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071 薔薇の花を詠んだ歌を探して

たった70回のこのシリーズで、短歌について取り上げるのは3回目になります。いよいよ、ネタが尽きたのかって?
そりゃそうですよね。お客さんが来ない店に、紹介できる奇跡は、そうそうは生まれません。

でも、6月26日(土)15:00~のイベント【短歌好きあつまれ~】に備えて短歌を探していたら、素晴らしい短歌とテーマを見つけちゃったんです。
その軌跡のような感動の一部を先出ししちゃいましょう。

えっ?
1か月も先のイベントの予習を、もうやっているのかって?

えへん。当然でしょうが。

【歴史トーク】だって、【誤配だらけの読書会】だって、いつもそれくらい前から準備しています。
イベントを主催する者の礼儀だろうが、、、なんて偉そうなことを言う前に、単に好きだからですね。この3つのイベントが、ボクの数少ない勉強の場になっています。でも、この歳になって勉強の場があるって、素晴らしいことだと思っていますし、参加メンバーに感謝ですね。

九条Tokyoって、勉強の場?

更新を続けろ、更新を ぼくはまだ あきらめきれぬ夢があるのだ 

そう、萩原慎一郎が歌っています。彼より長く生きている我々が、更新しないでいいわけないでしょ!

これまで短歌については、この連載シリーズでも、
★016  透明な悲しみと、それを突き抜けたところに存在する明るさ
★037  十七文字では少なすぎる、せめて三十一文字は
の2回で、主に小島ゆかりさんと杉崎恒夫について書いてきました。

2人とも、ボクが大好きな歌人です。ほかにも、好きな歌人はたくさんいますが、困ったことにすぐには紹介できません。これまで数百以上集めてきた短歌のメモが、先日の、寝ている間に「不意に」壊れてしまったスマホ事件とともにボクのもとを旅立ってしまい、いま、【短歌好きあつまれ~】に備えてだけではなく、もう一度、自分が好きな短歌を集め始めているところです。

いわゆる終活? それにしては増えて行くのが妙ですが。

その最中で見つけてしまった新しい歌について、今日はどうしても誰かに語りたく、突然の激しい雨に打たれてお客さんの来ない店で、PCに向かっているというわけです。(この雨は涙雨?)

こう書いてみると、なんだか単に憐れなオッサン。。。
いやいや、気を取り直して、、、

次回の【短歌好きあつまれ~】のテーマは、
映像が浮かんできそうな歌 → 音楽が聴こえてきそうな歌
とくれば、
眼 → 耳 → の次は「鼻」しかないでしょ、ってわけで
「香り立つ歌」です。

別に、匂う歌、でもいいんですよ。
どちらの表現を選ぶかは、その人の人間性?
いやいや、、、

で、ボクがまず探し始めたのは、「薔薇」の香について詠んだ歌でした。

薔薇って、なんて美しいんでしょうね。花と言ったら薔薇。それ以外はいらない、というのは暴言でしょうが、ボクにとって、花と言ったら桜でも梅でもなく、薔薇。

それも、赤や深紅の薔薇より、黄色や白の薔薇が好き。

「だれかが、なん百万もの星のどれかに咲いている、たった一輪の花がすきだったら、その人は、そのたくさんの星をながめるだけで、しあわせになれるんだ。そして、〈ぼくのすきな花が、どこかにある〉と思っているんだ」
(内藤濯訳 サン・テグジュペリ『星の王子さま』)

と、人類がこれまでに到達した至高の愛について書いている『星の王子さま』の薔薇は、赤い八重の薔薇ですが。。。

ボクが一番好きなのは、ツル薔薇の白不二。その清楚で上品な八重の薔薇の佇まいは、見飽きることがありません。文字通り世界に二つとない。。。
この連載では珍しく、今回はボクの畑で咲いていた白不二の写真までつけちゃった。

無農薬の畑らしく、花びらを虫に食べられているのがご愛敬って奴ですが、どうです、美しいでしょ?

そういえば、もう十年もボクの畑を楽しませてくれていた白不二が、去年枯れてしまった話はしましたっけ? ショ~ック。。。

でも、この連載は奇跡についてのシリーズです。ということは、そう、見事に復活したんです。何度やっても失敗していた挿し木が、なぜか去年の秋、根を出して、今年の春、3方向に枝を伸ばしました。まだ花をつけるまでには至っていませんが、先日からさらに新しい分枝が始まって、ツル薔薇らしい枝ぶりになってきました。

きっと秋には。。。挿木がほしい方は、乞うご期待。

って、いったい今回は何の話を書くんだっけ。。。
そうそう、薔薇を詠んだ短歌。

ためらひもなく花季となる黄薔薇 何を怖れつつ吾は生き来し (尾崎左永子)

薔薇は薔薇の悲しみのために花となり 青き枝葉のかげに悩める (若山牧水)

枯薔薇落つるひびきにおどろきぬ 夜半の酒場のしづかなる時  (吉井 勇)

最後の歌は、現在のボクたちバルや居酒屋のための歌のようですね。

そして、見つけたのが小玉朝子の歌です。その歌集のタイトルが『黄薔薇』。まるで、ボクのためにあるような歌集でしょ。同名で、3冊の歌集が残されているようです。

ようです、と書いたのは、小玉朝子については詳しいことがわかっていないらしいからです。

歌人の睦月都さんが、『角川「短歌」時評連載開始のお知らせ』で、7月号掲載の時評に昭和初期の歌人・小玉朝子を取り上げています。「小玉朝子は結社「橄欖」所属、前川佐美雄らの同人誌「短歌作品」(昭6~7)、「カメレオン」(昭7?~8)にも参加しており、佐美雄からも期待されていた歌人だったようですが、昭和9年6月頃を最後に「橄欖」や短歌総合誌等から姿を消し、以後、消息がわかっていません。」
と記し、この歌人について、何か情報をご存知の方がいらっしゃいましたら、情報提供をと呼び掛けています。

うつくしくひとをかなしみ居りしかばわが頬が白き薔薇花になる 

黄薔薇ってタイトルの歌集なのに、白薔薇?って突っ込みは置いといて、小玉朝子のすばらしい短歌の数々は、はてなブログの「bellaestate’s diary」で見つけました。モダニズム短歌をまとめたステキなサイトです。

いまをかぎりにふたゝび春の光となるこの朝あけの太陽のいろ

ほか、ボクの胸に刺さった小玉朝子の短歌のいくつかは、6月26日に改めてご紹介します。
って、またまたイベントの告知かーい。。。

でも、たった三十一文字なのに、どうしてこんなに深い世界を表現できるのか。

そして、ボクの逝ってしまった「三十一文字×数百首」、つまり約一万字、いや、一〇〇〇〇文字もの歌たちは、今頃どこを彷徨しているのだろう。。。

ここで、唐突に話は短歌から映画に映り(移り)ます。って、いつものことですが。

『ミッション: 8ミニッツ』(2011年、アメリカ映画) 観ました?

いい映画ですね。列車爆発前の8分間を繰り返して犯人を探す映画ですが、最後に主人公がガールフレンドに尋ねます。

「運命って信じるかい?」

「偶然でしょ」

でも、その偶然が奇跡であり、それはちょっと目を凝らせば、あちこちで起きている。そんなことが当たり前のように信じられる、小さな喜びに満ちた、今日の発見でした。

もしかして、スマホが壊れたのも、今日の発見のために用意された奇跡だったとしたら。。。

いえいえ、ボクは運命や因果応報は信じないのでそこまでは結びつけて考えませんが、たった三十一文字しかない短歌には、人生や世界がおもちゃ箱のようにギッシリ詰まっています。

やっぱ、短歌は奇跡の別名だわ。ミラクルじゃなくって、ミソヒトモジ。。。


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