岫ワカメ

絵を描くし、本を読むし、ご飯を食べる

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スパイク抱えて駆けてゆく

自由律俳句集、『スパイク抱えて駆けてゆく』を作りました。私の日常から生まれた、堅苦しくない、クスッとたまにピリッとするような俳句たちです。 内容としては、タイトル含め192首の自由律俳句と写真をいくつか載せています。 あと裏表紙に短編のお話をちょこっと書きました。 装丁がとてもかわいい、お気に入りです。 また有難いことに、今回初めて本を販売させていただくことになりました。 先日、お取り扱いいただいている本屋さんを覗いたら既に数冊売れていて、素直に嬉しかったのと同時に、知ら

    • リードルショットがこわい

      27歳の夏、ドラ泣き(嗚咽) せっかくやってあげたのに類 私は全然良いんだけど科 自ら手放したのに、時々ゴミ箱を漁りたくなる 知らない溜め息、知らないメロン 「チップ貰えてよかったですね」 警察官もチップ貰えればよかったですね 初路上、立ち往生 糞、の読み方で育ちがわかる 部屋の冷たさで人の温もりが在ったとわかる ปลาโลมา のタトゥー 2024. 09. 14 山口一郎のオールナイトニッポン まる さんかく しかく 知らないのも知性、言わな

      • サコツの部屋から

        薄い雲の下、川沿いに伸びる緑 ペットボトルのラベルでどこへ旅行していたかがバレる。 さっきまで青々しい山々だったのに、こちらが本を読んでいる間に建物だらけになっている。そうですかはいそうですか。 警備員も大変だよね、ついさっきまで走り回っていた君が言うかね。 貰えばよかった袋の累計数で空が飛べそう 友達でいようねって、言われたのにな 少しずつ増えていく愛おしさを感じて、 少しずつ減っていく寂しさを想像してしまう。 サイドミラーを覗くと夏の雲 ブルーハーツの青空

        • ちいさな背中

          ある朝、高級住宅街で慌ただしく子供の手を引いて歩く母親がいた。朝からカフェテリアでコーヒーを啜りながら読書する人や、毛並みの揃った澄まし顔の犬を散歩させている人。そんな優雅な街の朝を切り裂くように、その親子は道を急いでいた。 偶然その親子と信号待ちで居合わせた私は、母親の言葉に強い衝撃を受けた。 どうやら息子が通っているインターナショナル・スクールの送迎バスの時間に遅れそうで、急いでいるらしかった。 手を引かれる当の本人は、まだ寝ぼけ眼で口が半分開いている。時刻はまだ朝の

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        スパイク抱えて駆けてゆく

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        • 2023/1
          4本
        • 2022/12
          31本
        • 2022/11
          23本
        • 2022/10
          18本

        記事

          余裕のある生活

          しばらく電池が切れたままになっていた置き時計の電池をようやく交換した。電池を入れ替えた途端、ピピっと元気よく息を吹き返した。 これで時間を確認するためにいちいちiPhoneを見る必要がなくなる。そう安心したのも束の間、時間はおろか日付の設定まで綺麗にリセットされてしまっていることに気付いて肩を落とす。 ネットで取扱説明書を読もうとして「SEIKO 置き時計 取扱説明書」と検索するが、自分が持っている時計の品番がわからなくて、一旦Amazonのサイトへ飛ばされる。品番を確認

          余裕のある生活

          夕陽と栞

          遅ればせながら、今シーズンはじめての神宮球場へ。5月の夕暮れ、少し冷たい風がそっと吹いている。 信濃町駅を出て、行儀悪く本を読みながら歩道橋の階段を登る。階段を登りきり、本から顔を上げるとそこには大きな夕焼けがあった。とても眩しく、立派な美しい夕陽であった。なんだか今日は勝てそうな予感がする。 本を読みながら、一度もつまずくことなく器用に階段を下りきって左に折れると、奥に覗く夕陽の光がまっすぐこちらに伸びている。勝てそう。とても勝てそう。光に導かれるようにして日高屋の横を

          雲の断面をなぞる

          曇り空に向かってタンポポがめいいっぱい花びらを広げていた。植物は生きることに懸命だ。報われてほしい。 わかりたいけど、わからない わからないけど、わかりたい 二人の話し声だけがぽつぽつと響く夜。 いつのまにか心地よくなって、抜けられなくなってゆく。 「あなたを選んで、一人で生きていくことにした」 2人でも、3人でも、一緒に生きていけるね。 3人でコロッケ食べながら歩いてたいね。 方法を検索しなくても綺麗に染抜きができるようになったし、元気がないときにスマホを閉じられる

          雲の断面をなぞる

          花から吸って

          マスクを外して仕事をした。約4年ぶりのことだった。マスクを外すと新鮮な空気がたくさん吸えるし、自分の声がちゃんと相手に届いている気がした。 夜が明けるころには、花粉を恐れてまたマスクを着けてしまったけれど、窓を開けて走った昨夜の東京の匂いはそう簡単には忘れられないだろう。 気圧の変化に強くないらしい、くもり空を睨んでしまう。 花を育てるのは気持ちがいい。目が覚めてから間もないまだ脳が眠っているような感覚のなかでも、花瓶の水を取り替える。世話を焼くのは嫌いじゃない。 でも少

          花から吸って

          銭湯、ゆえに湯冷め

          誰のことも傷つけないようにしていても、誰かが傷つく、誰かを傷つけている。 でも、だからといって傷ついてる人がいることに気づかないふりをして、誰かを傷つけることはしたくない。 傷つく人がいることは同じ、でも後者の傷つけ方はしたくない。勝手な話だけど。 こういう中途半端な優しさは、本当の優しさではないらしい。なんだそれ。たとえ中途半端だとしても優しさは優しさでしょうが〜。こっちはこういう優しさしか持ってないんだ、勝手にさせてくれ〜。 できるだけ自分の生きている小さい世界のな

          銭湯、ゆえに湯冷め

          湯につかる日々

          大事にしない理由がないな、 自分の欲望とたたかう 足りないくらいが良い〜 チュッパチャプス! 五十肩になる日を楽しみにさせるなんて 雪を踏みしめながら歩いたスーパーまでの道も、あの日食べたお鍋に香っていた柚子の匂いも、焦げたキャラメルのクッキーの苦さも、ずっと覚えていたいな。 自分の好きなものについて、高揚する気持ちを抑えながら、わかりやすい言葉で説明してくれる人を心から尊敬している。 集中し続けることと、目を合わせて会話することが苦手なので、人と外食に行くと気付い

          湯につかる日々

          ふきのとうの気持ちで

          何やってんだろうね〜〜祭り 部屋にソファを置くまでは、 部屋にチューリップを置くまでは、 あっちがこっちのガムだったな あ〜あ、そうなることが目的じゃなかったのに〜 と、後悔することがかなりある。 話すのはやっぱり苦手だな。顔を見て言葉で伝えたいことは沢山あるのに、いつまでも話下手で困る。 「今は意味がない、意味がない。会って話したい君と」 車で何度も渡っている多摩川にかかる橋も、電車から眺めるとまた新鮮でいい。2月の寒空の下、天候は雨にも関わらず、河川敷のグラウン

          ふきのとうの気持ちで

          白い息しか知らない

          浴室にぽつりぽつりと響く、愛しい歌声とアルペジオが湯船を静かに揺らす。鼻まで浸かった湯の温度で思い出す、いつかもらったチェック柄の包装紙。 扉の向こうにある暖色の光に心が解けてゆく。一段高く置かれたシャワー、締めが甘い蛇口から溢れ続ける雫。 真っ白な天使になった二人。紺色のスーパーカーに乗って、窓は全開にして。一人はたまに外を眺めては溜め息をついて、もう一人は暢気に本でも読んでいて。花束なんかよりソフトクリームの方が似合ってしまうね。どこの町に行ってもパン屋に寄っては食べ

          白い息しか知らない

          あれ、年越しちゃってた

          頑張って行かなくちゃいけないご飯会がたっくさん、はぁ、お家でゴロゴロ寝ていたいよ〜 マイヘアで覚める、下北の3時。 3枚ずつ配る、緑色の名刺。 何も言わず鍋を取り分けてほしい、パフェの最後の一口を口に運んでほしい、トーストが焼けたら二度寝から起こしてほしい、週末は仕事帰りにアイスかプリンを買ってきてほしい、貴方が読書している膝の上で日向ぼっこしながら昼寝をしたい。 子供は子供らしく、甘えさせてほしい〜 お会計のスマートさといい、去り際のさっぱりした感じといい、育ちの良

          あれ、年越しちゃってた

          門出も船出もまだいない

          昨年末の私は、珍しく働き詰めの日々を送っていて、身体も心もわかりやすく疲弊していた。本を読む時間があるのなら、その時間を睡眠に充てたかった。 見るだけで体調を崩しそうなスケジュールと睨めっこしながら、年末年始に炬燵でのんびりと本を読んで過ごすことだけを心待ちにして、なんとか仕事を納めた。 翌朝、マスクをしていることをいいことに大欠伸を連発しながら電車に揺られ、朝一番のバスに飛び乗って実家へ帰ってきた。 久しぶりに会うはずの娘に、両親はさほど関心がないようで、「おかえり〜」

          門出も船出もまだいない

          2023.12.24

          クリスマスイヴの早朝、あまりの寒さに目が覚める。弱めに設定しておいた加湿器から、ゆらゆらと申し訳程度の蒸気が噴き出ている。 羽毛布団で温められすぎた体は汗をかき、その汗を師走の容赦ない冷え冷えとした空気が冷やしていく。これこそが、私が冬に風邪をひくメカニズムであることに、この文章を書いていて気がついた。 先日までひいていた風邪による喉の痛みは解消されたものの、その症状は今度は鼻水に移行。次から次へと繰り返される体調不良。なんとなく感じる栄養失調。ダラダラと流れ続ける鼻水で

          橋を渡りきれない人

          「誰のためにもなっていない、そんな仕事をしているような気がするんですよね。」 その人は悲しそうに笑いながら、静かにそう溢した。言葉遣いが丁寧で、物腰が柔らかく、他人の気持ちを聞き出すのが上手な人なんだろう、第一印象はそんな感じだったと記憶している。聞けば職業はライターをしているそうで、その人柄の良さに納得した。 仕事内容としては取材した内容をエッセイや雑誌記事にすることが多いのだそう。しかし自身の文章に満足できていない現状に苦々しい思いを抱いているようだった。 後にその文

          橋を渡りきれない人