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池上エリアリノベーションプロジェクト|池上を紡ぐvol.02「池上は、人の紹介で仕事が回る」新聞販売店の宮崎さん

東京都大田区、池上(いけがみ)駅。池上本門寺の門前町として発展してきた、どこか懐かしさを感じるまちです。大田区と東急株式会社の公民連携基本協定に基づく「池上エリアリノベーションプロジェクト」は、池上の魅力を掘り起こし、まちをさらに活性化させるために発足されました。
本プロジェクトの企画として立ち上がったのが、「池上を紡ぐ(つむぐ)」。長年池上で商売してきた方の歴史や想いを、丁寧に糸をつむぐように、池上で新しいことを始めたい次の世代に繋げていきたい。そんな気持ちで、この企画は誕生しました。

今回は、「池上を紡ぐ」第二弾! 人から人へ、バトンを渡すように取材が繋がっていくこの企画。前回は、青果店の岩田さんからお話を伺いました。

そして、岩田さんからご紹介いただいた方が……。新聞販売店「朝日新聞サービスセンター」所長の、宮崎倫行(みやざき ともゆき)さん! 朝日新聞サービスセンターは、池上にお店を構えて、すでに100年以上も歴史を刻んできました。

長く親しまれてきたお店を受け継ぎ、現在も守り続けている宮崎さん。お話を伺う中で見えてきたのは、地域に根差した愛情深い取り組みでした。

新聞販売店って、配達以外はなにするの? 新しく池上で商売を始める人にアドバイスはある? などなど、素朴な疑問から商売の秘訣まで、詳しくお聞きしました!

池上は、妻との思い出の地

―― 宮崎さんは、どんな経緯で朝日新聞サービスセンターの所長を務めることになったんですか?

僕は、もともとサラリーマンだったの。脱サラしたくて、34歳のときに新聞店に飛び込んだんだよね。社員として入社後は、しばらく神奈川県藤沢市のお店で修行して……。

働き始めて4年半経った時期に、たまたま、池上店で働いていた先輩が引退することになって。嬉しいことに、それまでの僕の働きを会社が認めてくれていたみたいでさ。「支店長として池上店に来る?」と、池上店の所長に声をかけてもらったんだ。

そこから数年間支店長として働いて、今は独立して所長になったの。池上で働き始めてから、もう18年になるなぁ。

―― 宮崎さんは、池上の生まれではないんですよね。池上店で所長になろうと思ったのは、なにか理由がありますか?

僕は東京の府中出身だから、池上の土地勘はあまりなかったんだけど……。実は、妻との出会いが池上だったの。だから、池上には思い入れがあったんだよね。

ここで妻と待ち合わせしたな~とか、けっこう覚えているものでさ(笑)青春の場所が池上だったから、縁を感じて、池上で働くことを自然と受け入れたのかもしれない。

―― 池上に、そんな甘酸っぱい思い出があったんですね! すてきです。
支店長として池上店に来て、今では所長を務めている宮崎さんですが、「支店長」と「所長」の違いはなんですか?

支店長は、上からの支持を受けて仕事をこなしていく。お店の運営が仕事だね。

所長の仕事は、お店の経営。経営を安定させるにはどうすればいいか? なにを目標にするか? 会社の理念は? そういうのを決めるのは、所長の仕事。

そこに貼ってある経営理念も、僕が考えたものだよ。

新聞販売店は、地域密着の仕事だから。地域の人たちとの関わりが多いからこそ、新聞配達でも、配達以外でも役に立ちたい。

そんな願いを込めて、この経営理念を考えたんだ。

新聞販売店の仕事は、「新聞配達」だけじゃない

―― 新聞販売店の業務内容について、詳しく教えてください!

みんなが知っているものは、まず新聞配達だよね。「朝に届ける」イメージがあると思うけど、正しくは「朝までに届ける」必要があるの。だから、仕事が始まるのは深夜。

うちの場合は2時から配達準備がスタートして、出発は3時だね。そこからだいたい、6時くらいまでに配達を終わらせる。

そこから1回寝て、今度はお昼から夕刊の配達準備がスタート。夕刊は、だいたい17時には配り終えるかな。

―― おぉ、想像以上にハードなお仕事です!

確かに、一般的な生活リズムとは違うかもしれないね(笑)

新聞配達以外にも、うちでは地域の人に合わせた取り組みをやってるよ。例えば、成人用のおむつの配達。おむつってさ、「おむつです!」ってバレバレのパッケージが多いじゃない。自分で買うのは恥ずかしい人もいて……。

消耗品だから小まめに購入しないといけないけど、大きくてかさばるから買い物も大変だし。僕らがお届けできたら、おむつが必要な人も安心でしょう。

―― 自分で買いにくいものを届けてくれるのは、とても心強いですね。

今の時代は、やっぱりお年寄りが多いから。ひとりじゃ対応できない困りごとも多いの。僕にできることがあれば、できる限りやってあげたいじゃない。

誰に相談していいのかわからないと、ひとりで抱え込んじゃうから。インターネットでさくっと調べられたらいいけど、なかなかね、難しい人も多いし。

新聞を毎日届けていると、僕らのことを「新聞屋さん」として信頼してくれるの。新聞を届けたときに、ちょっとした相談を受けることもあるよ。

―― ちなみに、今までどんな相談を受けたんですか?

「駐車場の砂利がデコボコしているから、砂利を敷き直したいんだけど……」と相談されたり。さすがに砂利を敷いてあげることはできないけど、新聞配達をしていると、本当にいろいろな人と知り合うからさ。そのときは、工務店をやっている人を紹介してあげたかな。

あとは、「エアコンをきれいにしたいけど、自分ではできない」「庭の手入れが行き届かずに、そのままになっている」と困っている人がいて……。僕たちでやってあげたいと思って、ダスキンの研修を受けて、正式にダスキンの加盟店になったの。今では、依頼があったら自分たちで対応しているよ。

―― お客さまの困りごとを解消するために、柔軟に対応しているんですね。

僕は、新聞販売店を生活コミュニティの場にしたいと思っているから。なにか困ったことがあったら、気軽に相談してくれたらいいなって。その気持ちが、「地域の人たちに親しまれ、頼りにされる企業を目指す」という企業理念に繋がっているんだよね。

大田区からの依頼を受けて、お年寄りの見守りサービスもやっているよ。活動を初めて、もう10年くらいになるかなぁ。

―― 「お年寄りの見守りサービス」では、具体的にどんなことをするんですか?

わかりやすく言うと、ひとりで暮らすおじいちゃんおばあちゃんたちの安否確認だね。

新聞を届けていると、「あれ、新聞がたまっているな」ってすぐに気づけるじゃない。なにかおかしいな、様子が変だなと思ったときに、連携している窓口に僕らが電話して、様子を確認してもらうの。

あとは、防犯パトロールもやっているよ。新聞を配達するときに、防犯ベストを着るだけなんだけどさ(笑)

でも、防犯ベストを着ている人があちこちをウロウロしていたら、なにか悪いことしようと考えている人はヒヤリとするでしょ。

―― 確かに、「ここでは悪いことはしないでおくか……」となるかも! 防犯意識が高い地域だとアピールできますよね。

そうそう。新聞販売店って、地域に関わることをやろうと思えば、本当にいくらでもできるから。

仕事の範囲を自分の中で「ここまで!」と決めずに、地域貢献に繋がることはできるだけやりたいと思っているんだ。

地元の人との繋がりは、地域活動で作った

―― 「池上で新しいことをしたい!」と思っている方の中には、長年池上で商売している方たちに馴染めるか、不安を抱えている方もいるかと思います。地域に根差したお仕事をしている宮崎さんから、なにかアドバイスをいただきたいです!

僕も、池上で生まれ育ったわけじゃないからさ。すぐに周りの人と交流できたわけじゃなかったよ。地元の人と繋がりができたのは、地域活動に参加したからだと思う。

商店街のお店が集う、「商店会」にも入ったし。小学校のPTA会長もやったよ。

―― 宮崎さん、PTAの会長さんだったんですか!

そうなの(笑)まぁ、最初はもう少し軽い活動でいいんじゃないかな。

役所に行くと、短期間のボランティアとか、1日限りの地域活動のお知らせがチラシで貼り出されているから。わからなければ、「こんな活動をしてみたいんですが、ありますか?」と役所に確認してもいいと思うよ。

地域活動に参加すると、地元の人たちと話す機会があるからさ。そういうところで、少しずつ知り合いを増やしていけばいいんじゃないかな。

―― 池上で商売している方たちで、相談したり、アドバイスすることもあるんですか?

たくさんあるよ! お客さまに相談されたことが、自分で対応できなかったら、池上のお店の人たちにすぐ相談する。「ふすまを張り替えたい」と言われたら、たたみ屋さんに相談したり。池上は、人の紹介で仕事がたくさん回っているまちだと思うな。

あとは、長く残っているお店って、なにかしらの商売戦略が必ずあるから。話しているうちに、「そんな方法があったのか!」と驚く話が出てくることもあるよ。

―― ちなみに、宮崎さんの商売戦略はなんですか?

どうだろう、商売戦略と言うほどのことかはわからないけど……。事業を拡大するときは、僕は「なにをやるか?」では考えないんだよね。そうじゃなくて、すでにお付き合いがあるお客さまが「なにを困っているか?」で考えるの。

さっき、成人用のおむつの配達もしているって言ったでしょ。その取り組みも、新聞を届けているお客さまの困りごとから考えたんだよね。エアコンの掃除も、庭のお手入れもそう。

事業を広げたいときは、「いまのお客さまが、他に困っていることはないか?」で考えると、どの方向に進めばいいのかハッキリするんじゃないかな。

―― なるほど! これから池上で商売したい方にとって、長年お店を守ってきた方たちの商売戦略はとても貴重なお話だと思います。

自分だけではわからないことも、商売の先輩たちに相談すると、パッと答えが見つかったりするからね。池上には、僕以外に頼りになる先輩がたくさんいるから。なにか困ったことがあったら、いろいろ相談したらいいと思うよ。

池上で新しいことをやってもらえると、まちの新陳代謝もよくなるから。やりたいことがあるなら、ぜひチャレンジしてほしいな。

―― 今日は、「新聞配達」だけではない新聞販売店のお仕事を知ることができて、とてもおもしろかったです! では、次にインタビューする方のご紹介をお願いします。

はい、考えておきました。一般社団法人の「おおた助っ人」って知ってるかな? 建築士とか、弁護士とか、司法書士とか……。資格を持っている人を集めて、地域の困りごとを解消する活動をしているところなんだけど。

その「おおた助っ人」の理事長をしている、鈴木さんがいいと思うんだよね。僕たち新聞販売店とはまったく違う視点で、地域貢献をしているそうだから。詳しく聞いてみてほしいな。

有限会社朝日新聞サービスセンター
朝日新聞サービスアンカー大田区ASA池上
東京都大田区池上6-5-2

池上エリアリノベーションプロジェクトは、2022年3月をもって終了いたしました。公式サイトの運用停止にともない、取材記事をこちらに移動しています。

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