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『ひとり暮らし』で得たもの

一人暮らしを始めて半年ほど経った。この辺りで、一人暮らしにまつわる思考の巡りを一通り残しておきたいと思う。

まず、一人暮らしを始める前の私が狙っていたものと、それを得られたか、実態がどうだったのかについて挙げていきたい。

①自分の生活ペースを知りたい

→成功した。一人になったことによって、大きなゴミ袋が何日で埋まるのか、週に何回洗濯をしたいのか、鏡についた水垢を何日放っておけるのか、などが具体的な数値で分かってきた。ストレスが溜まるとお酒を飲みラジオを聴きながらシンクを一心不乱に磨くという、新しい自分にも出会うことができた。翌日起きるとピカピカのキッチンがそこにあり、とても気分が良い。土曜日の朝は1時間を目標にして、好きな音楽を聴きながら風呂やトイレ掃除、洗濯、床掃除などどこまでできるかをゲーム感覚で楽しんでいる。掃除は目に見えて成果が現れるので好きである。自炊も特に苦にならないタイプであることが判明した。

②生活面での「自立」がしたい

一人暮らしをすることにより、生活能力が身につき、金銭感覚が養われ、自立力が上がると思った。その通りだった。一人暮らしの開始に合わせて楽天経済圏に入り、MoneyFowardと家計簿アプリを入れた。家計簿アプリは予想以上に生活の軸になった。自分好みに細かく勘定科目と予算を設定でき、テンプレートを作れば自動仕訳もできる。私は隙があれば多少の欲を無視してお金を貯めたくなってしまうタイプなので、予算通りにお金を使うことを目標としてアプリを使っている。例えば月の生活用品予算を5千円にしているが、生活必需品のティッシュやサランラップ、洗剤などでは予算に達しないので、試しに温湿度計を買ってみた。部屋の環境が数字でわかるとすぐ暑さや寒さ対策ができるので重宝している。生活を自分で2ミリくらい豊かにできたことが嬉しかった。人は一人では生きていけないが、ひとりで生きる力(物理)はあって困ることはないと思う。

③少し離れた場所から親を尊重したい

これがずっとしたかった。私は親を『母』『父』といった面でしか見たことがなかった。母が人としてどんな人なのか、父が何を考えているのか、ずっと知りたいと思っていた。しかし、一緒に住んでいるとどうしても子としての自分が全面に出てしまうし、親は親の顔をして接してくる。反射でお小言を言う母の癖と、反射で反発する私の関係は私がいくつになっても変わらなかった。せめて物理的に距離ができれば、もう少し冷静に家族を尊重できるのではないかと思ったのだ。しかし、これは思っていたようにはならなかった。連絡をとるといつも体調の心配をされ、偶に会うとタッパーに入った豚つくねやポテトサラダをもってきてくれる。コミュニケーションの頻度が一気に減った反動なのか、以前より親の顔をして接されている気がする。親と子の関係から脱したいわけではまったくないのだが、もう少し違う面を見せてほしい。上の二つと違うのは、私ひとりでは完結しない点。片方がそう願ったところで簡単には成し得ないのが人間関係なのはわかっている。ので、これについては長期的に考えようと思う。

総括すると、『生きる力』が少しついた。また、生活の解像度がぐんと上がったように感じる。私の場合、実家暮らしは、いわば親の作りあげた生活の中に参加しているような感覚だったのだ。もちろん色んな実家暮らしがあり、色んなひとり暮らしがあるのだろうから一概には言えないが。こと私の場合は、自分の面倒を経済的、社会的、生活の面でもみるようになったことにより、仕事で稼いだお金で生活をする実感が湧いた。自分の人生を自分で歩んでいる感覚がして心地が良い。

自由は耐えがたい孤独と痛烈な責任を伴うものだとフロムは言った。責任の重さに逃げたいと思うことも確かにあるが、息がしやすくなったのは事実だ。しかしまだ半年なので、どうなるかわからない。これから寂しくなったりするのだろうか。孤独とも良いお付き合いをしていきたいと思っているので、それはそれで受けてたとうと思う。

余談だが、仕事終わりの金曜夜に一人静かに逆立ちの練習をしてもだれにも咎められないのも一人暮らしのいいところだ。人間、他者の目がないとそれなりに面白くなれるのだと知った。

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