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夜明けを目指す列車に身を委ねて 【山陰山陽紀行2021夏 1日目】

これからいよいよ旅が始まるぞという時って、えも言われぬ高揚感に満ちていますよね。

これまで何度も旅行を経験してきた僕も未だにこの感覚には身体が慣れないというか、初めて一人旅をした時の純真さがまだ自分の身に残っていることに一抹の嬉しさを感じたりもします。


さて、この高揚感を高めてくれるスパイスにも色々あると思います。

たとえば青春18きっぷを使って知らない街に一歩踏み出してみる時とか、大荷物をバイクに括って乗り慣れた愛車のハンドルを握る時とか、あるいは飛行機や新幹線で一気に日常の景色を置き去りにする時とか。

人によって意見は様々かと思いますが、僕にとって一番のスパイスは夜行列車に乗る時です。


物心ついた頃から鉄道が好きだった僕にとって、夜行列車はその憧れの頂点にずっといました。
中でもサンライズという寝台特急は、幼い僕に早朝に見る瀬戸大橋を渡る時の朝焼けの鮮やかさと眩しさを教えてくれた──そんな思い出深い列車でもあります。

同時期にデビューした北斗星やカシオペア、トワイライトエクスプレスなど多くの寝台特急が姿を消していく中、何の因果かサンライズだけは生き残ってくれました。
そのサンライズもいつ廃止になるか分からないというこの状況下──今乗るしかない、そう思ったところからこの旅は始まりました。


1日目

前述の通りサンライズ瀬戸には2回ほど乗ったことがあるんですが、出雲の方には1度も乗ったことがなかったんですよね。
そういうこともあり、せっかくなら新鮮味を味わいたいなと思い今回は出雲に乗ることに。

そもそも47都道府県制覇の残りが鳥取・山口・沖縄の3県で、そのうち沖縄は既に計画を立てているので山陰を目的地とすることは予め決めていました。
なので出雲の方が都合が良かったというのも大きいです。

ということで夜、荷造りを終え東京駅へ。
夜出発の旅行はそれだけでワクワクしますね。

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21:25頃、東京駅9番線ホームにサンライズ瀬戸・出雲号が入線。

オール2階建ての車を14両も連ねて東京駅に入ってくる様は流石に圧巻です。

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285系の車体ってそれ自体が旅情を掻き立てるようなデザインになっていると思うんですよね。

構造のせいか塗装のせいか、なんにせよ「遠くへ行きたい」と思わせるような出で立ちなのは間違いありません。

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まずはお決まりのシャワーカード争奪戦。

事前に販売箇所は調べていたんですが、入線シーンとか撮ってる間に長蛇の列ができてました。

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無事シャワーカードを確保。

ここでネタバレ(?)になりますが、今回は思い切ってシングルツインを利用することに。

詳しくない方向けに説明すると、シングルツインとは1人でも2人でも利用できるメゾネットタイプの個室のことで、1人利用の時は下段を展開してソファに、上段をベッドにするといった使い方もできる優れものです。

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通常1人利用であれば1人用個室のシングルやソロ、指定席料金のみで利用できるノビノビ座席などを選ぶのが一般的なのですが、追加で料金を支払った上で空きがあればシングルツインやシングルデラックスといったワンランク上の個室も利用することができます。

寝台列車の良いところは、ホテルや旅館の多くが2名以上での利用を推奨・指定しているのに対し、1人でも気兼ねなく利用できるという点にあると思います。


そうこうしているうちに発車まであと5分を切っていたので、急いで食料と飲み物を調達。

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21:50、ゆっくり列車が動き出したのと同時にネギトロ丼とビールで開宴。
せっかくなので奮発してヱビスビールを購入してしまいました。

ちなみにネギトロはマグロの身を「ねぎ取る」ことがその名の由来とされているので、このネギトロ丼にネギが載っていないのは正しい姿です。

という豆知識はさておき。

夜の都会の車窓を肴にビールを飲んでいると、気付けば横浜を過ぎて熱海に差し掛かろうとしている頃でした。

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このように部屋の明かりを全て消せるというのも寝台特急ならではの魅力ですね。

通常の列車で車内の電気がほとんど消えるなんてデッドセクションを通過する時くらいしかないですからね。

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熱海の土石流で被災した箇所を通過。

それなりに前に起きた出来事のような気がしていましたが、まだ1ヶ月しか経っていないということをこの光景に思い出させられました。


熱海を出てからは車内を見て回ることに。

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ミニロビー(上)とノビノビ座席(下)。

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個人的に大好きなこの空間。

在りし日のブルートレインにはこの窓際の壁に簡易的な折り畳みの座席があったりしたらしいんですが、それがなくとも特別な雰囲気を醸し出していることには変わりありません。

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部屋に戻った後は何も考えず深夜の車窓をぼーっと眺めていました。

これが案外楽しいんですよね。
何をするわけでもないんですけど。

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そんなこんなでいつの間にやら静岡を過ぎ、時刻も0:30を回っていたのでこのあたりで就寝。

1日目はほぼサンライズの紹介になってしまいましたが、2日目以降はバリバリ移動していきますのでお楽しみに。

では今日はこのへんで。



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