福島に行った3頭のぼんの話。その1
はじめに
このお話は2013年に書いたものに加筆修正して掲載しました
当時私は北海道在住で、黒毛和種の繁殖農家を継いでばかりの長男の嫁、という立場でした
色々あって今は熊本にいますし、当時の夫とは離縁しておりますが、
今でも忘れられない出来事があります
そしてこの時の思いや経験が、北海道から遠く熊本に来た現在でも
牛関係の今の仕事に就く後押しをしてくれました
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東日本大震災から2年経ちました
もう…と言うべきか
まだ…と言うべきか、わからないけれど
北海道に産まれ育ち、大きな地震に遭ったことがなく、世界中で起こっている震災に対しても
それまではどこか他人事でした
でも、あることをきっかけに色々思うことがあったので
それを、書き留めておきたいと思います
遡ること3年前(2010年)北海道に遅い春の兆し
黒毛和種の繁殖をしている我が家の牛舎はベビーラッシュでした
次々と可愛らしい仔牛が産まれ
すくすくと元気に、時にはやんちゃに、元気いっぱい育っていました
その中に、3頭の可愛らしい雄の仔牛がいました
もんぷうという名前のママから産まれた
愛称「もんぼん」
しずなかという名前のママから産まれた
愛称「しずぼん」
こゆきという名前のママから産まれた
愛称「ゆきぼん」
勿論黒毛和種なので子牛登記をしており、ちゃんとした名前もついていますが、我が家では雄の仔牛は「~ぼん」と親しみを込めて呼び、出荷まで可愛がってお世話をします
そう、雄の仔牛は生後10ヶ月前後で市場に出品し、全国のどこかの牧場
に競り落としてもらう
そうしてそのお金が畜産農家の収入になるわけです
生後10ヶ月といえば、人間ももちろんそうでしょうけど
牛も、すごくすごくすごくものすごく可愛い盛りです
体重は300キロ位になりますが仕草はまだ子供
いたずらしたり、ピョンピョン跳ねて走り回ったりと
やんちゃで、人間の子供と変わりません
そんな可愛い盛りの仔たちを出荷するのは本当に忍びない…
我が子を手放すようで最後まで慣れませんでした
お別れの時は涙涙…
「可愛がってもらって大きく良い牛になって、新しい主様に誉めていただくんだよ。」
「元気でね。」
ホントにさみしい…
でも心のどこかで、「行った先でも可愛がってもらえてるのだから。」と、気持ちを切り替えて送り出していました
それは毎回毎回同じ思いでした
そのあともたまに思い出し
「おおきくなったかな…元気にしてるかな。」
懐かしく思いながら
次に出荷する仔はもっと良い牛にできるように頑張ろうと、前向きになれる瞬間でもありました