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【読書感想文Vol.53】最後まで、”悪意”に気づけなかった 『ダブル』 永井するみ

「純粋な悪意、これが一番怖い」 という帯につられて購入しました。

作者である永井するみ氏は本作品を出版した直後に亡くなられたそうで、こんな傑作を世に送り出してくださったのに——と別の想念がわき上がりました。

まぁ中身は、お涙頂戴と真逆なのですが……

被害者の女性の特異な容貌から注目を浴びたひき逃げ事件
痴漢の容疑をかけられた男の転落死
老人が飲んだ薬物入り缶コーヒー騒動

それら未解決の事件には、ある人物の姿が見え隠れしていた。謎を追う女性ライターが辿り着いた真相とは!?

あらすじより

ライターと一人の妊婦、二つの視点を交差しながら起こった、一見事故とも思える事件を捜査していく——と。

二視点と理解した途端、ミステリ読みとしては気を張らなきゃいけない点が多くあります。

違う人物だと思っていた人物が同一人物、視点間で時間が違う等々……

色々警戒していたのですが、最後までこの悪意に気付くことが出来ず。

下手な叙述トリックはありません。ただ純粋に、自分が正義だと確信している、本当の悪意に足元からすくい上げられました。

これちょっとミステリ小説読んでる人に敵を討ってほしいです。今もなんで黒幕が分かるギリギリまで一切ノーマークだったのか謎ですもん。ほんとに。

理由を邪推させてもらえるのなら、もうシンプルに推理とか置いといて続きが気になりすぎたことに尽きますね。

両視点とも登場人物の解像度が高い、高すぎる。

良いことをした奴には良い感情を、悪いことした奴には悪い感情を。+×+、−×−で両方とも感情移入をし、小説を初めて読んだときのような没入状態で読み進められる。

最後はこいつなら確かにと言う納得感と同時に、え、なんで疑えなかったんだろう? と変に首をかしげるという、経験したことのない読書経験をすことも叶いました。

やっぱり本当人による悪意が、一番怖い。

おすすめ度
★★★★☆

★★★★★=MAX
☆☆=★


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