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「形容詞+ですから」に違和感を感じない中国人日本語教師のお話し

中国人の学生や教員が書いた作文を添削していて気になる表現があります。それは「形容詞+ですから」という言い方です。

日本語教師らしく、もう少し丁寧に説明しますと「イ形容詞文(丁寧形)+から、〜」という文型に違和感を感じます。

例文で説明しましょう。

例1)このお店は安いですから、いつもここで買い物をします。
例2)彼は優しいですから、大好きなんです。

読んでみて、モヤッとしませんか?

次のように変更するとスッキリします。

例3)このお店は安いので、いつもここで買い物します。
例4)彼は優しいから、大好きなんです。

違いは「です」の扱いです。

形容詞に「です」をつける使い方は新しい

形容詞(日本語教育の世界では「イ形容詞」)は、本来「です」を使わずに使っていました。

例5)とてもおいしい。
例6)とてもおいしいです。

例5 の文が本来の使い方です。しかし昭和27年に国語審議会が「これからの敬語」の中でこの問題を扱って以降、例6 のように「です」をつけても構わないことになりました。

もちろん言葉は変化するものです。ですからこの変化についてとやかく言う理由もありません。しかし一部の変化が日本語の他の用法にまで及ばない事があることに注意が必要です。

今回の「形容詞+ですから、」に違和感を感じるのはまさにこの問題です。

「危険ですから」と「危ないですから」の違い

例7)危険ですから、白線の内側までお下がりください。
例8)危ないですから、白線の内側までお下がりください。

もはや聞き慣れているので、どちらでも違和感を感じません。

でも聞き比べて、よりしっくりくるのは、例7 の「危険ですから、」の方です。「危険」は日本語教育の世界では「な形容詞」と言います。ナ形容詞は名詞と同じように活用するので違和感がないのでしょう。

そして「危ないですから」のように繰り返し聞かされることで、徐々に慣れてっている言葉もすでにあるんだなって思います。

◇◇◇

でも「イ形容詞+ですから、〜」語法には違和感を感じますし、できれば使わないで別の方法で表現して欲しいなと思います。

日本語を話す中国人はよく「忙しいですから、休みたいです」なんて言います。意味はわかります。でも「忙しいので、休みたいです」と言う方が自然だし、受け入れやすいように思います。

◇◇◇

さらに「ですから」を文末に多用するのも違和感を感じます。例えばこんな文章です。

わたしは毎日学校が終わったら、近所の蘭州拉麺のお店で牛肉ラーメンを食べます。とてもおいいしですから。

これは中国語の影響を受けた日本語です。次のように書いた方がわかりやすいし、丁寧だと思うのですが、なかなかこのことが伝わりません。

近所の蘭州拉麺のお店の牛肉ラーメンはとてもおいしいので、学校が終わったら毎日食べに行きます。

日本語教師として働いていても日本語中級者レベル

自然でわかりやすい日本語にもう少しで届くところまで来ているのですが、いくらか足りない部分があるので、不自然さが強調されてしまっているように思います。

以前、華村さんが指摘していた「不気味の谷」現象だと思います。

中国人日本語教師の皆さんは職業としての日本語教師を選んだのですから、不気味の谷を通り過ぎて自然で美しい日本語を使えるようになって欲しいなと思っています。

ただ最近、彼女たちの日本語に影響を受けて、自分の日本語が片言になっているようにも思います。

気をつけなくては・・・そして中国語もがんばろ。

今日も最後まで読んでくれてありがとう。また明日!

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