福島に行った3頭のぼんの話。その4


※このあと、震災関係の記述が含まれてまいりますので、気分の悪くなる恐れのある方は読むのをお控えください

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2011年3月11日

その日私は近所の職場で、いつもどおり仕事をしていました

(昼間は、法務省関係の国の機関で業務委託の仕事をしていました)

午後3時頃

部署に血相を変えて飛び込んできた職員さんが叫びました


「地震!凄いやつ!大変なことになってる…!」
「え…?」「何?どこで?」

その人は答えずに、慌ててテレビのスイッチを入れました

「なに…これ…?」

テレビに映し出されたのは、アナウンサーが繰り返す地震の状況
次々と起こる余震
津波警報
あちこち無惨に倒壊しており、わが目を疑うものでした


「…これ ほんとに日本?」「どこで起きてるの?」

「震源地は東北みたいだけど…東京もかなり揺れてる 広範囲みたい」

「震度は?」

「5強とか言ってたけど…そんなものじゃないなあ これは」

「酷い…怪我した人もいるんじゃない?」

「そうだね…このあと火事とか津波とか、 二次災害が起きなきゃいいけど…」

「あ!Eさん今頃飛行機に乗る頃じゃなかった?」

出張のため関東に行っていたEさんは、この日帰庁の予定で

羽田から午後の飛行機に乗るはずだったのを思い出しました

「電話してみる!」

「…(呼び出し音)あっEさん 大丈夫?え?電車止まってて空港に着かない?(音のあと切れる)もしもし?」

「…切れちゃったから かけ直してみる!」

…ツーツーツー…

「…繋がらない…」

何度もかけ直しましたが、そのうち呼び出し音も鳴らなくなりました


「一体何が起きてるの…?」

職場で皆が騒然としていたころ


あの恐ろしい津波が・・・

でも、北海道にいる私たちは状況がまったくわからず

連絡がつかなくなったEさんの身を案じてパニックになっており

そのうち、職員さんたちが

「知り合いが 東北に…」「奥さんの実家が新潟で…」

「東京も凄く揺れたって!」

「埼玉は…?埼玉は大丈夫だったの?」

私の弟夫婦と母は埼玉県に住んでいました

職員さんに「電話してみなさい。仕事中だとか関係ないから非常事態だから。」と言われ、慌ててかけた電話は繋がりませんでした

「固定電話も?」

「全滅だわ」

そのあと執務時間を終えて、帰宅するまでのことはあまり覚えておりません

ただただ呆然としていました



家に帰ってからもとりあえずテレビをつけ

牛舎に行き日々の仕事

晩ごはん作り

しかし何をしていても落ち着きません…

合間に電話をしてみましたが、Eさんとも、母とも、弟とも相変わらず連絡が取れません



ふと、災害伝言ダイヤルを思い出して登録をすると

弟が登録したらしく、夜9時過ぎに安否確認ができました

夜中に携帯もなんとか繋がり

家は無事、けがもなかったけれどライフラインが全滅とのこと

東北が震源地で母と弟は関東と離れているのに

電池や食糧を明日送るからと言い、電話を切りました

とにかく家族が無事でほっとしました

でも、頭の中がぐるぐるするし落ち着きません

実際、被害に遭ってない私がこうなんだから

現地ではどんなにか…と、思いながら

ずうっと地震情報が流れるテレビを見ていました

眠れるはずもなくただ 見ていました





………あれ…?ゆきぼん

福島県へ行ったんじゃなかった…?

頭がかーっと熱くなり

だけど、背筋はつーっと寒くなりました