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不登校の子どもたちの存在を絶対に見逃さない、からはじめたい(第130回中央教育審議会総会 参加メモ)

2月8日の昨日は、中央教育審議会(以下 中教審)に参加しました。 ※中央教育審議会とは

中教審には、小学校から高校までの学校教育をどうするかを考える初等中等教育分科会など、いろんなテーマの会議があるのですが、この「総会」というのは、それらすべての会議の全体を束ねる「日本の教育の方針」(スコープがでかい・・!)を検討する場、ということになります。
今回の「総会」では、教育振興基本計画という「5年に一度策定するこの国の教育政策の目標と施策」について、2023年から新しいクールに入るということで、その内容の方向性を検討せよ、というお題をいただき議論しました。
ちなみに、ある事案に関して、有識者で構成された審議会などのような機関に、会議を主催している偉い人が(今回で言うと大臣)なんらか見解を求めることを「諮問する」というそうです。そしてその諮問を受けた機関が回答を提出することは「答申」とよばれます。

今回の諮問はこちら。
□全文
https://www.mext.go.jp/content/20220204-mxt_soseisk01-000020368_21.pdf
□概要
https://www.mext.go.jp/content/20220204-mxt_soseisk01-000020368_22.pdf

ちなみに、今回の諮問にはこんなことが書いてありました。

「現在の教育制度は、近代的な社会・国家が形成されていく中で、既存の制度を変容させながら、当該社会状況や当時の技術水準、求められる資質能力を踏まえて形成されてきたものですが、全ての概念や定義、制度が過去から将来にわたり全て同じであるということはありません。日本社会が大きな転換点を迎える今、…(略)…教育や学習の在り方も大きく変容が求められる状況にあると言えます。このような状況を背景として、オンラインの活用など「デジタル」と「リアル」の最適な組合せという観点から、コロナ後の教育や学習の在り方について検討することが今必要となっています。 (中略)  その際、今後の方針や目指すべき方向性の議論に当たっては、単なる理念の検討にとどまらず、2040年以降の社会を念頭に、当該方針や方向性を確実に実効性あるものにするための制度の改善や政策に必要な人的・物的資源の確保と再配分といった具体的な手段を念頭に置いた上で、次期計画期間内において結論を得て実行に移されるように議論を進める必要があります。 また、何よりも、学習者の背景や特性・意欲の多様性を前提として、学習者視点に立ち、誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学ぶことができ、誰一人取り残されず、一人一人の可能性が最大限に引き出され、一人一人の多様な幸せであるとともに社会全体の幸せでもあるウェルビーイングが実現されるように、制度等の在り方を考えていく必要があります。」

なかなかいい問いをいただきました。何かにつけて「文科省は・・」とため息交じりに聞くことも多いですが、個人的にはこの文章から、この社会の暗闇をアップデートしたいという、願いに近いものを感じました。

さて、下記は会議での私の発言論旨です。
*****
次の第4期教育振興基本計画を検討するにあたり、「第3期教育振興基本計画」の振り返りに関して、質問させてください。

第3期計画の「基本方針4: 誰もが社会の担い手となるための 学びのセーフティネットを構築する」の中の、「教育政策の目標15、多様なニーズに対応した教育機会の提供」があります。

内容を読むと、「義務教育を様々な事情で十分に受けることができなかった人々に対し,年齢等に 関わりなく,多様な学習活動の実情を踏まえた教育機会の確保等を進める ことや,若者の社会的自立に向け,不登校や高校中退者等の様々な背景に 対応した学習相談・支援等に取り組むことが求められる。」と記載されています。

計画を策定した平成30年の義務教育長期欠席者は240,039名が、令和2年度は287,747名。

不登校だけをみても平成30年に164,528名が、令和2年度には196,127名。

そして、こどもたちの自死も過去最高になっているということをどう受け止めるべきでしょうか。

第4期を考える上で、この数字を重く受ける必要があると考えます。

2021年6月放送のNHKスペシャルでは、10代20代の自死にいて特集されました。他の世代で自死が減っているにも関わらず、10代20代の自死が増えている。その原因をさぐるため、国の指定を受けた専門家組織の研究者たちが、警察が保持していた過去12年、30万4373人のデータを分析したそうです。

分析チームがまず注目したのは、自殺を図った時間だそうですが、40代以上は5時から6時台の早朝が多い中、10代では夕方から夜の下校時間に最も集中していました。さらに中学入学前の12歳は、7時台から8時台の登校前の時間帯も多かったそうです。

また、「学校行きたくない」の検索数は、長期休みが終わることから増えます。

学校に行くということに対する心理的な拒否は、不登校につながり、もしかすると、「学校に行くくらいなら死にたい」と自死にもつながっている子どもも少なくないのではないか?という可能性が示唆されていました。

1人1台の端末がすべての子どもたちに配布された今、デジタルとリアルの適切な組み合わせで学びを構成することが、物理的にできるようになりました。住んでいる地域や学校によって確保しなければいけなかった学びの資源も、デジタルを利用すれば世界中から集められます。学校にいても、学校という空間を超えた支援によって、子どもたちの様々な事情に合理的配慮を踏み込んで行うことが、可能な状況と言えるとおもいます。

日本の子どもたちが「どんな環境に生まれ育っても、学びを通じて一人ひとりの多様な幸せ(well-being)を手に入れられる当たり前」を実現するために、、教育の供給側の理屈ではなく、受益者である子ども真ん中で検討することが、現実的にできる時がついにきたんだと思います。

学校教育法の中で定められる「就学義務」を改正する、また、学習指導要領において多様な学びを子どもたちが享受できるよう明確に位置づける、などを行い、通知で現場の裁量に任せることのない、きちんと位置付けをしながら、学習権の保障を行う必要があります。

誰一人取り残さず、すべての子どもたちの学習権を保障する。
そういった内容を計画に盛り込む方向性を求めます。

***** 以上。

具体的な現場ばかり作ってきた私にとっては、抽象度が高い上位概念での政策議論はなかなか難しくて、周りの賢者の皆さんに「これどういうことー」と頼らせていただだいてばかりですが、せっかくいただいたお役目なので、具体と抽象の行き来をもっと覚えて、どんな環境で生まれた子どもたちも「明日は楽しみだ」と思えるあたりまえをつくるために、できることを最大限取り組んでいこうともいます。引き続きよろしくお願いいたします。

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※余談ですが「教育新聞」は、この国の教育がどちらに向いて向かっているのか、各審議会などの情報が丁寧に取材されています。おすすめです。↓

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