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2022.12.21

急遽、葉山へ旅行に行くことになった。急いで今日のホテルビュッフェの予約を取り消した。

葉山に向かう途中、雲にぽっかりと穴があいていて、その穴から飛行機雲が見えた。

外を眺めながらみかんを食べていたら、あっという間に葉山へ着いた。一直線に伸びる水平線、厚い雲の隙間から、夕焼けみたいな光が差している。

葉山美術館でマン・レイ展を観た。ポール・エリュアールを映した写真が印象に残った。とても可愛らしい花の形をした招待状、いつかあのような素敵な招待状を送りたい。

展示室から覗く、夕方の海にしばらく見惚れてしまった。水面に煌めく光の粒たちがこちらを照らしている。ガーゼのように透けた雲が空をなめらかに流れていく。

ホテルの部屋から、サンセットでピンクに染まっていく海を眺めている。雲の流れとは反対の方へ、翼を広げた鳶がゆったりと空を漂っている。まるでどこか違う国に来たような気分だ。誰もいない部屋の窓から、誰もいないハーバーを眺めている。

小説を読んでいるうちに、辺りはすっかり暗くなっていた。暗い海の水面に灯台の明かりが映り、それだけが揺れている。風呂から帰ってきた彼は、白色のランプしかないことに文句を言っていた。

海辺のレストランで夕食を食べた。鮪とカンパチのサラダ、葉山牛のチーズリゾット、きのこと燻製ベーコンのペッパーリゾット、クリームチーズプリン、エスプレッソプリン。贅沢すぎて、食べるのが惜しかった。最後に出された、北欧紅茶の上品な甘い香りが忘れられない。

シャワーで火照った身体を、窓からの海風がゆっくり冷ましていく。薄明るいランプだけが点いた部屋で、ジャズがしっとり流れている。柔らかく、紡がれていくような夜。眠るのが勿体なくなる夜。

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