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追悼:ヤムおばさんとアディバ先生

アディバ・ヌールさんが6月亡くなった。

映画監督であり、ストリーテラーである故ヤスミン・アフマド監督の長編六作品のうち、三作品で手伝いのヤムおばさん、長編遺作となった「タレンタイム」でアディバ校長を演じた歌手兼女優だ。

ヤスミン監督って??


725日はヤスミン監督の命日だ。
Yasmin Afmad
マレーシアの映画監督。
マレーシア映画の母と呼ぶひとも。「タレンタイム」は一般公開前も、映画祭や特別上映で何度も満席となった。

文化背景:
多民族・多宗教・多言語のミックスカルチャーの国マレーシアでは民族ごとに好む映画が異なる。
ウチの相方Kは華人系の映画を好むため、香港アクション映画一辺倒!マレーシア映画(自国映画)なんて見たことがない、という輩。インド系国民はもちろん、ボリウッド映画かタミール映画。しかもイスラム教徒が多いため、宗教的に検閲が厳しく、外国映画でもお色気部分はカットされる等条件厳しい。

ところが、TVコマーシャル出身のヤスミン監督は(それ以前は別々に映画で主演すべき)マレー系と中華系を主人公に配し、各人セリフ言語も文化も異なる現実のマレーシアとその交わりを描いたのだ。

「細い目」はマレー系少女と中華系青年の恋を描く。

異教徒同士の恋なんて、けしからん! 
当初、当局は厳しい評価だったはず。だが、海外で映画賞を獲り、頭の固いお偉方もヒロインオーキッドの可愛さを認めたに違いない。(一部妄想)

↑ 2014年マレーシア映画ウィーク(東京)の招聘で
 来日したオーキッドとジェイソンを記す 

ヤムおばさんの存在


アディバ・ヌールさんは「細い目」(2004)「グブラ」(2005)「ムクシン」(2006)三作品で、主人公オーキッド家のメイドのヤムおばさんを演じている。

2年ぶり開催:混成アジア映画研究会
イベントでは三作品上映.
故ジット・ムラドの映画紹介も

「細い目」は17歳の高校生オーキッド、
「グブラ」は24歳の既婚オーキッド、
「ムクシン」は10歳のオーキッドが登場。
7年ごとの三連作の前二作はシャリファ・アマニ嬢が扮し、小学生のオーキッドは実際のシャリファ末妹が扮している。しかし、14年の歳月をヤムおばさんことアディバ・ヌールさんは同じ役で出演し、物語をつないでいる。「オーキッド三部作」は「ヤム三部作」でもあった。
両親ともに自由人な家庭で育つオーキッドを、時には優しく叱り、悩める時は影ながら支え、ご近所とも上手く付き合える、ヤムおばさんは見た目通り、とてつもなく大きい存在だった。

話はそれるが...
相方の家族もメイドさんを雇っていた時期があった。メイドさんは主人や子供からも名前で呼ばれ、映画のように家族みんなから「ヤムおばさん:Yam Kak」と呼ばせられるなんてあり得ない。
そんなふうに、現実のマレーシアにはあり得ないが、そうあって欲しい願望あるいは未来へ託す夢が、映画には描かれている。雇用者と使用人相互のリスペクトや汚れを許す寛容さ、ヤスミン映画のその懐の深さに感じいってしまう。

アディバ・ヌールさん追悼上映

さて、アディバ・ヌールさんが亡くなりひと月の間に、ヤスミン映画の再上映が決まった。

残念ながら、配給が付きアディバ・ヌールさんが来日時は仕事の繁忙期で上京できなかった私。上映前に「ムクシン」の主題歌FUJANをアディバさんの美声アカペラで歌ったと聞き、ますます悔やまれる。
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下線リンクで聞けます:::

その曲は、2007年初めてマレーシア映画を観た時、なぜだか涙があふれた曲。映画自身は悲しくも寂しくもない叙情あふれる作品だったのに。
日本でマレーシア映画を観れる喜び、隣席の相方との縁を感じ、ヤスミン映画を一生応援しよう、と決めた瞬間だった。

そして、私がたった一枚だけ持っているアディバさんのCDFUJAN収録のCDを入手できたのも、ブックレットにはヤスミン監督のイラストが描かれていたのも奇跡だった。

Adibah Noor CD

ムヴィオラさん、ミニシアターのみなさん、追悼上映有難う!

Thank you for everyone who helped making  those films.

ヤスミン監督の声が天から聞こえてきそうだ。

長文読んでくださりありがとう。
マレーシア映画を変えた「細い目」
my all time best「タレンタイム」

興味を持った方はお近くのミニシアターへ、
ぜひ足を運んでください。

#アディバ先生ありがとう

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