住民主体生活支援型地区サロンと多職種連携_訪問看護師を断る__

「ある日夫が亡くなる」-住民主体生活支援型地区サロンと多職種連携(2)

「ある日夫が亡くなる」-住民主体生活支援型地区サロンと多職種連携(1)より続き

 地区サロン仲間の早期の気づきと、いち早い地域包括支援センターへの連絡により、佐藤さんは幸い点滴などの処置で大事には至らなかった。
今回の熱中症のこと、また、血圧コントロールがうまくいかないことによる健康不安も続いていたため、訪問看護利用をすすめると
「地区サロンなどに何とか行けて元気な私が、訪問看護を利用するなんて、具合の悪い方に申し訳ない」のでと断る日々が続いた。

訪問看護を断る

(まだ動ける私のところに訪問看護師にはきてもらってはいけない)という思いが高齢者の間に根強くある。
 その後も、佐藤さんは、血圧の自己管理不足による眩暈や気分不快等によって、とても不安になると救急車を呼び、救急車が到着ししばらくすると、「落ち着いたので大丈夫」と病院への搬送を断るという事態が何度か続いた。

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 地区サロンに通う高齢者の中には、健康問題を抱えている方も多い。
 つまり、傍目(はため)には元気でもサポートが必要な人が多くいらっしゃる。
 佐藤さんのように、まだ地区サロン等に歩いて行けるぐらいの状態だから「介護保険を使って申し訳ない」と言う方が多いが、要支援の方でも、これからの人生を考え、介護状態にならないようにするため、また医療費の適正化からも、介護保険料を納めているので、是非使って欲しいというのが訪問看護師をはじめ、佐藤さんを取り囲む多職種による思いである。


  令和元年 12 月 26 日総務省消防庁から公表された「令和元年版 救急・救助の現況」において、平成30 年中の救急出動件数(消防防災ヘリコプターを含む)は、660 万8,341 件(対前年比26 万2,824 件増、4.1%増)、搬送人員は596 万2,613 人(対前年比22 万3,949 人増、3.9%増)となっている。
救急自動車による救急出動件数は660 万5,213 件(対前年比26 万3,066 件増、4.1%増)、搬送人員は596 万295 人(対前年比22 万4,209 人増、3.9%増)で救急出動件数、搬送人員ともに過去最多となっており、救急自動車は4.8 秒に1回の割合で出動し、国民の21 人に1人が搬送されたことになっている。現場到着所要時間は全国平均で8.7 分(対前年比0.1 分増)、病院収容所要時間は全国平均39.5 分(対前年比0.2 分増)と年々延伸傾向にある。
引用【平成30年中 救急自動車による救急出動件数及び搬送人員の推移】

H30救急出動件数


引用【事故種別の救急出動件数と5年ごとの構成比の推移 】

救急搬送

少し古い資料の引用となるが、平成 26 年中の救急要請実績について尋ねたところ、年10 回以上要請した者は計 2,796 人、延べ要請回数は計 52,799 回という報告もある。

(出典)平成 27 年度「救急救命体制の整備・充実に関するアンケート調査」P32

H27救急車頻回利用

 超高齢社会における救急需要の増大、救急隊増隊の限界をふまえ、安定的かつ持続的な救急業務を実施し救命率の向上を図るため、救急現場にて緊急度判定を実施している 279 本部では、非緊急と判断した場合「本人の同意があれば不搬送とするが、本人の希望があれば搬送する」とする本部が約8割となっている。
 緊急度判定時のマニュアル等により、この点については、今後もより検討が深められていくだろう。
(出典)平成30年「平成 29 年度救急業務のあり方に関する検討会報告書」P80

非緊急時不搬送事例

 佐藤さんに、訪問看護利用の説明を丁寧に行い、実際に利用することで、
「今日は具合が悪くて」という不安にたいし血圧を測り、正確な今の状態を伝えることで安心したり、病院受診でお薬などの変更があり、その場では医師に質問したり、よく確認ができなかったことについて、訪問看護師に相談ができるようになった。

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すると、「不安」になって「救急車を呼び」、そして「断る」という悪循環のサイクルがなくなったのだ。

 住民主体生活支援型地区サロンなどに通う、介護予防レベルの利用者も、健康面で心配をされている方は多い。
 訪問看護として、定期的に月に1、2回ほど地区サロン等に行き、サロンが行っている色々なプログラムに入るなど日常的な関わり、お話をするなかで、心配事を聴き、健康相談をする一方、地域包括支援センター等と連携を深め、地域に住む高齢者が安心して暮らせるシステムが今求められていると言えよう。

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だが・・・

続きは、また。
皆様、今週もお疲れさまでした。
【イラスト 鮎川朋佳さん】


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