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河瀬直美監督新作「Vision」を観ました

河瀬直美監督の新作「Vision」を観た。
河瀬監督は、同郷で、映画祭のアドバイザーもさせていただいたり、親しくさせていただいているので、ここでもいつものように河瀬さんと呼びたい。。

今回の作品の圧巻は、やっぱりフランス女優のジュリエット・ビノシュ。繰り返し画面一杯に映し出されるビノシュのアップと涙。もうそれだけで、何かグッとくるものがある。彼女が放つオーラは、共演者に適度な緊張を与えると同時に、未だ出したことがない演じる力を引き出したのではないかと思う。

仕事をしていると、自分の力を引き出してくれる人がいることを感じることがある。なぜか、この人と仕事をすると、いつも以上の実力が出る・・そんな感じがする人がいる。いつもなら出てこないアイデアが出てきたり、いつもより良い表現が出てきたり・・それは、適度な緊張感と適度なリラックスがうまくバランスが取れたときでもあり、なんと表現して良いのかわからないけれど、プロフェッショナルとしての真剣なオーラが、場全体を包み込んだ瞬間でもある。

さて、Visionという映画。河瀬さんの映画監督としての人生を表現しているような気がした。今回は、河瀬さんの原点である奈良県の吉野が舞台である一方で、LDHがプロデュースしたことで、CGや大胆な空撮など、これまでの河瀬さんの映画にはなかったようなお金を使った表現が多用されている。原点に立ちつつ、大きく次の段階へと生まれ変わろうとする河瀬さんの覚悟のようなものを感じた。

映画の中では、様々なシーンで、河瀬さん自身の人生と重なるところがあるように感じたけれど、何よりも、約1000年に一度胞子を放出するという薬草Visionこそが、河瀬さんであり、放出された無数の胞子のように、そのいく末は多様であり、未定であることが、これからの河瀬さんの表現活動にも重なるような気がした。。


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