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その② 祝!イナイセ4巻 紙でも発売決定!〜大逆転の舞台裏ドキュメント〜

《前回までのあらすじ》

電子版のみで発売予定のイナイセ最終4巻を紙でも出版すべく、行動を起こすと決めたクマガエ。

自分一人の力だけで出版社の意向を覆すことは到底不可能であり、読者のみなさんの力を借りるしかない。合言葉は「神輿に担がれる覚悟」!!

だが担当さんとの話し合いのなかで「電子版のみ」は想像以上にゴリゴリの既定路線であることが判明。それでも諦めきれないクマガエは、“イナイセらしいやり方”で大逆転へ向けた作戦を練り始めるが…!?

「神輿に担がれ方」が分からない

腹は決まった。あとは行動するのみ。

…なのですが。具体的に何をすればいいのか? どうやって読者の皆さんから応援を募ればいいのか!?「覚悟」を決めたのはいいけど、「神輿の担がれ方」が僕にはまったく分からないのであった…。

これについては、過去に苦い経験がありました。

実は、イナイセ第1巻発売前にも、Facebookで応援グループを立ち上げたことがあったんです。読者のみなさんとの交流コミュニティを作って、一緒に盛り上げてもらおうとしたんですね。でも、まだ1巻発売前でイナイセを知っている人自体が少なかったり(よほどの作品でない限りコミックスが出て初めて認知が広がる)、僕自身オンラインコミュニティの運営はおろか参加すらしたことがないのでよく分かってない。さらに、当時はイナイセを絶賛連載中で運営に割く時間も気持ちの余裕もないという状況。結局、あまり上手くいかない上にどんどん重荷になっていき、最終的にはひっそりクローズということになったのでした。

つまり、僕はすでに神輿に担がれようとしてうまく乗れなかった過去があったのです。

闇落ち

もうあの時と同じ失敗を繰り返したくない。というか、失敗したら4巻が紙で出なくなる。1巻の時とは違い、紙での出版を待ってくれている人がいる。今度こそ成功させないと…!

そんな肩に力が入りまくった状態のまま、具体的な作戦を考え始めます。でも、完璧な成功を追い求めるあまり、思考ばかりがぐるぐる回り続ける“脳内地獄車状態”に突入してしまいました。ちょっと聞き齧った知識でコミュニティマーケティングがどうとか、マスに訴えかけるには、導線は…?とか、いっちょ前に言い出したり(笑)。その結果、思いつく案すべてに「こんなんじゃだめだ!」とダメ出しをしまくる始末。

そしてついに。

「何も思いつかない…!」

この頃、すでに2月も終わりに近づいていました。大逆転の期限である3月末は確実に迫ってきています。

気づけば僕は闇落ちしていました。アナキン・スカイウォーカーのように…!

私は菌になりたい

アナキン・クマガエは思いました。

「もう何も考えたくない」

「微生物になりたい」

「黙々と何かを分解して胞子を作って静かに一生を終えたい…」

突然ですが。

ニホンコウジカビという、日本の発酵調味料づくりに欠かせない発酵菌がいます。彼らはデンプンを分解して糖を作り出し、それが乳酸菌や酵母など別の微生物を呼び寄せるエサとなります。その結果、発酵がどんどん進み、最後には美味しいお味噌や醤油、酒になる…という訳です。コウジカビを『鬼滅の刃』にたとえるなら、鬼殺隊を組織し隊士たちが存分に戦える環境を作った、産屋敷家のようなポジションなのです。

ニホンコウジカビはイナイセ3巻にも登場しています

「ニホンコウジカビはいいな…ただ生きているだけで色んな微生物が寄ってくるんだもんな…」

現実逃避からそんなことを夢想していた時、ハタと気づきました。

「僕もコウジカビになればいいんだ」

大逆転へ向けた完璧な作戦を目指したとしても、それが成功するかどうかなんて、結局のところはいくら考えても分からない。マーケティングのプロじゃないんだから(プロでもきっと難しい)。

コウジカビが「糖を作ったら色んな微生物が寄ってくるぜ、ひっひっひ…」などと考えてますかね? 絶対考えてないですよね。子孫をつなぐためにただ生きて、自分にできることを淡々とやっているだけ。そしたら知らないうちに色んな微生物が集まってきて、発酵が盛り上がっていく。

僕もそれを目指せばいいんじゃないだろうか?

マーケティングがどうだこうだと背伸びするのではなく、身の丈に合ったことをやればいい。そう思えたら、闇の向こうに光が見えたような気がしました。

『こち亀』の両さんになる

そして。

差し込んだ光の先に待っていたのは、なんと『こち亀』の両さんでした。

発酵をヒントに、改めて神輿に担がれることを考えた時に浮かんできたのが、神輿の上ではしゃいでいる両さんの姿だったのです(扉絵とかカバー絵でありますよね)。神輿の上の両さんは、めちゃくちゃ楽しそう!「こんなに楽しそうにしてたら、そりゃ神輿も担ぎたくなるよなー!」と。しかも両さんは一切無理してません。担がれたいから担がれているのです…! かっこいいぜ、両さん。

ニホンコウジカビの「できることを淡々とやる」と、両さんの「楽しそうな人は担ぎたくなる」。この2本柱が目の前にドカン!と出現した時、これならやれる…!という気持ちになったのです。

背伸びをせず、トリッキーなことをするでもなく(これは前回の「イナイセらしく」ともリンクする)。自分がやりたいと思えることをやって、まずは自分が楽しむ。それができたらきっと、読者のみなさんも楽しくお神輿ワッショイしてくれるはずだ!

ついに、4巻を紙で出す大逆転作戦のテーマが決まりました。

「“一粒万倍収穫祭”だ…!!」

《その③につづく》

その③👇



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