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ひとりひとりのものがたり

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仕事での出会い、出会ってしまった人たちの物語の断片を書き綴ったもの。高齢者のナラティブ。
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#自己紹介

あなたと行けなかった夜のドライブ

突然だが、私は夜のドライブが好きだ。 なるべく私は助手席に座っていたい。 疲れや眠気でぼんやりとしながら見る景色。 街のネオンが視界のはしから、にじみながらせまってくる。 道路照明灯や対向車線の車の光が横を走っていく。 昼とは違った静寂さ。 静かな車内。細かな車の振動。 都会の高速道路を走りたい。 ゆったりとまどろみながら、昼では話せないような親密な話をしたい。 心理的な距離を近づけていきたい。 あまり人には話したことがない趣味嗜好だ。 ここで話はさかの

【自己紹介】あたたかさに触れること

いつものデイケアで、行われるやりとり。 私は介護老人保健施設に勤めているしがない作業療法士だ。 長く勤めていると、当たり前だが担当している方が少しずつ老いていく。 と同時に私も老いていることに気づく。 「お互い年取りましたね」なんて、言ったりする。 そして、認知症が少しずつすすみ、私のことも少しずつ認識できなくなってくる。これは私自身がさみしさを感じることではあるが、変わらず同じ温度で接しながら、その人のもうあまり出てこない昔の諸々を含みつつ、一緒につつみこめたらい