中国語が話せない日本語教師を選んだ学生のはなし
わたしの職業は日本語教師です。
中国在住の日本人の日本語教師として、日本語教授法を教えたり、日本に留学したい学生の話を聞いて、サポートするような仕事をしています。
さて先日、出会った女子高生が「中国語を話せない日本語教師」をあえて選んだと話してくれました。
その理由は、実践的な訓練を受けられると思ったからです。
中国語が堪能な日本語教師たちのメリット
中国語で日本語を学ぶことができるのは大きなメリットです。
細かいニュアンスや、用法の違いなどを中国語で説明した方が、簡単ですし誤解も減らせます。
実際、わたしの日本語教師仲間たちのほとんどは中国語のコミュニケーションに問題がありません。
また自分も外国語を学び、外国で暮らす外国人であることから、感情移入しやすいという傾向があります。
でもデメリットもあります。
中国語でコミュニケーションをとってしまう。
学習者にとって中国語でなんでも聞けるのはメリットですが、説明を中国語で聞くとなると、日本語の能力自体は向上しません。
ただ日本語に関する知識が増えるだけです。
日本人日本語教師の中国語が向上して、学生の日本語はさほど伸びないという現象が生じます。
これでは本末転倒です。
16歳の高校生はあえて日本語ができない教師を選んだ
それでこの高校生はいくつかの日本語教室を見学して、あえて中国語がほとんど話せない日本語教師がいる学校を選びました。
大抵の学校がそうなのですが、まずは中国人教師が文法を説明します。そして本人教師が問題演習や会話の練習、発音を確認します。
この高校生は、文法について中国人から学べるなら、練習の時は日本語しか使いたくないという理由で、その学校を選んだそうです。
結果、疑問があっても日本語教師は中国語が理解できないので、筆談したり、身振り手振りで言いたいことをなんとか伝えるようになったそうです。
もちろん教師も必死で意図を伝えようとします。
このような状況が1年続いた結果、初級レベルの学習を終えて日本語で生活に関する簡単なことであればコミュニケーションがとれるようになりました。
この学生は「大変だったけど、日本へいったら英語も中国語も通じないし、だったら中国にいる間に慣れておかないと大変」と言って笑っていました。
来年の春に日本へ留学する予定ですが、今は英語を学習しているそうです。大学進学にTOEFLが必要で、日本へ行ってからはじめるとストレスなので、今からはじめて中国で受験しておこうかなと話していました。
とっても計画的で、しっかりしていて感心しました。
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非常に自立していて、さらによく考えて行動する姿に感銘を受けました。
彼女の母親と一緒にお話ししたのですが、お母様も娘の決定を後押ししたいと話しておられ、信頼関係があるように感じました。
経済的に恵まれた家庭ですが、甘やかすのではなく、支援するという姿勢が感じられ、素晴らしいなと思いました。
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加えて「中国語」が上手ではなくても戦えるフィールドがあることにも気がつきました。考えてみると日本語を学びに来ているのですから、日本語教師に期待するのは美しく正しい日本語です。
中国語はできません。でもそれが良い!ということもあるのだと気づかされてちょっとホッとしました。
外国語学習者として日本語を学ぶ学生たちをフォローしつつ、その上で日本語を上達させる、さらにはコミュニケーション能力を向上させるという点で取り組める課題はまだまだあります。
ちなみに彼女が中国語ができない日本語教師が良いと思ったのは、中国語が上手な日本語教師に出会ったからでした。
彼女の質問に、中国語だけですらすらと答えたそうです。彼女はこの日本人すごいなと思ったそうですが、これなら中国人の先生でも良いやって思ったそうです。
人の心って面白いです。
ぜひぜひ、サポートをお願いします。現在日本円での収入がなく、いただいたものは日本語教材や資料の購入にあてます。本当にありがとうございます。