装具学 体幹装具 まとめ 側弯症用装具
はじめに
この記事では特発性側弯症の思春期型に適応となる装具について説明します。
要は、理学療法士養成校で習う範囲の側弯症用装具の説明しかしません。
側弯症用装具の適応
側弯症とはいえ、程度はバラバラです。
側弯が発見されても曲がっている程度が軽度であれば特に医学的な治療は行われないことが多いです。
装具の適応範囲
胸椎:30~50° 腰椎:25°~45° では装具の適応となります
胸椎カーブが50°以上、腰椎カーブでは45°以上となると手術の適応範囲となります。
胸椎30°未満、腰椎25°未満の場合には手術も装具も適応にならず、経過観察となることが多いようです。
脊椎カーブの計測 Cobb角
脊椎カーブの計測方法は立位姿勢で正面からレントゲン画像を撮影し、その写真上で計測されます。
その角度のことをCobb角(コブかく)といいます。
Cobb角の定義としては
「左右の傾きが最大である上下の2個の椎骨を終椎と呼び、弯曲の頂点にあつ椎骨を頂椎と呼ぶ。終椎の椎体のそれぞれ上縁と下縁の延長線のなす角度をCobb角という」
となっています。
超簡単に端折っていってしまうと、1つのカーブに対して、一番角度が大きくなるような組み合わせの椎骨の上下をそれぞれ終椎(しゅうつい)と呼び、
そのカーブの中で一番出っ張っている椎骨を頂椎(ちょうつい)と呼んでいます。
テストや国試で重要となってくるのは頂椎の高さが重要となってきます。装具適応に大きく関わってきますのでね。
国試や模試では終椎という文言は今の所見たことがありません。
rissar sign
思春期型側弯症は骨成長真っただ中の小学~中学生に発生します。
装具の適応時期は脊椎の成長期が終わるまで、となります。
その基準としてよく用いられるのが
rissar sign(リッサーサイン、リッサー徴候)になります。
レントゲン撮影をして、腸骨稜の骨端が石灰化してくる具合によって装具を外すタイミングを見計らっています。
(もしくは成長期が終わっているので装具不適応となることも)
rissar signは0から5までの6段階で区切られています。
腸骨稜の骨端が全くない状態は0
外側から1/4まではrissar1、2/4はrissar2、3/4はrissar3といったようになっています。
rissar4までいってしまうと腸骨稜を全て骨端が覆っている状態で、それから先は腸骨稜と骨端が癒合してrissa5の状態となります。
ちなみに装具の適応はrissar3以下となります。
側弯症用装具
側弯症用装具にも様々な種類がありますが、理学療法士養成校で把握しておくべき装具は3つです。
今回はそこだけ説明していきます。
側弯症用装具の種類
側弯症装具の大別としては
骨盤~下顎まで及び脊椎の全てのカーブに対応している Milwaukee brace ミルウォーキー型
と
骨盤~腋窩までの構造で、下位胸椎(Th8以下)のカーブに対応しているアンダーアーム型 があります。
ミルウォーキー型は頚胸腰仙椎装具(CTLSO)の固有名詞ですが、アンダーアーム型は大別された胸腰仙椎装具としての分類の名前になります。
Milwaukee brace ミルウォーキー型
脊椎の全てのカーブに適応される。
下顎まで及ぶ構造のせいで外観が不良となる。
ちなみに下の顎や後頭部は装具には触れないように設定される。
Boston brace ボストン型(アンダーアーム)
Th8以下のカーブに適応される。
骨盤帯
(1)、腰椎パッド(2)、胸椎胸椎パッド(3)
の3点を支持することで3点固定により矯正される。
上位胸椎の矯正は立ち直り反応を利用して行う。
急に出てきましたね。立ち直り反応。急すぎて困りますね。解説します。
側弯の矯正と立ち直り反応の関連性
側弯が胸椎にも及んでいる場合に、Boston装具などを装着すると下の画像のようになります。
装具の矯正はTh8までしか期待できないので、それより上位の脊椎のカーブは残ったままになります。
むしろ矯正によって頚部や頭部はより傾くことになります。
そこで、装着者本人が頭部を床面に地面に対して垂直に保とうとする機能を利用して、装具からはみ出ている部分の矯正も行おうとしています。
絵にすると↓のようになります。
ただ、側弯の角度や脊椎の可動性には個人差があります。
更に、立ち直り反応にも個人差があります。
側弯症は基本的に長期間に渡る疾患なので、頭部が傾いた状態を垂直だと学習してしまっていることがあります。
なので、様々な理由で立ち直り反応による矯正が期待できない場合があるよ。ってことです。
OMC型装具 Osaka Medical College型装具
Th8以下のカーブに適応
立ち直り反応による矯正が期待できない場合にはOMC型のように矯正パッドを増やしたもので対応します。
このOMC型装具は大阪医科大学で開発されたもので、Boston型装具に高位胸椎パッドが追加されています。
このパッドによって胸椎がカーブ大きい場合でもミルウォーキー型を使わずに矯正することが可能です。
注意が必要なことは、Bostonと比較して矯正できる範囲が拡がった訳ではないということ。
なので適応はBostonもOMCも両方ともTH8以下のカーブです。
OMC型は、Th8以下のカーブの中で胸椎よりのカーブの矯正が得意という感じです。
まとめ
一旦こんなところでしょうか。
ここまで2000文字強。いつも長い。読む人も大変ですね。
PTの国試で出てくる側弯症用装具はこの辺を押さえておけば、まあまあ大丈夫なのかなと思っています。
そういえばなんですが思春期型の側弯症は
胸椎右凸、腰椎左凸が多いです。
その逆パターンが珍しいので、逆のパターンのことを「逆カーブ」なんて呼んだりするくらいです。
長くなりそうなのでこの辺にしておきます。
お疲れさまでした。
良ければ他の記事も見てってください。