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You Must Be Present...

2005年3月4日の日記。
米国ヴァージニア州の片隅にある日系企業の現地法人で、日本人駐在員である「ぼす」の元、秘書兼通訳兼「やっかいごと よろず引き受け業」的な何でも屋さんとしてお仕事をしていた頃のお話。
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ただの笑い話で終わらなくなってしまったのである。

運良く遅刻もしないで出勤できたところまではよかったが『「ぽんこつ」君置き去り事件』の先行きは暗く。なんとしてでも「ぽんこつ」君の救出が急務となり。(くわしくは こちら から)

でも。いったいどうしたらいいんだろ。

週明けな上に月末ってことで、ただでさえ忙しいのに加え(註:2/28(月)のできごとです)今日が当地での最終日となる転勤者がいるのだ。雑務が山積しているし、おまけに午後からは「送別パーティ」もある。「やっかいごと よろず引き受け業」な身としては、会場となる会議室の準備や、ケーキを買いに行ったりもしなくちゃならない。とても現場まで戻っている余裕なんてないじゃないか。

途方に暮れて立ち尽くしているワタシに同僚のひとりがこう言った。

”Aren't you a member of AAA?"
(AAAの会員じゃないのかい?)

おぉ、そうだ。そう言えばそうだったよ。思い出させてくれてありがとう、同僚よ!

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註:「AAA」っていうのは日本の「JAF」のような組織。American Automobile Association の略。米国自動車協会。年会費を払っていると困った時に駆けつけてもらえたり全米各地のホテルやレンタカーの割引を受けられたりする。読み方は「トリプル・エー」。

しかも同僚氏が言うには、ワタシの「ぽんこつ」君は「FDW=Front Wheel Drive」、つまり前輪駆動車なので、頭の方を持ち上げればレッカー移動が可能なようで。言い換えれば、「ぽんこつ」君のキィをわざわざ渡しに行かずとも、AAAに頼めばどこへでも牽引してもらえるはずだと言うではないか!

光明が見えたよ、これで。

いそいそとオフィスに戻り、早速AAAに電話を入れることにしたワタシ。ところが案の定、コトはそんなに簡単には運ばなかったのである。

"You must be present at the time of service."
(当サービス提供時にはお客様に立ち会って頂く必要がございます)

ってことらしく。結局のところ会社をちょこっと抜け出すしかないようだ。そう思ってAAAの車がどのくらいで現場に到着できそうなのか訊ねてみたのだけれどオペレータのおねぇさんの返答にがっくりきた。

"Right now, it's somewhere between 60 to 95 minutes."
(現在の状況ですと60分から95分後の到着になりますね)

ろ、ろくじゅっぷんって...。

しかも

"It could be anytime between NOW and 60 to 95 minutes."
(現時点から60ないし95分後までの間に到着することになります)

って言われてしまったのだ。つまり言い換えると、AAAの到着は今から5分後かもしれないし50分後かもしれない訳だ。しかも YOU MUST BE PRESENT って散々繰り返し言われるし。こんなお天気だから出動要請もきっと普段より多いだろうし、AAAもきっとてんてこ舞いなのだろう。だけどワタシだって仕事もあるし、そんないつ来るかわからないAAAのために「ぽんこつ」君の中でぼーっとして待っている訳にもいかず。

"Are you saying that I'd have to sit tight and wait for help that may not show up for the next hour and a half???  In this FREEZING weather???"
(こんな極寒の悪天候の中、1時間半もただひたすら助けがくるのを待ってろっておっしゃるんですか???)

できるだけ感情的にならないように、できるだけ淡々とオペレータのおねぇさんに訴えてみる。

"......we'll have the driver call you on your cell 10 minutes before arrival."
(現場到着10分前にお客様の携帯にお電話させて頂くように致します。)

10分じゃぁさすがに会社から現場まで戻れない。食い下がって交渉してみた結果、到着20分前に電話をもらえるよう手配してくれることになり。オペレータのおねぇさんに気づかれないよう、小さく安堵のため息をひとつ。

受話器を置き、とりあえずは山積する書類の山にしばらく没頭することにしたワタシ。現場まで戻る足も既に確保済みだ。手筈は万全、すべては順調に進むかのように見えたのだけれど。

やはりそんなに簡単にオペレータのおねぇさんのコトバを鵜呑みにしてはいけなかったのである...。

つづく

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