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【同人ネタバレ感想】『DEAR YOU』

室内にいながら汗をかいたので、シャワーを浴びる羽目になりました。

なぜか。

この本を読んだからですね。

僕ラブ37にて頒布された、スキャニング先生によるせつかり新刊です。

いやもう、圧倒されました。

小説家 恩田陸先生の著書『蜜蜂と遠雷』にて、主人公である天才ピアニストの豪快な演奏を、審査員が「まるでアトラクションだ」と表現するシーンがあるのですが。
本作『DEAR YOU』がまさにそうでした。
安全バーの代わりにこの本にしがみついてないと、せつ菜ちゃんの放つ熱波に吹き飛ばされ、横転してしまいかねない。それほどの勢いを感じました。

シャワーを浴びる羽目になるほどにかいたあの汗は、胸の奥から込み上げてくる熱によるものなのか、はたまた圧倒的なクオリティに気圧され身震いしたゆえの、ゾクゾクとした冷や汗なのか。

正体は定かではありませんが、とにかく心地の良い汗であることには違いありません。
手に汗握るどころか、人は本を読むだけでも全身から汗をかけるのだと学べた一冊でした。

さて、改めてじっくりと読み直して、感想を語っていきたいと思います。

この本を読み始めたとき、おそらくラブコメっぽい展開になるのかな、となんとなく想像しました。
しかし、優木せつ菜が常に生徒会長の皮を被っていたように。この本も真の姿を隠していました。

『豹変』
この言葉が今作には相応しいでしょう。
見開きページを境に、この漫画は心に直接熱を流し込むような激烈漫画へと様変わりします。
『ちゃお』のページを捲っていたら、唐突に『ジャンプ』の漫画が始まったようなイメージでしょうか。
優木せつ菜という、二面性が魅力的なキャラクターを、漫画の作風をガラリと変えることによって表現するその手腕には、感服せざるを得ません。

そしてその豹変の最たる、熱狂渦巻くライブシーン。

この瞬間を『豹変』と表したのなら、その次に来るのは『絶句』と言うべきでしょう。

私は普段、漫画に限らずアニメや映画で気に入ったシーンがあれば、それを小説にしたらどんな表現で書けるだろう、と想像するのを癖にしています。そうすることで文章力も向上しますし、そこからインスピレーションも生まれます。

ですがこのせつ菜ちゃんのライブシーン。
私はこのシーンに、適切な文章を浮かべることが出来ませんでした。正確に言えば、感じ取った熱狂に匹敵するような言葉を作り出せなかったのです。

どんな言葉を浮かべても、当てはめても、造語を試しても、あの熱狂を表現出来ない。
あれはまさに、漫画だからこそ表現出来る熱狂が、漫画ならではの技術で描かれたものでした。

あの凄まじい体験を、私は今後も忘れることはないと思います。漫画に関して無知な私でもわかるほどの描き込みの壮絶さも相まって、とても印象深いものとなっていました。


さて、肝心のせつかりというカップリングについてですが。

虹ヶ咲のキャッチフレーズでもある『仲間だけど、ライバル』という要素を特に凝縮したのがせつかりだと思うんですよね。
見つめ合って笑えど、その瞳の奥には確かな闘志がお互いに宿っている。それがせつかりなのではないかと。

お互いが自分の魅力を最大限に発揮できる舞台で輝き、相手を鼓舞する。そしてその輝きの中で暗に叫び届ける。
「早くここまで登ってこい」と。

嗚呼、これぞせつかり。

そう考える私にとって、この漫画はまさに理想像でした。あって欲しい姿、魅せて欲しい姿、それらを堪能出来るこの1冊。せつかり推し必見です。

貴重な体験をありがとうございました。
またたっぷりと汗をかかせてください。何度も読み返し、横転しながら待っています。

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