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inliving.のあざとさ

話題のYouTuber「inliving.」(インリビング)

Video Blogスタイルで商品紹介や料理動画、おすすめを語る動画は何も目新しいものではないけれど。彼女の話し方や雰囲気、シンプルでクリーンなピックアップが最近やたらウケてる。どうやらこのモーニングルーティンの動画がバズったらしく。この前まで登録者は2万人だったのに、今見たら10万人超えてた。すごい勢い。


1. 単純に可愛い

「inliving.」は彼女の名前ではなくユニット名で、「ririka」が本人のお名前。そのririkaが単純に可愛いのがinliving.のセールスポイント。元々モデルや女優をしていたらしく、透明感のある存在感、話し方の雰囲気、ショートカットの似合う美少年的な顔立ち。観ればわかるが、「THE無印良品」というような無添加でクリーンなイメージ。オーガニックコットン100%で、もうアースがミュージック&エコロージーな存在。それが「小動物」だとか「ジブリっぽい」とか「尊い」などと、寝る寸前の暗い部屋で、布団に入りながらスマホの光に煌々と照らされる視聴者の御尊顔が想像つくコメントで溢れかえっている。



2. 現代人が憧れるライフスタイル

「必要最低限」というミニマリズム的な思想が近年のブームで、「断捨離」とか「ノームコア」といわれるシンプルなファッションが流行っていたりする。そんな流れで、所有の服はワードローブと言われる数着しか持たないとか、無印良品やニトリなどのシンプルな生活雑貨に囲まれて、ある程度規則的に暮らすというものに憧れている人が多いのではと考える。そんな誰しも一度は憧れたことがある理想郷の住人がまさに、inliving.のririka。

「○○やってみた」というように、普段できないことをYouTuberがやるのであれば、これまでのスタンダードである、値段の高い商品レビューや準備が大掛かりな動画とは違い、「憧れのライフスタイル」を見せるという新しいスタイルだ。



3. 動画の「余白」が絶妙

彼女の動画の特徴は、普段の生活の一コマをそのまま切り取ったような動画のスタイルにある。それがinliving.のコンセプトであり、普通に白湯を飲むだけの動画だったり、髪を乾かしているだけの動画、料理を作る、食べるといった、普通すぎるテーマの動画ばかり。ririkaが可愛いから成立する動画しかない。

ではなぜそれがウケているのか。

それは、ririkaがかわ、、、


動画の「余白」にある。

例えば、料理を作る動画のほとんどは作り方やテクニックを指南するものだが、inliving.の料理動画は生活の一部を見せるチャンネルなので、

普通の料理動画
「トマトを一口大に切っていきます。」
〜編集でカット〜
「はい!切ったトマトがこちらです!」
inliving.
「・・・」
「ザクザクザク、スッ、スッ、トントントン」
(トマトをひたすら切る映像)
「はい。こっちが食べる方で、こっちが〜」

というように、普通はカットされるはずのシーンがずっと垂れ流し状態なのである。これが動画の「余白」となり、コンセプトと合致した生活感雰囲気演出している。

よくある生活感はモノが多く、散らかっていたり生活スタイルが見て取れる風景だが、inliving.はモノが少なく綺麗すぎる。画だけを見ると生活しているリアルさはあまり感じられない。だがそれが動画となると、冷蔵庫を開けるとか、コップにお湯を注ぐ、ベッドから起きるなど、誰もが暮らしの中で行う動的な生活感を演出することができるのだ。カットし過ぎず、ダラダラ垂れ流し過ぎず、絶妙なバランスで。inliving.はそういった動画の「余白」作りが上手い。



4. 究極に作られた生活感

だが、人気動画の「モーニングルーティン」や「ナイトルーティン」は、観ていて違和感がある。妙な嘘っぽさを覚える

起きるシーンは当然、収録前にカメラを設置してアングルの調整などをしているはずなのに寝癖といい、スイッチの入りきらない表情といい、あのリアルさ。完全に寝起きなフリのはずなのに、演技というか嘘が上手すぎる。ボーっとするだけの動画もカメラを意識していない自然な印象がある。

嘘っぽさといえば動画内でよく見るカメラのアングルで、ririkaの後ろに映る、服をかけたラックが唯一、画的に生活感を演出している。あれだけ少ない服くらいクローゼットなどに入りそうだし、例え収納スペースがないにせよ動画を撮る上で背景に映る服のラックは邪魔で仕方ないはず。だが、あれがないと画が綺麗すぎて逆に生活感が作り物っぽくなるだろう。あるからこそ生活感がでる。あれ、狙ってますか?考え過ぎですか?どうであれ、inliving.は生活感を動画用に作っている気がする。リアルに精巧に。



5. あざとい

寝起きは顔がブサイクで、作業中は半分口が開いていて、食事はテーブルにポトポト落として、、、といったほうがリアルだし。寝間着がスエットでもTシャツでもなく、ボタン式のシャツだし。女子の外出で手荷物があんな小さいウエストポーチで完結するわけないし。風呂上がりのすっぴん?で髪を乾かす動画なんて余程自信が無いと撮れないだろうし。よくいる女子のキッチンに「マサラチャイ」なんて横文字は並ばない。inliving.は、よくあるリアルじゃなくて、やっぱり理想郷のリアルという印象。それゆえ「あざとい」という感想がちらほら見られる。

それは綺麗すぎるからこそ嘘っぽく見えるということだ。裏返すと「え、本当にこんな生活をしている子がいるの?」という憧れのようなもの。そこが嘘っぽさであり、一部の視聴者が抱くあざとさ受け入れられないという類の感想なのではと考える。

この動画の前半の5分くらいは寝起きでぼーっとするだけの画が永遠続く。喋らないし、テロップも流れない。ただぼーっとするだけ。何?禅の思想?編集ミス?

最初に温かい飲み物を飲むシーンで、かけているメガネが曇るのも、あざといが果てしない。どこまでも収束しない。これは理屈抜きにあざとい。



6. おまけ 〜inliving.の楽しみ方〜

inliving.で一番面白いのは、コメント欄だ

「700年ぐらい乳液に浸かっててもこんな透明感でーへんやろ。」
「無印で生まれました?」
「なんかこの人の周り重力なさそう」
「この人が視聴回数見ながらヘラヘラ笑ってポテチ食いながらコーラ飲んでる動画を見たい。」

これ以外にもたくさんあるが毎回の動画の楽しみはコメント。中にはちょっと揶揄ってるのもあけれど、例え合戦の模様は表現の勉強になる。


・・・


一番好きな動画は、おばあちゃんから届いた仕送り?を開封する動画。

ちょっとだけ普段の動画より人間味のある声のトーンと表情で、最後おばあちゃんにお礼の電話をするシーンは、本物のririka(?)が出てる気がする。



7. まとめ

というわけで、最近話題のinliving.

バズったモーニングルーティンは、女性YouTuberがこぞって真似してるし、こういったスタイルが今年の流行りのテーマなのかなと思うところがある。スローテンポな動画の作りや生活音はヒーリングの効果とかありそう。

ある程度のあざとさは、ririkaの小動物みたいなキャラクターとか、「余白」を意識した動画の作りとか、「こんな子本当にいるの?」的な作り物感から生まれるものなのだろうと思う。

また、inliving.はディレクターがいるので、彼が今後どのように仕掛けていくのかとか、ホームページには謎のカウントダウンが始まっているので、これらの活動が何かのプロモーションなのか、スタイルブックか何かを発売する伏線なのかは、今後動向が気になるところだ。



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