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本当なんてぶっ飛ばしてよ

友人を待つ間、コンクリートが打ちっぱなしになっている地面に座りながら本を読んでいる。コンクリートのひんやりとした冷たさが、尻を伝って直接身体に染み渡ってきて、すっかり芯まで冷えてしまった。

B'z、何かのアニメ、ダンスフェス、そしてクリープハイプと、今日の幕張メッセでは様々なイベントが執り行われている。まさに混沌そのものだ。

最寄駅から海浜幕張駅に着くまでの片道1時間、久しぶりに電車でぐっすり眠った。まだ残っている昨晩のアルコールを窓から入ってくる春の陽射しで乾かしながら穏やかに眠った。

ホール内では尾崎さんの声が絶えず鳴り響いている。さっき食べたハヤシライスが段々と自分の養分になっていくのがわかる。心地よい歌声と自分になっていくそれがじんわり混ざり合って、文字を追う目がウトウトしてくる。

2020年3月、幕張のライブが中止になった。そのあたりから、チケットが払い戻されることが当たり前になった。耳で音を聴くことしかできない日々が当たり前になった。

あれから3年。すごくあっという間だった気がしていた。でも、太客記念観に飾られた写真の一つ一つに、3年という月日の長さとそこにいた4人の姿がしっかりと刻まれていた。そこに映っていた景色と、自分が足を運んで見た景色が重なって、色々なことを思い出した。

飲酒する4人を観るのが楽しくて、思いの外酒がすすんでしまって、拓さんより先に寝てしまった初めての拓飲み。目の前に4人がいる光景を久しぶりに目にして、情けないくらいに濡らしたマスク。最後の曲が終わり、引き留める声を出せない代わりに仕方なく叩いた手の乾いた音。電波が会場内まで届かなくて、途切れながらでしか観られなかったライブ直後の楽屋生配信。想像もできなかったHE IS MINEでの沈黙。正月に突然届いた尾崎さんからのピックのお年玉。夜明けに静かに光る東京を運転しながら聴いたナイトオンザプラネット。この3年の間に起こったクリープハイプにまつわる様々なものが蘇ってきた。

どんどん売り切れていくグッズすらもう愛おしい。買えないことは悲しいはずなのに、それすら愛おしくなってしまうくらいクリープハイプが愛おしい。多くの人に求められている彼らが誇らしい。これからもずっと4人を信じていたいし、同じくらい信じていてほしい。見えないもので繋がってきたはずなのに、目に見えるものよりも信じられるようになってしまったのは何故だろう。付かず離れず、誰とでもそのくらいの関係が心地いい。

ライブが始まるまであと数時間。引き伸ばされた3年分の想いを取り戻しにいく、それまでは尻を冷やしながらせっせと文字を追う。

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