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■侍タイムスリッパー

評判がいいと聞いて、夏休みの最後に飛び込みで見てきたが、とてもとてもすごくすごい良かったので、久々にみんなでやってたノート引っ張り出してきて侍タイムスリッパーの感想を書いてみます。
1回しか見てないので勘違いしてる所とかもあるかもですが、ご容赦下さい。ネタバレはなるべく避けますが、少しでも嫌な方は閉じてください。

シネマ・ロサ

・ロサ会館
東京池袋で見てきた。今現在はなんと関東で2館の上映しかない。インディーズもインディーズすぎてびびるし、ロサ会館のシネマ・ロサがまだ生きてたのにもビビるしその施設の古さにもびびった。ロサ会館側の和式トイレ怖すぎてちびりそうだったけど入れなかった。
これぞロサ!!ずっとこのままで居て!!

8月20日現在

■ストーリー公式サイトより
時は幕末、京の夜。
会津藩士高坂新左衛門は暗闇に身を潜めていた。
「長州藩士を討て」と家老じきじきの密命である。
名乗り合い両者が刃を交えた刹那、落雷が轟いた。
やがて眼を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所。
新左衛門は行く先々で騒ぎを起こしながら、
守ろうとした江戸幕府がとうの昔に滅んだと知り愕然となる。
一度は死を覚悟したものの心優しい人々に助けられ
少しずつ元気を取り戻していく。
やがて「我が身を立てられるのはこれのみ」と刀を握り締め、
新左衛門は磨き上げた剣の腕だけを頼りに「斬られ役」として生きていくため撮影所の門を叩くのであった。

ここまでが公式ストーリー、
この後は侍が現代の殺陣に挑みながら新しい生活になじもうと奮闘します。侍視点での殺陣の細さや、素直で真面目な性格で周りに認められ、ある作品に抜擢され…そこから話が大きく展開します。
その作品に挑む中で知る真実、何も以て生きるのかの葛藤、どう生きていくかの決意、様々な気持ちがからみ合い最後の大勝負がはじまるのでした…。

■スタッフ
監督・脚本・撮影・編集:安田淳一
キャスト:山口馬木也/冨家ノリマサ/沙倉ゆうの

■感想
最初はお決まりのタイムスリップものとしてはじまり、予想できる流れが続きます、が
主演の侍(山口馬木也さん)が、侍すぎてとても良い。新しいものに戸惑いながらも、迷惑をかけたら謝るし何かをしてもらったら感謝するしで、この侍嫌いな人はいないでしょ?!ベタな展開、だがそのベタさが気持ちよく、テンポもよく進みます。

・序盤はとにかく生きる事に必死
この世界に戸惑いながらもなんとかして生き抜こうと必死な侍と、それを助ける助監督の女性やお寺のご夫婦。全員良い人で見ていて安心できます。
この帰れる家があったから侍も生きていこうと思えただろうなー。この家が無かったら…?たぶん心は荒んでいき、大事なものを捨てないと生きていけなくなったりしたのかも?と別の展開を考えたりしましたが、後々それが当たっているような描写もあり、対比をちゃんと考えて作られているのかな?と思ったり。
やっぱり環境って大事だよね…。
とにかく、面白おかしく新生活がはじまります。

・中盤からの目的と手段
切られ役として仕事を得た侍、
時代劇という「自分の存在した世界」を作ってくれている制作現場で役に立ちたいと仕事にのめりこんでいきます。助監督の女性はその真っすぐさを見て、時代劇の監督になるという目的を再び思い出します。忙殺されると、目的のためにやっていた途中の部分が目的にすりかわってそこで停滞しちゃうよね…わかる。分かりすぎる。
ちなみに助監督は子供の頃からセーラームーンよりも暴れん坊将軍が好き!という女性像でしたが、まさに友人がそんな感じで小さい頃から時代劇が好き!というタイプなので、個人的にリアリティありすぎました。
安心してください、八丁堀の七人ばかり見てる女子高生は存在していました。

ちなみに、侍の演技を見た年配監督が一瞬で「細かい所作にリアリティがある」と、見抜く所がとても良かった…。この「見る人が見れば分かる」ってすごく大事な部分、時代劇が減っていって世代交代すると「見る人」が消えてしまう部分なのかなーとも思ったり。殺陣もそうですが、継承する人がいなくなり全体的に作品が少しずつ重みを失う感じ…。それをこの映画はなんとか伝えたかったのかもしれない。わからんけど。

・終盤の畳みかける想い
大きな作品に参加することになり、葛藤しながらも突き進む侍と、共演者の大きな悩み、そして作る側の決意、この作品の監督のこと何も知らないんですが、時代劇好きなのかな?とうっすら思ってましたが、いや好きどころじゃなくてとんでもなく好きなのかな?と思い始める。
侍は自分の本分を思い出し、真剣勝負に挑む…そこに待ち受ける最後の一振りと、サプライズ…。
まあ正直最後のシーンは序盤から読めていたので予定調和という感じでしたが、それでもやっぱり面白かったです!!!
全体通してコメディなんですが、その中に悲しい歴史があっての今がある事を思い出させてくれる鋭さがありました。いやこれ時代劇好きな人みたら死ぬほど泣くのでは?そんなことない??

・カメラを止めるな!!!!!
これ、これよ~~~カメ止めとまた別軸のカメラを止めるな。が、あります。
最高でした。ぶわっとまた泣いた。止め絵のシーンもとても良く会場全体がまさしく「固唾をのむ」体験をします。コメディからの温度差で体が整いそうになりましたわ…。ぜひ映画館で体験してほしいここ!!!!!

・会津藩士という役どころ(盛大に脱線します)
この映画、会津の人に見てほしすぎるんですよね…。
終盤で侍が、自分がいなくなった後の会津藩の運命を知ってしまい静かに嗚咽するシーンがあります。守れなかった辛さや、ふがいなさ、今生きていていいのかなどの葛藤が伝わってきくる名シーンだと思います。平和な時代の中で一人肩を震わせて声を殺して泣く侍という構図も良い…。
もうこのシーンあたりからずっと泣いてしまって泣いてしまって…。改めていい作品を見てしまった、と泣きっぱなしでした。この現代ですら会津の人は未だに不遇な部分がありますからね…。
実は私の親戚が新潟で会津墓地という墓を守っていたことがあるんです。
新潟で会津墓地?ってなるんですが、これ↓

1869年(明治2年)、戊辰戦争に敗れた旧幕府軍の会津藩士1742人が新政府軍の榊原家高田藩に預かりの身となった。当時、高田藩は財政がひっ迫していたが、藩士が謹慎した寺々に炊事場や浴場などを設け、生活用品一式を用意し、医師も付けるなどして厚遇した。しかし、藩士らは戦場での傷病や厳冬の長旅で体を壊し、約1年の謹慎中に68人が死亡。高田の人々は死亡した藩士を手厚く葬り、現在は地元住民や「旧高田藩和親会」が墓地を管理し守り続けている。

「高田の人々の恩情に感謝」 戊辰戦争150年で会津藩士の子孫らが金谷山に墓参 - 上越タウンジャーナル (joetsutj.com)

上越タウンジャーナル

今は↑こんな感じでなんかいい話にされてますが、ちょっと前まで打ち捨てられていた墓地なんですよ。それを親戚が一人でこまめに草取りや掃除して管理してお墓の字を読めるように整備して、何度も何度も市に訴えかけてやっと管理が市になった経緯があります。いまでも、ご先祖を探しに来ましたと福島からお参りに来る方がおられます。
そんな経緯もあり、会津藩士の無念さや葛藤を感じてもう本当にCMじゃないけども涙が止まりませんでした!!!!!
そしてこういった「忘れてはいけない歴史」を時代劇という形で映像にのせて残したいという気持ちの作中の人たち→そういう作りにしたこの映画を作った人たち!という二重の意図を勝手に感じ取ってまた泣くのでした。
作った人の意図が垣間見えるとすぐ泣く。(いや、勘違いかもしれんけど)

■印象にのこったもの
つらつらと。
・時代劇のスタッフ
監督とか殺陣の師匠、高齢の人が多いように見えたけどリアルなんだろうなあ。
・衣装
 私がとても良いと思ったのが衣装!新品で綺麗な格好してる時代劇めちゃくちゃ違和感あったのですが、こちらではちゃんとボロッボロの格好しててとても良かった……。
いつもドラマ見てると全員新品の靴履いてるのに違和感おぼえちゃうんだよね……。お寺の生活感もとてもよかったです。
・タイトルロゴめちゃくちゃかわいい
 監督お手製のCG?センスいい。
・ギャグ
古いギャグの見せ方?なんか効果音とカメラ寄る感じ。
わざとだろうけど、この作品にはまってたかんじある。いや笑わらんけど。
・姿勢がよい
侍役姿勢よくてとても気持ちがいい…
・インディーズ…?
私は映画に詳しくないのですが、この規模でインディーズっていうんですかね?まったく見劣りしないクオリティに感じました。
・アフロ
不満点としては、映画館が小さいので前の人の頭がかなり画面に食い込んで見えてしまっていたところぐらいです。作品関係ないです。
私の前の人は残念ながらアフロだったので、映像の下の部分がずっともやもやしていて辛かったです。快適に見たい方は拡大上映されたあとに大きな映画館で見ると良いと思います。いやこれ拡大上映するでしょ?

アフロ越しに見た映画の記憶もまた、インディーズ映画っぽいですね。いや、段差のほぼない映画館来るならアフロは最後列にいてくれよ!!!

ということで、素敵な作品ありがとうございました。

k


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