新規事業のデザインって何するのか。
最近「新規事業のデザイン」って何?とかそもそも企業がやってる新規事業プロジェクトってどんな感じなの?みたいなことを聞かれることが多いので、書いておきます。
当たり前の活動となった新規事業創出
少しブームは落ち着いてきたものの、依然として日本企業の間では「新規事業創出」の活動が盛んで、各社が取り組んでいます。大企業が主導するオープンイノベーションプログラムや社内起業プログラムなどさまざまな活動が依然行われています。
主に北米系IT企業や中国系製造業の強大化、人々のライフスタイルや価値観の多様化が引き金となり、既存の事業に陰りや成長の限界が見えてきたことなどが主な要因だと思われています。
そういった企業の新規事業創出を支援する事業者も多く出現しており、新規事業関連の話題は至るところで聞くことができます。
流行のフェーズを通り過ぎて、企業のルーティンとして定着してきたように見えます。
とはいえ、話題が多い一方で、各社の活動が具体的にどんなことをしているのかの詳細はあまり知られていません。
どんな人がやっているのか
かなり色んな立場の人がチャレンジしています。経営陣直轄の新規事業部門に属している人もいれば、製品開発部門で新規事業担当みたいに役割を与えられている人、そもそも会社にそういう部門も企画もないけど、認めてもらうために草の根活動のようにやっている人など…企画系の仕事の人もいれば、営業系の人もいたり、部門横断でやっているチームも見かけます。
企業内のそういう挑戦しているチームが単独だったり、社外の支援会社に発注して起案をしています。これは各企業によってさまざまなケースが存在します。
新規事業プロジェクトのフェーズ
違う会社の人で同じ新規事業という範疇の話をしているはずなのに噛み合わない光景をみることがあります。それは多くの場合それぞれが指している「新規事業プロジェクト」の定義が違うのです。特にフェーズについて。新規事業のプロジェクトのフェーズは大きく分けて二つだと考えています。
起案から承認(事業をやるのか)までの前半フェーズ
と、
具体化から社会実装までの後半フェーズ
があります。前半は事業計画とか市場調査とかチーム組成案だとかリサーチandドキュメントの活動が主役で、後半はサービス設計や製品デザインや営業やマーケティングなどプロトタイピングandコミュニケーションが活動の主役なのがスタンダードでしょう。
それぞれ必要となる考え方もアウトプットも全然違うので、ごっちゃで話したり考えると話が噛み合わなかったり協働ができなかったりします。
どこどこの新規事業サポートの会社に頼んだけどうまくいかなかった、どこどこのコンサルタントとやったけどうまくいかなかったなどの話はこのフェーズ感のズレが原因の場合も非常に多い。新規事業を支援する会社もそれぞれ得意なフェーズがあったりします。
新規事業のプロジェクトに取り組む場合はどっちのフェーズに重きが置かれてるプロジェクトなのか、それに適したメンバーは社内では誰なのか、外部にサポーターは必要なのか、などを冷静に考える必要があります。
一般的にはデザイン会社は後ろのフェーズの支援事業を新規事業デザインと呼んでいることが多いです。
新規事業とデザイン
「新規事業」と同じくらいビジネスの新常識として話題に上がる言葉が「デザイン」です。「デザイン経営」「デザイン思考」「ブランドデザイン」という言葉が経営の新常識として語られるメディア記事なども多く見かけます。以前は主にものづくりの企業、加えてIT企業くらいがデザイナーを擁している状態でしたが、保険や不動産、各サービス業から地方自治体まで、デザイナーとの価値創出に取り組む団体はほぼすべての領域で見るようになりました。
そもそも何かしらの事業をやろうとすると、会社やブランドのロゴ、ウェブサイト、PV、製品パッケージ、製品デザイン、アプリのデザイン、サービス全体の体験デザインなど「デザイン」しなければいけないものがたくさん出てきます。さすがにこれらを素人従業員に片手間でやらせようとはなりません。いまやデザインなんてうちの事業に関係ないと話す企業は見かけないでしょう。
とはいえ、さっきのフェーズの話と同様、
「新規事業のなかに組み込むデザイン仕事」を求めているのか
「新規事業プロジェクトそのものをデザインする仕事」を求めているのかで適切なデザイン担当チームは変わってきます。
前者は事業に関わる全領域をクラフトできるデザイナー的職能で
後者はデザイン視点を持って事業を起案し、会社を納得させるストーリーを設計できる起業家・経営者的職能です。
フェーズの話と同様に推進する新規事業プロジェクトによって「デザイン」の定義・範囲が変わってくることを気をつけなければなりません。
表題の「新規事業のデザインって何をするのか?」の答えがまさにここで、プロジェクトの目的に応じて、先の前者後者いずれかの、もしくは両方を行うのが「新規事業のデザイン」です。
新規事業のデザインに必要な人
新規事業のデザインは多分にビジネス知識、起業経験が求められるため、クラフト系デザイナーではない職能を持つメンバーで構成されたチームで実施されるのが必須条件となります。そのため、新規事業デザインを請け負うデザインファームには非デザイナーが在籍していたりします(そもそも今日、ものづくりしない人を非デザイナーと呼ぶのが適切じゃない気もしますが)。
「新規事業」と「デザイン」、この二つをちゃんと理解してブリッジできる人が新規事業プロジェクトのキーパーソンになっているとうまくいきます。
経験値がものを言う
ゼロイチから起業するスタートアップと違い、既存起業で新規事業のプロジェクトを推進する場合、稟議の通し方やチームの作り方、予算の考え方やメディアの使い方など様々な経験値からくる視点が必要になります。多くの企業が外部のパートナーとプロジェクトを進めたりするのはその経験値を補完するためでしょう。
…ちょっと長くなってしまいました。
新規事業やデザイン関連の話をさらに知りたい場合はpodcastもチェックしてみてください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?