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ランナーと栄養学 ~この夏を乗り越えるために、栄養学的観点から必要なこと~

暑い日が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
那須塩原も暑く、どこに行っても暑いので逃げ場がありません。こんな時、学生時代に合宿で行っていた蓼科や菅平を思い出して「あそこは涼しかったなぁ」なんて思い出したりもします。
 
さて、合宿と言えば今まさに大学駅伝チームや高校長距離のチームの合宿が各地で行われている頃かと思います。この夏の頑張りが秋以降の自分のパフォーマンスに繋がってきます。楽ではないですが、ぜひ頑張ってもらいたいと思いますし、私もそんな選手たちをできるところから応援していきたいと思います。
 
そこで今日は、夏のきつい合宿を乗り越えるためのポイントを、栄養学的な観点から書いていきたいと思います。テーマはズバリ「栄養と体のリカバリー」です。
 

運動量の多さ=エネルギー消費の多さ


 初めに基本的なことに触れます。人間も含めた動物は、運動量が多くなればなるほどエネルギーの消費量が大きくなります。これは誰でも分かるかと思いますし、このnoteを読む方たちにとっては当たり前の事だと思います。

運動するとは骨格筋が動くということであり、その骨格筋が動くためには体内の糖を燃焼させて、または体脂肪をエネルギーとして使える状態に分解して、体内で燃焼させて使います。

自動車はガソリンをエンジン内で燃やしてエネルギーを生み出し、それを車輪に伝えることで動くことができますが、同じようなことが体内でも行われているのです。
そして、自動車が長い距離を走ればガソリンが減っていくのと同じように、人間(動物)の体でも運動時間が長ければ長いほどエネルギーの元となる糖や脂肪が減り、あまりにも減りすぎると動けなく(ガス欠に)なります。
 

陸上長距離競技における夏合宿でのエネルギー消費


 基本を押さえたところで、陸上競技の長距離におけるエネルギー消費がいかなるものかを見ていきます。
 
まず、8月前半のこの時期は、だいたいどこの大学もそこまで派手な練習はしていないように思います。主に距離走のように長い距離を走っていったり、インターバルのような練習をするにしても、設定は落として本数を多くというような練習がメインになるかと思います。実際に私がいた國學院大學では、当時は立科町の女神湖の周回道路を使っての30km走や、1000mを3分05秒程度で10本など、そういった「細く長く叩き上げる」ような練習が多かったです。
 
こうなってくると、ひとつひとつの動きの激しさはそこまでではないものの、動いている時間が長くなってくるので当然エネルギー消費量は上がってくることになります。そしてそのような練習が続いていくので、当然普通の食事をしていたのではエネルギー供給量が消費量に対して間に合わなくなってきます。
このエネルギー消費>エネルギー供給という状況は、体のだるさや眠気といった、いわゆる「疲労」という形で表れてくることになるのです。
 
※もっとも疲労の原因はこれだけではく、精神的な疲労や普段とは異なる環境、高地環境、練習頻度の多さも影響しあっています。
 

減った分は補給しよう


 ここからがこの記事の本題です。

エネルギー消費量に対するエネルギー供給量が不足した状態では、
・疲労が取れない
・集中力の低下
・運動で傷ついた筋線維の修復が間に合わない
といった状態になり、最悪の場合ケガに繋がり、夏合宿を離脱せざるを得なくなります。
 
そういったことを防ぐために栄養(食事)をきちんと摂りましょう!ということになるのですが、普通にしていても食欲が落ちるのが夏です。経験のある人なら分かると思いますが、いくら山の涼しいところで練習するからと言っても、30km走なんかをやった暁には「水しか要らん」というほどの内臓疲労に陥ることもあります。私もそうでした。
 
そこでどうするのか?ということですが、私の経験上以下のような事が効果的でした。
 

①食事前に手首足首を冷やす

体の中で「首」とつくところを冷やすことは、副交感神経(体をリラックスさせるスイッチ)をオンにすることになるといわれています。また副交感神経は体内に入ってきた栄養素を吸収しようとする作用もあるので、とにかく運動で火照った体を冷やし、リラックスした状態で食事をすることが栄養を吸収するために重要です。
 

②味噌汁から飲む

食事の最初に味噌汁やスープなどから飲むと、胃への負担を減らしながら食事することができます。おすすめは味噌汁です。味噌は大豆から作られているのでたんぱく質の補給にもなりますし、適度に塩分を含んでいるので、運動によって体外に出ていった塩分の補給になります。
 

③小分けにして食べる

基本的に1日の食事は3食という人が多いのではないでしょうか?
でも、それは一般的な人の話であり、法律で1日3食と決まっているわけではありません。
ガッツリしたものでなくても構いません。バナナやカステラ、エネルギーゼリー飲料など、そういったものでも良いのです。一般的には補食と呼ばれているものですが、こういうものを活用していくだけでも違います。
 

④ネバネバしたものを食べる

ネバネバしたものと聞いて皆さん何を思い浮かべますか?
納豆、とろろ、里芋、オクラといった、粘りのある食べ物。あの粘りの中にはムチンという成分が含まれており、このムチンが胃を保護してくれます。夏に荒れた胃の保護には持って来いの食べ物なのです。
 

⑤ビタミンB1を摂ろう

ご飯やパン、麺類などから炭水化物を体内に取り込むとき、ビタミンB1を一緒に摂取すると吸収率が向上します。ビタミンB1を多く含む食べ物や飲み物は豚肉、オレンジジュース、グレープフルーツジュース、果物類です。これらをうまく活用することでエネルギー摂取効率が向上します。
 

⑥食後90分に更に炭水化物を摂る

これは私も効果を感じたことです。
夕食後の話になりますが、食べ終えて90分後におにぎりやバナナ、カステラなどを食べます。こうすることでエネルギー吸収率が上がると言われています。
私も、疲労が溜まってきた合宿の後半に、翌日に距離走を控えていたり体重が急激に減った時、距離走を行った日の夕食にこれを実践していましたが、確かに翌日の体の調子が良かった感じがしました。
 

ここに挙げたこと以外にもいろいろあるかと思いますが、ひとまずは私の経験上、効果があると思ったものを挙げていきました。また、これらはアスリートだけでなく市民ランナーなど、かなり多くの方にも有効だと思います。ぜひ実践してみて、この夏の合宿を乗り越えてください。

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