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もごもご。 もごもご。 ・・・・・。 私は、今日もデイケアに来てくれた里子さん(仮名)の口元をじーっと見つめている。 口元の動きは止まってしまった。 目は開かれている。 でも、次第に瞼が落ちてくる。 「里子さん、里子さん、起きて下さい。」 「飲みましょうか。おいしいですよ。」 里子さんに私の声が届き、目が再び開かれた。 もごもご もごもご ・・・・・ 里子さんはパーキンソン病という病気になってもう7年くらいになる。 里子さんは食べたものや飲んだもの、自分の
私は20cm程度の茶色の紙袋を持って、作業テーブルに向かった。 丸椅子に腰かけて、隣の車椅子に座っている相手と目くばせをする。 その相手の女性は、短い白髪で目が大きく、小柄な人だった。私の行動をやさしい小動物のようなまなざしでじっと見つめている。 私は紙袋からコーヒー豆を取り出し、手動のコーヒーミルの本体へそそぐ。辺りがコーヒー豆のいい匂いに包まれる。 カラカラっときれいな軽い音を立てて、豆は本体の底へおさまっていく。 「さ、やりますか」 と私は言った。女性は
左の肩から指先までは白い布で覆われていた。 私は患者さんの肩からゆっくりとその三角布を外す。 肩にゆっくりと触れる。 まだ少し痛みがあるようなので、遠位の関節から慎重に動かす。 彼女の肌はいつもひんやりと冷えていた。あたたかい私の手と重なる。 手関節から肘関節へ、各関節方向へ最終域感を感じながら、それはまるで大切な儀式のようにゆるやかにじっくりととり行われる。 肩関節に関しては、前かがみになってもらい、だらんと力を抜いて、重力に従う形で床面に向かって下ろしてもらう。