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1)フロアディレクター=FDが一番に考えるべき事とは?

いきなり精神論的な事から入らせてもらいます。

もっと具体的でテクニカルな話を期待していた方には本当に申し訳ないんですが

フロアディレクター=FDが一番に考えるべき事とは何か?

FDをするなら兎にも角にもコレが分かっていないと話にならないと思っているので、一番最初に書かせてもらいます。

私が思うFDが一番に考えるべき事、それは
「全ては出演者の為に」

最近の言い方で言えば
「出演者ファースト」

これだけです。

勿論、FDとしてやらなければいけない事、注意すべき点は様々に、山のようにあります。
でも「一番に」となると、コレしか浮かばないんです。

「そんなん当たり前の事やん!」とコレを読んだほとんどの人(いや全てかも)が思うかもしれません。
しかし、日々現場に出ている身としては、その「当たり前の事」が出来ていないFDが非常に多いと感じているのです。

もちろん全てのFDは「出演者の為に」と考えて準備をし、行動しているはずです。

ただ、ほんの少し自分に甘えたり、「これくらいはええやろ」と妥協したり、「これは大丈夫やろ」と自分に都合いいように勝手な解釈をしたり、出演者の為より自分の都合を優先してしまったり、という事が、つまり「出演者ファースト」ではなく「自分ファースト」になる瞬間があるのです。

例えばー
スタジオでのトーク時間があと何分残っているのか(よく「残り尺」と言います。「尺」=「時間」という意味で使います)という事を出演者(主にトークを仕切っているMC)に伝えるカンペを出す、という作業があります。

これは、ほぼどんな番組でも行なっている作業でしょう。
それくらい普通に行われている作業ですが(特に生放送では)番組を決められた放送時間の中にキッチリ納め、伝えるべき事をキチンと伝え切る為には非常に大切になってきます。

この時に行われている事は、副調整室(普通はサブと言う)にいるディレクター=Dと時間を管理するポジションであるタイムキーパー=TKが、このコーナーであとどの位トークが出来るかを計算し、それをスタジオにいるFDにインカムと呼ばれる無線(稀に有線の場合もありますが)のヘッドセット(マイクとヘッドホンまたはイヤホンがセットになった物)で伝えます。

その時間をFDはカンペを使ってMCに伝え、MCはそこから逆算しながら番組として伝えるべき事、伝えなければならない事、そして自分の伝えたい事などを放送時間の中に過不足なくキチンと入れていく訳です。

この時にFDがやっている事は、TKの声を聞いて「残り時間☆分」というカンペを出す、ただそれだけです。

TKのカウントをキチンと聞いて、その時間を間違えずにきっちりカンペを出す事なんて、言葉は悪いですが正直、中学生のアルバイトでも出来ますよね?

それなのに中学生のアルバイトでは無くFDがそのポジションにいるのには理由があるんです。

単純に時間がきたら、その時間のカンペをただ出せばいいって訳ではないからなんです。

この時にFDがするべきは、自分が出したカンペをMCが見たかどうかしっかり確認する事なんです。

FDがカンペを出す時、すなわち本番の間というのはMCは他の出演者とトークを繰り広げています。

トークをしている時というのはMCはどこを見ているでしょう?

当然、トークの相手の顔、表情を見ているのが普通ですよね。

という事はです。
FDの出す残り時間のカンペを見る為にMCはトークの相手から目線を外さないといけないんです。

もしもカンペを出すタイミングでトークが白熱していたとしたら、MCは相手の顔から目線を外せるでしょうか?

それは無理な事だし、そんな事をすれば相手が冷めてしまって、それから先のトークが弾まなくなってしまう可能性だってあります。

つまりMCは、TKが「残り☆分」と言ったタイミングに合わせてFDが出したカンペを見られない事があるんです。
そんなに都合良く、残り尺のキリのいいタイミングでトークの合間が来る事の方が稀だと言ってもいいでしょう。

だからFDは、自分が出したカンペをMCが見たかどうかしっかり確認しなければならないんです。

その為には、多少タイミングがズレたとしてもMCがカンペを見られるようになるまでカンペを出し続けないといけないんです。

ただタイミングが来たから出して、見てもらえてないのにさっさと下ろしてしまうカンペなんか出してないのと同じです。
その行為に意味はありません。

自分がカンペを出したタイミングに合わせてMCにカンペを見ろ!なんていうのは、それこそFDの都合を押し付けているだけで「MCの為に」なんて意識は微塵もない行動になっています。

こう書くと当たり前の事を何言うてんねん、と思うでしょうが、これが出来ていない(やろうとしていない)FDが本当に多いんです。

最近、ある番組のMCが私とは別のFDに対して
「カンペを確認出来へん時があるから、自分が見たかどうか確認してから下ろしてもらえるかな」
という事を話しているのを聞きました。
だから本当によくある話なんです。

まぁ、こういう話をMCとFDの間でキチンと出来る現場というのは風通しよく、雰囲気もいいので番組の質は自然と上がっていきますけどね。

でも別の現場ではMCから
「あの番組ではこっちがカンペ見れてないのに下げてしまうから困るんだよね〜。」
なんて話も聞いた事あるので、出演者が思っていても直接言われない事の方が多いんじゃないでしょうか。

なぜMCに残り時間のカンペを出すのか?

その「目的」は、先ほど書いたように「番組として伝えるべき事、伝えなければならない事、そして出演者が自分の伝えたい事を放送時間の中に過不足なくキチンと入れていく」為です。

この「目的」を達成する為の「手段」として、残り時間のカンペをMCに見せるのです。

しかし、ただTKのカウント通りにカンペを出す、という事を機械的にやってしまっている現場が多くあります。

恐らくは
「TKさんのカウントに合わせて残り時間のカンペ出すんやで」
みたいに教えられているんでしょうね(よう知らんけどw)。

こうなると「TKのカウントに合わせてカンペを出す事」が「目的」になってしまい、MCがそのカンペを見たかどうかの確認は二の次になってしまいます。

つまり「手段」が「目的」になってしまっていて、本来の「目的」である「MCに残り時間を知らせる」事が出来ているかどうかを確認せずに「残り時間のカンペを出す」行為をやりさえすればいいんだ、と勘違いしているFDが多いんでしょう(これもよう知らんけどw)。

「そんなん教えられてないから出来なくても仕方のないやん」と言われるかもしれませんが
「全ては出演者の為に」
というFDが一番に考えるべき事を理解していたら、こんな事にはならないハズやと思うんですけどね。

それに一から十まで教えてもらう立場の学生やなく、ギャラをもらって仕事しているプロならば、自分のやっている事の意味というか目的をしっかり考えるのは当然だと思うのですが、これってイマドキの感覚とはかけ離れてるんでしょうか。

ただ、これだけは言うときます。

こんな簡単で「当たり前の事」をただ「当たり前の事」としてやっているだけの私の様な人間が、50歳を超えてもFDとして仕事を続けられています(詳しい仕事内容を知りたい方は下記を参照して下さい)。
https://www.facebook.com/officekumahige

という事はー
この簡単で「当たり前の事」をただ「当たり前の事」としてやり続けるだけで、FDとして生き残る可能性は上がるんじゃないでしょうか。

こんな簡単な事をやるだけでFDとしてある程度評価されるのだとすれば、やらない手はないでしょう。

今回挙げたのは、ほんの一例に過ぎません。

「全ては出演者の為に」
「出演者ファースト」

これを心掛けるだけで防げる事は他にも色々あるんですが、それはまたの機会に。


追伸
FDについて知りたい事、聞いてみたい事などあれば、どんどん質問して下さい。
マニアックな事から覗き見的な事まで、FDに関する事であれば出来る限り、お答えしていきます。

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