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天野うずめさん短歌作品集『似た服を買う』を読んで①
■『似た服を買う』 天野うずめ
ご本人のエックスアカウントはこちら↓
https://twitter.com/uzume_no_hijiri
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失礼ながら、私は天野うずめさんの短歌をあまり読んだことがなくて、
どんな短歌を詠まれるんだろうとドキドキしながら手にした作品集。
いきなり、好きな歌人上位確定。
天野うずめさんの短歌、めちゃめちゃ好き。出会えてよかった。
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実は、好きな歌をランダムに書き出していたんだけど、
それだと章立てしている意味を素通りしている気がしたので、やり直し。
順番にいきます。
まず「Ⅰ」より、好きな歌を。全部引いてしまいそうなので気をつける。
一人だと寂しいからだと思います。風が当たって泣いているのは
いちばん惹かれた歌。しずかな言葉の中のこの破壊力。
この破壊力は「。」が生み出していると思うんだ。
引き際が大切らしい半分も残ったエビチリじっと見ている
大皿料理を数人で食べていてなぜか1つだけ残るのを「遠慮のかたまり」と私の実家あたりでは言うんだけど、ここでは半分も残ってる。
引き際が大事と分かっていて、なんかちょっと違うよなと自分で思っている。(と思う)
優しいというか、もうこうなったらシャイというか、でもじっと見ているわけで、やはり食べたいんだろうかもう少し。食べたらいいのに。食べてもいいのに。周りはそれに気付かない。
エビチリをじっと見ている人の、人柄が伝わってくる。
ちょっと笑ってしまうんだけど、その笑いと同じだけ胸がぎゅっとなる。
迷わないように敷いてたレールからどんどん外れていくような恋
恋というものは迷ってなんぼくらいのものだと個人的に思う。
それをしないように、この人はレールを敷いていたと言う。
冒険はしたくなかった、失敗もしたくなかった、知らない場所に行きたくなかった、予測できる範囲にいたかった、自分の場所はここだと思って、そこを見失いたくなかった。
たぶん、怖かったから。いろんなことが。そして、恋も。
なのにもう恋してしまったらどんどん外れていってしまうんだ。
どんな気持ちだったろう。
悪くないなとにやり笑っている主体が私には見えるんだけど。
Ⅱ,『バスタイム』より
へその緒のつながりもない脱衣所で何回生まれ変わるのだろう
この歌については、すごく考えている。
「へその緒のつながりもない」なんて、世の中へその緒の繋がりがある関係性のほうが圧倒的に少ないのではないか。へその緒の繋がりというのは母親とのものだと思うが、この歌は母親との関係性を詠んだものではないように思うしなあ。
そもそも「つながりもない」わけだから、へその緒の繋がりを重要視しているのではなく、むしろすごく軽いものとして捉えている、と読んでいいのかなあ。そんな、なんにもない「脱衣所」という場所で、「何回」生まれ変わるというのもおもしろい。ポジティブさを私は感じる。
「何度」生まれ変わるのだろう、だとネガティブ感が出る、と思うのは私だけだろうか。定型に合わせるために「何回」を使う方が自然だと考えるのが普通なのかもしれないが。
とりとめもなく書いてしまったけれど、続きはまた書きます。
※藤田美香ブログ『乱切りくじら、また』に書いた記事をここに転載しました。
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