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クジラと蛇口のいちごつみvol.4

写真:蛇口ひろこ

◆いちごつみ:相手の短歌から一語を選び、その語を使って短歌を書く遊び

短歌:藤田美香
写真:蛇口ひろこ
「クジラと蛇口」というユニットを組んでおります。

短歌のやりとりのような、手紙のやりとりのような、ただの日記のような、そしてたまに写真も入るかもしれないこの企画。
よろしければお付き合いください。

蛇口ひろこブログ『蛇口から水』2023.7.21より抜粋

なんと100首を超えました。


4Bの柔らかさもて輪郭をなぞられている絵画教室/藤田美香

終わったら迎えに来るという母を待たずに絵画教室から帰る/蛇口ひろこ

この冬が終わったらまた春が来るいままでと別の春だとしても/藤田美香

木曽川へ越冬にくる白鳥が飛んでゆく頃きみに逢えたら/蛇口ひろこ

沈んでも岸まで泳いでいけそうで渋々次の白鳥を待つ/藤田美香

厚岸の殻付きの牡蠣を専用のナイフで開けるコツを掴めり/蛇口ひろこ

生焼けが怖くて豚カツ牡蠣フライ唐揚げいつも消し炭となる/藤田美香

いい人と思われている代償が身体の奥に消し炭として在る/蛇口ひろこ

代償をいつまで払い続ければわたしはわたしにもどれるだろう/藤田美香

忙しい日にも味方はいたりする律儀に水にもどれるわかめ/蛇口ひろこ

歳とらぬ人も変わってゆく時代磯野ワカメの可愛げのなさ/藤田美香

磯野家を理想の家族と思う層むかしの家族と切り捨てる層/蛇口ひろこ

一億年のちの地層に私が大往生した痕跡よあれ/藤田美香

わたしには特技があります痕跡を残さずきれいにシールを剥がせる/蛇口ひろこ

四十路越え軒並み面接落とされて特技の欄に生きると書いた/藤田美香

思い出の写真に涙を落とされて泣き出したいのはわたしのほうだ/蛇口ひろこ

誰でもが自分の海に帰る途中なみだのなかの波がさざめく/藤田美香

晴れた日に窓から放ったため息がさざめく木々の声に紛れる/蛇口ひろこ

影踏みの鬼がなかなか終わらない仕方ないので踏んだ木の影/藤田美香

黄色くて優しく甘い鬼まんじゅう帰省した子に蒸して持たせる/蛇口ひろこ

これ以上無理なとこまで爪を切る今日は蒸すなあわたしの中が/藤田美香

今日という日を盛大に祝うため丸いケーキを切り分けている/蛇口ひろこ

シンプルなケーキが結局おいしいと思う人生折り返しつつ/藤田美香

おいしいと言えばそればっかり作るから黙って食べる芋の煮っころがし/蛇口ひろこ

悪い人ばっかりうまく生きているような気がする 爪でも切るか/藤田美香

新しい曲ができたと沈黙のあとでギターを爪弾くまでの/蛇口ひろこ

知らないところに行くのはこわいです曲がり角で息とめる癖/藤田美香

こんにちはお久しぶりです愛想よく挨拶したが名前を知らない/蛇口ひろこ

すれ違う理由がひとつもない人とすれ違っている お久しぶりです/藤田美香

大皿にひとつ残った唐揚げに全神経を集中させる/蛇口ひろこ


【91.4B→92.絵画教室→93.終わったら→94.冬→95.白鳥→96.岸→97.牡蠣→98.消し炭→99.代償→100.もどれる→101.わかめ→102.磯野→103.層→104.痕跡→105.特技→106.落とされて→107.涙→108.さざめく→109.木→110.鬼→111.蒸す→112.今日→113.ケーキ→114.おいしい→115.ばっかり→116.爪→117.曲→118.知らない→119..お久しぶりです→120.ひとつ】


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