義父と電話

義父は何十年も携帯電話を持っていたが、2年ほど前に解約した。最後までガラケーのままで、スマホは持つことはなかった。仕事場ではFAX付きの電話を使っていた。もともとデジタル機器に強いほうではなかったと思うので、携帯に新しい連絡先を入れたいとき、どこから着信があったのか知りたいときなどはよく私に聞きにきていた。それが、やはり年齢とともに、もしかしたら認知症がスタートしていたのかもしれないが、携帯や仕事場のFAX電話がうまく使えないということがだんだんと増えていった。自営業者みたいなもので1人で仕事をしていたので、インクリボンの交換が出来ない、FAXがおかしい、電話がかけられない、などと義父に言われ、何度仕事場まで見に行っただろう。そして最近は、家の固定電話もあまり自信がなさそうだ。義母がいないときは電話の着信に気づいてもとらないこともある。しかし、今朝は義母がデイサービスでいないのに、義父が電話の着信に気づいて出たらしい。電話は義母のかかりつけ医からで、予約日の変更の件だった。しかし、やはり電話で内容を聞いてメモをとったり記憶して伝える、ということは義父にはムリなようだ。電話をくれた病院の事務員さんが、すぐに夫の携帯に同じ要件でかけてきてくれた。義父に伝わっていない…と感じたのだと思う。すぐに、義父のところに行って、「病院から電話あったみたいやね」と言ってみたが、義父も、「長男さんにかけ直しますって言うてはった」とだけ言って、電話の内容は何も言わなかった。詐欺電話がかかっても、内容が伝わらずだまされにくいかもしれないけど、大事な電話も伝わらないという不便さもあり。


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