コナン君の「バーロー」と迷宮入りのおばあちゃま
元旦を迎えると、私の家族と私の両親は、地元の神社の初詣に一緒に行く事がここ数年恒例行事となっていた。
今年はコロナの事を考え、初詣は元旦に行く事は控えることにして、新年のあいさつ(というのはタテマエで狙いはお年玉)に伺う事とした。
実家に向かう車中で子ども達がしりとりをしていた。
大体2番目の子どもは狙っているのか天然なんだかわからないが、いつも素っ頓狂な答えを言うため、他の3人は心得て対応しているのだが、今日も切れ味がするどく思わず笑ってしまった。
「バ」という字で出て来たのが「バーロー」だった。
私は「なぜコナン君?」
とつっこんだのだが、2人とも全く聞いていなかった。
バーローとは、馬鹿野郎の短縮形である。「馬鹿野郎」→「ばかやろう」→「ばあろう」→「バーロー」
『名探偵コナン』の主人公江戸川コナンがよく発する言葉である。
私はだいぶ「名探偵コナン」のテレビやマンガから遠ざかっているので、コナン君がいまだに「バーロー」と言っているかもわからないし、黒の組織がどうなってしまったのかもわからないし、巷で人気のあのガンダムみたいな名前の人もよく知らない。まだ、連載って終わってないですよね?(終わってたらごめんなさい)
そんなこんなで、実家に辿り着いた。
私たちは実家が同市内にあり、しょっちゅう実家に訪れているので「年末帰省の子ども」という雰囲気は全くなく、つもる話もそんなにない訳で。
結局、実家ではたわいもない話が中心となった。
みかんでも食べながら、話の流れで母親と話す。
母親は昨年初めて、地元の民生委員をつとめることになった。
民生委員(みんせいいいん、Welfare commissioner)とは、常に住民の立場に立って相談に応じ、及び必要な援助を行い、もつて社会福祉の増進に努める社会奉仕者であり(民生委員法第1条)、日本の市町村の区域に配置されている。(Wikipediaより)
なぜ民生委員を頼まれたかというと、母親は非常に世話焼きである。すごく情熱的で、困っている人を見過ごせない性格なので、近所のばあちゃんじいちゃん達の面倒を普段から見ていたら(買い物や病院受診に同行したりする)自然と頼まれてしまったらしい。
そんな母は、私が高齢者と接する機会が多いことを知っているため、会う機会があれば、近所の困っている人たちの相談をなんとなく私にすることが多い。
「ねえ、あそこの肉屋の近くのおばあちゃんなんだけどさ、ほら〇〇さん」
「いつも行くと話がすっごく長いのよ。1時間は平気でしゃべってるの。」
「それでね。いつも物がない!って言うのよ。」
「杖なんか何十本も持ってたのに、なくなっちゃったっていうの。」
「使ってたものが靴やら服やらお米やら消えちゃうって言うの。」
「この前、市で配られた敬老の日の高齢者プレゼント用のサービスカタログも、覚えてる?あれってお年寄りには登録しにくいでしょ?」
「だから近所のばあちゃん達のやつをみんな私が代わりに登録してあげたんだけど」
「それもないって言うの。」
「で、それは裏のグループホームの施設の人が盗んでるって言うのよ。」
「だから警察に言おうと思ったんだけど」
「ふと考えて・・そんなもの盗っていく人もないだろうし」
「肉屋の△△さんが『〇〇さんは昔からああいう性格だよ』って言われて、そうなんだって思ってるところ。認知症なのかな?とは思ったんだけど」
いろいろとつっこみたいところがあるが、とりあえず
「母が警察に行ってなくて良かった」
と私は思った。
でも、話を聞きながら、真面目な母のことだからそういう風に捉えるかな・・とは何となく予測していた。
私からは「もともとそういう性格だった」というのは事実としてあるのかもしれないが、おそらく認知機能が低下してきているのではないかということ
時間があるため、いろいろなことを考えてしまうのではないかということ
そして、もともとそういうことを言う人は「もっと私を気にかけてほしい」というサインを出しているかもしれないこと
だから大変だけど、話を聞いてあげてほしいこと
もしかして、万が一、おそらくは0%に近いだろうけど、盗まれている可能性がないとは言い切れないので、一緒に物を整頓してあげたらどうかと提案した。
「典型的な物盗られ妄想だよ」
と自分は瞬時に思ってしまうのだが、
それにしても
その何十本の杖はどこに行ってしまったのか
そのお米やら服やら靴はどこに消えたのか。
名探偵コナンばりに、母親と一緒に行って「ああ〜こんなとこに!」「犯人はあの人です!」といろいろ探してみたい気持ちもあるが・・・
実際探して見つけても
「誰かがまたこんなところに置いたんだ。でも、私が探した時は確かになかったんだ!」
と、自分が置いて忘れてしまった物や探し出せない物を人のせいにする方も施設ではよくあることなので、
「まあ、大変だけどがんばって」
という月並みなことばでしか、母親を励ますことができなかった私であった。
※そのうち物を管理してくれるロボットとか出て来るんでしょうか。
※近しい人がよく犯人にされます。
※物を探すだけなら運動になっていいかなと思ってしまう
※ケアしている人への認知症対応講座ってやっぱり必要なんでしょうかね。
※小学校からの教育に「認知症」と「がん」と「死」を取り入れた方がいいですよね。(取り組んでいる方は増えてます。賛否はあるが、やっている方は尊敬しています)
サポートは読んでくれただけで充分です。あなたの資源はぜひ他のことにお使い下さい。それでもいただけるのであれば、私も他の方に渡していきたいです。