娘が1日ママになった日のこと
「ママ、疲れてる?」
娘がなぜかウキウキした様子で聞いた。
「えっ! そう見える?」
見抜かれたことと、娘の笑顔の表情が気になって、どこかいぶかしげに答えてしまった。
「うん。だからね、これ。」
そう言って娘から渡された大きな余白いっぱいのノートには、こう書かれていた。
その日にやることをかいてね。となりのページをつかってもいいよ。
「明日は私がママやろうと思って。だからママがいつもしていることを書いておいてね。明日のお休みは朝から私がママだからね。」
娘はママになることを楽しみにしているようだった。
いつもお手伝いしてね、と言っても「え~。」と言っていた娘が。
言われた瞬間、いろんな感情が入り混じった。
単純に、そんなことを考えてくれてくれるなんて。なんて優しい子に育ったんだ、という嬉しさ。
でもこんなこと言うなんて、急に大きくなったんだな・・という寂しさ。
そして、私、そんなに心配されるほど疲れて見えたのかな、心配かけちゃったかなという心配。
でも思い直して、娘にいろんな家事を教えるいい機会だなあと。
そんな機会を娘が作ってくれたことに感謝した。
ひとまずノートいっぱいに自分がやっている家事を書いて娘に渡すことにした。
『ママの日』当日
朝から娘はやる気いっぱい。
いっぱいになったノートを見て、
「ママ、いろいろいっぱいあるね。でもまかせて!今日は私がママだからね!」と威勢よく言い放った。
すごい、この子は本気でママをやる気なんだ、と娘の覚悟を感じた。
その後、娘は朝ごはんの簡単な準備や片付けなど、私もあれこれ助言しながらも、ちゃかちゃかと楽しそうにこなしていった。
終えた家事は私が書いた家事リストに印をつけてチェックしていく。
やり方を教えながら、洗濯もの干しや掃除機はもちろん、洗面台の掃除やトイレ掃除までやってのけた。
もうあっぱれとしか言いようがない。いつも家にいる時はソファーで好きな本を読んだり、好きな遊びをしている娘。でも今日は本気でママをやってくれた。
ママをやりたい理由
娘に聞いてみた。
「どうして一日ママになろうって思ったの?やってみたら大変じゃなかった?」
嬉しそうな顔をして娘は答えた。
「だって、ママやってみたかったんだもん。大変だったけど、楽しかった~!」
なんだかもっとちゃんと理由が聞きたくて、さらに聞いてみた。
「ママが疲れて見えたからやってくれたの?」
と娘はちょっと真顔になって言った。
「うーん、最初はそうだったけど、でもママやってみたかったから。」
私はその時、娘が私に楽をさせるためだけにお手伝いをしてくれている、という思い込みを自分が持っていることに気が付いた。
最初はそうだったかもしれないが、娘は単純にママをやってみたかった、という思いで楽しんで一日やってくれていたのだ。
娘が私を喜ばせようという理由だけでママになったわけではなく、本気で自分で楽しんでママをやっていたことわかり、もっと嬉しくなった。
「またママの日やってね。」と言うと、
娘は「次はパパの日、その次は弟の日だから、ちょっと待っててね。」とニカッと笑顔で答えた。
その笑顔でたまった疲れも全部吹き飛んだ気がした。
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