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2022.7.12 雑文(小旅行前)

 今月末に二週続けて贅沢をする。地元のゲストハウスに泊まる。
 避暑避難でもある。

 というのも、お盆に合わせて旅行に行こうかとも考えていたが、いい加減にサボっていた居宅の片づけに手をつけなければいけない。すると外出している暇はない。ではせめて外泊にて旅気分を味わってみよう。

 実際、地元民が地元のゲストハウスやドミトリーに泊まることは稀なんじゃなかろうか。普通のホテルと違ってよい風呂があるわけでも、よい食事が出るわけでもない。あるのはシャワー室と簡素なキッチン。食事は自己調達が基本だ。物の試しによいホテルに泊まってみようとは聞いたことはある。ただゲストハウスに泊まってみたい輩は聞いたことがない。

 珍しい発想ではないので、いないことはないと思うけれど。

 一軒目は駅から250mほどのドミトリー。といってもカプセルタイプなので、プライバシーはそれなりにありそう。その近くでラーメンを食べたとき、なんだか変な間取りのビルがあるなあと見上げていたけれど、まさかドミトリーだとは思わなかった。

 二軒目はお城の足元にあるゲストハウス。町家を改装したゲストハウスで、一階のラウンジからお庭を眺められる。はい、素晴らしい。部屋は個室にベッドが据えられているらしい。客室自体は庭とは反対の、通りに面しているようだからそこは残念だけれど、それはもう予算の都合上仕方のないことだけど、とても楽しみ。見知った街から目を背けて非日常空間にいれば、それだけで旅情を感じられる……はず。

 地元のドミトリーを地元民の目線で紹介していく! なんて面倒くさいことはしないけれど、せっかく城下町に住んでいるのだし、こういった遊びも楽しいかもしれない。

 以前、尾道を訪ねたことがある。そこのドミトリーでドイツ人とちょっと話した。ろくでもない英語で会話をして意気消沈してベッドにもぐりこんだ。その翌々日、私は瀬戸内海の離島にいた。夕方の船着き場の待合室で一息ついていた。するとあのドイツ人が声をかけてきた。全くの偶然だった。テンションが一気に上がった私は二人で写真を撮ったりした。
 よく声をかけてくれたと思う。旅慣れしていたんだろう。よい人だった。

 ただ、そういうドミトリーにまた出会いたいかと問われても、そうは思わない。今は忙しい。毎日人に会う。人と話す。電話が鳴るしメールも来る。対面で繋がり、ツールで繋がり、対人関係が忙しくなり、多少疲れた。今回の外泊ははっきりと一人になるための旅だ。仕事と私生活の両方と手を切って、より寂しい体となって、一日を過ごしたい。

 あのときはもう一週間も一人でふらついていた。富山から長野を抜け豊橋に出た。そこから大垣を過ぎて関西を突き抜け尾道まで流れ着いた。ずっと一人で黙りこくって歩き回った。あのときは一つ考えることがあった。考えて整理する必要があった。だが黙りこくっていると案外、人との会話に飢えてしまうものらしかった。それは自分についての新しい発見だった。

 お盆時期にもう一軒、泊まろうかと思っている。ただ時期的にお値段が高い。安い日取りは早々に埋まってしまう。眺めていると二人くらいで泊まるのが一番安いようだ。どこかにこんな趣味を持つ人はいないだろうか。

 なんにせよ、楽しみだ。楽しみがあることは体にいい。

※一軒目泊ってきました。

 見出しはみんなのフォトギャラリーより、おくちはるさまのくまのイラストをお借りしました。ありがとうございます。