部活動改革について思う事② ~部活動のクラブチーム化~

 前回は最近動きが活発化している部活動改革について、

①日本中体連が部活動ではないクラブチーム参加を容認する方向
②何故今になり、その動きがあるのか
③少子化と教員の働き方改革との関わり

を中心に書いていきました。

 前回は、今回の話をする前提や背景となる部分に触れましたが、今回からは、今後仮に学校部活動がクラブチーム化、あるいは部活動指導員制度の導入に際して、メリットとなる点と課題やデメリットとなる点が何なのか、熊耳はどう考えているのか、について書いていこうと思います。今回はクラブチーム化についてです。

 なお前回同様、本記事の内容は私見であり、特定の団体を代表するものではありません。

クラブチーム化に伴うメリット

①より専門的な指導が受けられる


 まず何と言ってもクラブチームのメリットはこれでしょう。その競技に精通した指導者がいて、ある程度充実した設備や環境、人員がある中で競技に取り組めることは、アスリートとしてはありがたいことですし、最も効率の良い方法ではないでしょうか。

②他人との繋がりが増えやすい


 クラブチームは、多くが学校という単位を取り払い、市や町といったある程度の大きさを持つエリアで活動することが多いです。ちなみに私が所属する那須塩原ジュニア陸上教室は、那須塩原市や一部市街の周辺地域を対象としているので、学校というまとまりを超えての活動を行っています。そうすると他校に友達ができ、人の繋がりが大きくなっていくことが期待できる上に、ある程度の社会性も身につける機会となるでしょう。

③先生の負担の軽減


 学校から部活動を切り離し完全にクラブチームに移管することで、学校教育の現場は、それまで部活指導に割いていた時間を校務に充てることができると思います。そうなると業務効率化が進み、結果として総労働時間の短縮につながると思います。

クラブチーム化に伴うデメリット


 このデメリットを考える上で、一つだけ条件があります。それは「中学生が全員部活に参加しなければならない」という事。
 この条件を付けくわえて整理していかなければならないのは、そういったルールを設けている自治体も多いためです。事実私が住む那須塩原市内の中学校は全員参加ルールを設けています。ですので、すこし乱暴な条件設定ですが、仮に全員が部活をやらないといけないという現行のルールを、クラブチーム化した時にも当てはめて話を進めていこうと思います。あくまでもそうなった場合なので、実例があるというような話ではありません。ただし、考えていかなければならない問題であるとは思います。

①各家庭の経済力の差が競技力の差に直結する


 スポーツで結果を出すには、「時間、労力、カネ」をかければかけるほど競技力が伸びると言われていますし、実際それが世の中の現実です。また、それはスポーツの世界だけでなく、学力の世界でも同じであって、「学力は親の経済力に比例する」という研究結果があるほどです。塾に行かせられるカネがあるかどうかで子供の学力が変わってくるという話は聞いたことがあるかと思います。
 そこで問題となってくるのが、「お金が無いからクラブには行かせられない。だから競技力が伸びない(あるいは可能性の芽を摘み取ってしまう)」という問題です。部活動と学校教育が強く結びついている日本の教育システムにおいて、この状況が良いのかどうかというと、答えは否でしょう。少なくとも義務教育の段階で、経済力による格差が生じてしまうのはどうなのかという問題です。

②行き過ぎた勝利至上主義に陥らないか


 指導が専門化するのは大きな魅力でありメリットだと思います。その一方で、指導が熱を帯びるあまり、部活動本来の目的である「教育」が置き去りにされ、勝つことが全てであるといった勝利至上主義に陥り、本来の目的が達せられない可能性は孕んでいると思います。もっとも、その競技で勝ちたいのだから自ら選んで来ているのだろうという事を言われると何も言えない部分はあるかもしれませんが。

③そもそも強制的にクラブチームに入るのはいかがなものか


 デメリットになる点を論じる上で、そもそもの話なのですが、強制的にクラブチームに入るのはいかがなものか、という話です。仮に、やりたいクラブチームが無いにもかかわらず「学校が何かに入れと強制してるから」という理由で何の興味もないクラブチームに入り、本人にとって何のためにもならない中学3年間を過ごすのはどうなのか、という点です。嫌々やっているものにお金と時間をかけるという、誰も得をしない状況が良いとは言えませんね。ただ、今の教育システムがそこまで強権的なことをするとは思わないので、あまり心配することは無いのかもしれません。

④部活で培われる先生との人間関係が無くなってしまう


 私は、勉学を教え教わるだけが先生と生徒の関係ではなく、課外活動まで含めた学校生活全体が人間関係を作る場だと思っていますし、実際そのようにお考えの方は多いのではないでしょうか。個人的な感想ですが、中学時代に築いた先生方との人間関係があり、現在の職業(お金を稼ぐ本来的な職業という意味での)に就けているというところがありますし、中学を卒業してからいい加減経った今でも、色々とお世話になっているところがあります。それほど学生時代の人間関係は重要だと思っています。
 これが仮に、本当に勉強と学校生活だけの繋がりになってしまったら、あまり面白味はないよなとは感じます。

 今回はここまでです。この他にも書きたいことはたくさんあるのですが、あまり書きすぎても飽きますし、何よりつまらなくなるので。若干理論が乱暴な部分はありますが、気にせず読み飛ばしてください。

 次回は「部活動指導員制度」を導入する場合のメリットとデメリットについてです。

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