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円形脱毛症体験記〈その壱〉

【円形脱毛症、それは突然現れる】

   むかしむかし約20年前、円形脱毛症になったことがある。そのお話を書いてみる。

   世にも怖いもののひとつは、突然の大量脱毛。突然と言っても一気にゴソッと抜けるのではなくて、だいたい1週間くらいで相当量が抜ける。私の場合は排水溝の網に引っ掛かっているかなりの量の髪の毛を見て、のんきにも「あれ?ちょっと最近抜け毛が多いな」程度にしか思ってなかった。
   ところが、ところがだ。セミロングの髪の毛をハーフトップに束ねようとしたとき、「あれ?なんかツルっとしてる…?え?ええっ?」と、慌てて合せ鏡で後頭部の髪を上げて見てみた。
   「な、ないっ!!ないよぉっ!髪がっ?!」
   相当進行していたらしく、円形が数ヶ所重なって耳の後ろから後頭部までぐるっと…毛のない状態。ホントにその部分だけツルッツル。
    あまりに突然の発見?でうろたえてしまい、つい彼氏(現在のパートナー)さんに電話してしまい、家に来てもらって相談。彼もさすがに絶句していた。なぐさめてくれたけど。彼としては病院に行こうねとしか言えなかった。
  さて、ここは すぐに皮膚科に、というのが王道なのだが、私はどうもひねくれ者なので、円形脱毛症についてまず自分で調べた。どうやら原因はストレスとか甲状腺疾患や自己免疫の暴走にあるのでは、という知識を得て、まずはかかりつけの漢方医に相談。そこでは血液検査もできたので、甲状腺ホルモンの状態を調べてもらったところ、特に異状なしという結果に。漢方薬をもらってクリニックを後にしたものの、本当に効くのかわからず。
   聞くところによると、円形脱毛症は放っておいても半年後には髪が生えるという。とはいえ、漢方薬も効き目はおだやかだしそれなりに時間がかかる。半年はやはり長い。不安が拭いきれない。これがまたストレスになってさらに悪化したらやだなぁと、暗ーい日々を数日過ごしていた。
   そんな中、職場の女性の先輩に思いきって、「実は…」と脱毛部分を見せたところ、絶句するかと思いきや、
  「いやさー、実はなんか、あれっ?と、思ってたんだよね」と言う。
   なんと!気づかれてた?自分より早く気づかれてたかも?
   あと、友人の一人にも見せて反応を見たら、彼女はただ唸ってた。どう言ってよいかわからなかったのだろう。
   こうやってカミングアウトすることは、無意識だったにせよストレス解消効果はあったのかなと、今では思う。
   そして、もう1人、見てもらった人がいる。その人は気功体操の中国人講師(女性)。私はその頃、とあるカルチャーセンターで気功体操なるものを週一で習っていた。その講師、実は鍼師でもあった。開口一番、
  「おお…、これヒドイネ。でもダイジョブ。"バイカシン"とショウガで治るネ。」
  「バイカシン?ショウガ?」
  「そうネ、梅の花の鍼で"梅花鍼"ヨ。アタマ穴あける。生姜の汁入れる。髪生えるヨ。やってみる?」
  「あ、あたまに穴?」
  「そうネ。アタマにいっぱい鍼刺すネ。」
   一瞬だじろいだが、センセイの自信たっぷりな様子を見て、つい、
  「…やります!お願いします!」
  「じゃ、1回3000円ネ。安い方ネ!」
  さすが、中国人。商売上手なり。
   正直、毎週3000円は派遣労働者の一人暮らしにはちょっと痛かったし、本当に効くのか?という疑心もあるにはあったが、ともかく、背に腹は代えられぬ。イチかバチか、このセンセイにおまかせすることにした。

その弐へつづく


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