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二人用台本【高速バス】

素舞台想定
椅子(箱でも可)が二つ以上

バスが走行する音。
上手から下手へと車が追い越して行く音。

明転

舞台上の中央は薄暗い蛍光灯の様な光が当てられ、その周辺は暗くなっている。
時折、オレンジやグリーンの細く小さい光が、下手から上手へ勢いよく流れていく。
舞台上には携帯を操作するAと、その横に座りうつらうつらとAに寄りかかるBがいる。
少ししてBが大きく船を漕いだ。

A「ちょっと、首痛めるよ」
B「ん?  うん……うん」

また眠り始めるB。
ため息をつき、窓の方を向くA。
そして窓に映る車内に目を移して、更に車内前方へと目線を動かす。
何事も無かったかのようにまた窓を向く。

A「ん?」

窓を凝視し、また前を向く。

A「……え?」

今度は素早く窓を見てまた前を見る。
前の座席に手をかけゆっくりと立ち上がり、前方を確認する。

B「何してんの」
A「いや……なんか、何だろう……子供が」
B「子供?…………どの子供?」
A「左前の……」
B「左前? どこ? ていうか他に誰かいたっけ?」
A「え? どういうこと?」
B「だって乗った時私達二人じゃなかった?」
A「そう……だったっけ」
B「貸し切りだねーって言ってたじゃん、寝ぼけてんの?」
A「そうだよね、いやごめんごめん」

座るA。気になってまた窓を見る

A「ひっ!」
B「もう何!?」
A「み、見えないの!? ほら! こっち見てるじゃん!」
B「はあ? ……まじで何も見えないよ? 何言ってるの?」
A「そこ! ……あれ? え、でもガラスに映って……もしかして見えてないの?」
B「だからさっきからそう言ってるじゃ──」
A「え、ちょっと待って……今、え」
B「今度は何?」
A「いや、なんか気のせいかもしんないけど……もっと前の座席にいたような」
B「はあ?」
A「わかんないけど、そんな気がする」
B「いい加減にしてよ、霊が見えるーとかさぁ、そんな子供みたいな事」
A「本当なんだって! あっ……また後ろに来てる…………ど、どうしよう、ねえどうしたらいい?」
B「いや、どうって言われても……」
A「真剣に考えてよ! あっ、も、もうそこまで来てる」
B「そこってどこ?」
A「2つ斜め前の席……こっち見てる」
アナウンス「乗客の皆様にご案内いたします。この先工事中の為、車内が揺れる場合がございます。ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解ご協力の程よろしくお願いいたします」

アナウンスが終わってすぐ、砂利を踏む様なガタガタと揺れる音
数秒後、車内の電気がチカチカと点滅し始める。
一瞬完全に照明が消え、すぐに照明が点く。
Aがすぐ前の座席を見て固まっている。

B「……どうしたの」
A「…………」
B「ねえ、何見てるの? 何かそこにいるわけ?」
A「…………」
B「ねえってば」

また照明が点滅し始め、完全に消える
照明が点くとAの姿が消えている

B「えっ、えっ、何、えっ……どこ行ったの……?」

Bが立とうとした瞬間、急ブレーキがかけられ前につんのめる

アナウンス「急ブレーキ大変失礼しました」

席で一息つくB。いなくなったAの方を見る
ガラスに何か映っているのが分かり、バッと目を逸らす
再度ゆっくりと窓へと目を向ける

暗転


こちらのショートを台本にしたものです

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