(71)義父の認知症行動

義父は、認知症の症状が強く出ているとき、まだ仕事を続けていると思い込んで仕事に行こうとすることがある。それは、あてもなく徒歩で出て行ってしまうこともあれば、車で送ってくれるか、と言ってくることもあるし、取引先の誰誰が今から車で自分をひろってくれるとか、それはまあいろいろで…。先日は、自分で車を運転して仕事に行く気持ちになっていたようで、玄関にひっかけてある私の車のキーを手に取り、二重鍵とチェーンを時間をかけてはずして家の外に出た。私は家事の手をとめ、ベランダからこっそりと義父の様子を見る。義父は私の車のキーを持って外に出たものの、以前自分が乗っていた車はなんとなく覚えているみたいで、ガレージの私の車に乗り込もうとはしなかった。しかし、家の近くの他人様の車を順番に見て行き、イライラしながら、「車どこや!」とひとりごとを言っている。しばらくの間そうやって自分の車を探し、結局見つからないから家に入ってきた。時間がたつと車のキーもどこに片付けられたらかわからなくなるので、私はすぐに車のキーを返してもらい、義父を部屋に誘導した。介護経験のない人には、こんなぐらい、とりたててしんどいというほどの話ではないと思う。でも、これが毎日毎日、なんなら1日のうちに何度も、となると、こちらは何も出来ないままに1日がムダに終わったような気持ちにもなり、やるせないものだ。

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