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常夏の朝の大地を駆け抜けて  ~早朝のタイ南イサーン鉄道~ (9951文字)

「君は聞けばこの国への赴任を強く希望したというじゃないか?それにしてはちょっともったいないねえ」ちょうど半年前に本社から視察にやってきた取締役本部長村田に突っ込まれてしまった時のことを、来月26歳になろうとしていた黒田正和は眠い目をこすりながら、まだ暗い早朝のタクシーの中で思い出していた。ここは、日本から離れた常夏の東南アジアの国タイ。首都バンコクを中心としたこの国のなかで、東北に広がる「イサーン地方」の南側にあり、ラオスやカンボジアとの国境に近い小さな都会「ウボンラーチャターニー」に来ていた。黒田は大学を卒業後、業界準大手の金正物産に就職して早3年。学生時代の軽いノリで就職し、希望した部署の選択を良かったのか悪かったのかここに来て悩んでいた。

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