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このオリンピックは誰のため

「人々の命と暮らしを守るために、東京五輪の開催中止を求めます」。新聞記事にあったインターネットサイトを開くと、そこに大きく掲げられていたのがこの一文でした。

署名数を表す数字は、秒針が時を刻むように刻々と上がっていきます。このネット署名が報じられた際の「32時間で10万筆」は、この時既に3倍の30万筆に迫る勢いになっていました。

「これだけ多くの数字は予想しなかったので勇気づけられる」と言ったのは、この署名サイトの主催者、元日本弁護士連合会会長の宇都宮健児氏です。

過去3度、都知事選に挑戦したことのある宇都宮氏。小池百合子現都知事と争った際の彼の公約に「オリンピック中止」があったことを思うと、今回の署名のメッセージは選挙の名残に見えなくもありません。

しかし、「この状況で開催すれば、”平和の祭典”であるはずの五輪は、その理念から大いに逸脱する。出身国によって、満足のいく準備をまったくできなかったアスリートとそうでないアスリートの間に、多大な格差が生じる」とのメッセージには、共感を呼ぶ力があります。また、「現在の東京都および日本全体に(医療設備、医療従事者の資源を割く)その余裕はまったくありません。外国からの観客を制限したところで、五輪は大規模な人の移動と接触を引き起こす。五輪によって感染状況が悪化することは大いにありうる」と危機感をあらわにします。

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