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たまに短歌 一年経過

ひととせを むいにすごして はるがくる
ふりむくさきを わらいたおして

一年を無為に過ごして春が来る
振り向く先を笑い倒して

雨の降る寒い日だった。昨年の今時分、フィルムカメラを買った。電源の必要のない、それでいてしっかりと動く機械を触ってみたかった。今時そんなカメラを新品で手に入れようとするとライカくらいしか思いつかない。仕事帰りに銀座のライカ直営店に立ち寄ろうと思った。かなりの出費になるが、それ相応に覚悟はした。つもりだった。

大手町にある職場を出て、地下道で地下鉄丸ノ内線の大手町駅へ。銀座で下車して地上に出て、ライカの前まで行く。敷居が高い。敷居が鴨居だ。店内には入らず、新橋へ向かう。駅前の雑居ビルに入る。このビルに足を踏み入れるのは何年ぶりだろうか。外見は変わらないが、2階の入居店舗が様変わりだ。やたらとマッサージ店が並ぶ。新橋には疲れている人が余程多いらしい。そのマッサージ店に紛れるようにカメラ店がある。

店に敷居がない。あったのかもしれないが気づかなかった。店の人に電気いらずのカメラが欲しいと伝えた。いろいろ親切に教えていただいて、最終的に2つの機種から選択することになった。中古の一眼レフかコンパクトか。どちらも同じメーカーで、そのメーカーは現存するものの今はカメラを扱っていない。機械っぽい機械が欲しいと思ったので、そういう実感のある一眼レフの方を選んだ。レンズとボディ合わせて3万数千円だった。露出計用にボタン電池が必要だが、それくらいの電気は可とした。

あれから一年。もっぱら白黒フィルムばかりを使って撮影している。それ以前から白黒のレンズ付きフィルムを時々使っていたが、あまり値段は意識しなかった。数十年ぶりにフィルムカメラをいじるようになり、改めてフィルムが高価になっていることに驚いた。36枚撮りで3,000円超えは珍しいことではない。尤も、これまでのところ、3,000円超えのフィルムは買ったことがないのだが。

そういえば、昨年4月に国内某フィルムメーカーがかなり大胆に値上げをした。ここへきてフィルムが一段と高くなったのは、その影響もあるかもしれない。そのメーカーの商品の外箱にMade in UKとある。ひょっとして、この国にはもうフィルム工場は無いのか。べつにそれがどうというほどのこともないのだが、なんとなく衝撃的だ。

現像のほうの値段は昔とあまり変わりない印象だが、昔と違ってデジタルデータ化する費用がばかにならない。フィルムスキャナーを買って自分でデータ化するという選択肢もあるが、そこまで入れ込むほどのことか、とも思う。

先日、銀座松屋で開催されていた中古カメラ市を覗いた。よせばいいのに、見ると欲しくなる。よせばいいのに、店の人にあれこれ尋ねてみたりする。どうしようかな、と思う。でも、思いとどまった。今使っているやつがあるじゃないか、と思うのである。モノは大事にしないといけない。

昨日、銚子と佐原で撮った写真のデータができてきた。自分で撮った写真を眺めながら思うのである。カメラ云々、スキャナー云々を問題にするような腕か、と。ひとりで大笑い。

銚子で銚子
犬吠埼灯台
銚子駅前の大通り
佐原にて
佐原の街中は何故かこのタイプのポストばかり
さらば佐原

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