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創作④ 60歳の悪あがき

先日、妻が60歳の誕生日を迎えた。

半年先に60になっていた私は、

こちらの世界へようこそ、とお祝いした。

妻は、私はもう年をとらないの、と言う。

だんだん年は減って、若くなるのだそうだ。

そんなことがあるもんか、

という言葉を飲み込む。

まあ、そういうことにしておこう。

私は、その場をおさめる。

ところで、60歳は高齢者の入口だとご存じだろうか。

まあ、年金を受け取れる年齢だからなあ。

でも、満額もらうのは65歳だよね。

じゃあ、高齢者は65歳からでいいじゃん。

なんか、高齢者っていわれると、一気に老けた気がする。

織田信長の、人生50年は行き過ぎだけど、

今は、人生100年とも言われる時代。

昔は、年金をもらうと、働かずに過ごすのが当たり前だった。

今は、年金をもらってても働く人もいる。

65歳を超えても働く人は珍しくない。

だから、60歳で年寄り扱いは止めて頂きたい。

最近は、腰や膝の痛みを感じるようになり、

立ち上がる時にも、

よっこいしょ、

と自分に勢いをつけないと難しくなったが、

60歳で年寄り扱いは失礼ではないか。

とっさに人の名前や言葉が出てこなくなったが、

たまたまのことである、

と思う。

どうしてもというのであれば、

1日だけは、よしとしよう。

敬老の日だけは。

人を敬うことは、尊いことである。

この日だけは、年寄り扱いを甘んじて受けよう。

この日だけは、だ。

それ以外は、断る。

そういえば、妻はだんだん年が減るのだと言った。

つまり、だんだん子どもに帰ると言うことか。

うまいことを言う。

年をとるにつれて、わがままになったりして

子どもに帰るとは、よく言われる。

ということは、

妻は、60年後は。


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